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翌日、バイトが終わると真尋が話しかけてきた。
真尋
千夏
千夏
真尋
真尋
そう言いながら、真尋は私をじっと見つめる。
その目がまっすぐで 優しくて、私は思わず目を逸らした。
真尋
真尋
——泣いてもいい?
そんなふうに言われたの、いつぶりだろう。
冬馬は 私が泣きそうになっても気づかないふりをする。
でも、真尋は気づいてくれる。
真尋
その一言が、胸に深く響いた。
真尋の言葉に、私はただ黙って俯いた。
泣きたいのに、涙は出なかった。
千夏
千夏
千夏
そう言った瞬間、自分でも気づいた。
——また嘘をついてる。
心の中はぐちゃぐちゃなのに 平気なふりをすることに慣れてしまった。
冬馬の前でも、バイト先でも 私はずっとそうしてきた。
だけど、真尋の前では どうしてかこの嘘が苦しかった。
真尋
真尋
真尋
真尋はいつもの優しい笑顔で でもどこか真剣な声でそう言った。
放っておけない—— そんなふうに思ってくれる人がいる。
それが、嬉しくて、怖かった。
その夜、私はまた冬馬の部屋にいた。
ただ隣にいるだけでよかったはずなのに 気づけば真尋の言葉ばかり思い出してしまう。
——無理してるなら、泣いてもいいんだよ?
——俺でよかったら、話して?
冬馬は そんなことを言ってくれたことがあっただろうか
冬馬
隣でスマホをいじっていた冬馬が 私の顔を覗き込む。
私は慌てて首を振った。
千夏
冬馬
そう言って 冬馬は何も聞かずにまたスマホに目を戻した。
結局、私はこのままでいいの?
それとも——。
考えれば考えるほど 答えが出なくて、私はただ静かに息を呑んだ。
それから数日後のバイト終わり 真尋が私を待っていた。
真尋
千夏
千夏
店を出て並んで歩く。
冬の風が冷たくて でもそれ以上に、真尋の表情がいつもと違っていた。
真尋
真尋
真尋
突然の言葉に、足が止まる。
千夏
真尋
真尋
真尋
真尋の目は、真剣だった。
真尋
優しい声。
まっすぐな気持ち。
今なら、この手を取ることができる。
でも——。
千夏
千夏
気づけば、そう言っていた。
私はまだ、冬馬を諦められない。
どれだけ苦しくても、好きな気持ちを捨てられない。
真尋の表情が、少しだけ曇った。
真尋
真尋
彼はそれ以上何も言わず、ただ小さく微笑んだ。
でも、その笑顔が痛かった。
私は、また間違えてる?
それとも、まだ答えを出すには早すぎる?
寒い風が吹く中 私の心は、ますます迷い込んでいった——。
バイト終わり、また真尋と話していた帰り道。
駅の近くで、見覚えのあるシルエットが目に入った。
冬馬——。
彼は自販機の横にもたれかかり スマホをいじるふりをしていた。
でも、明らかにこちらを見ている。
心臓が嫌な音を立てる。
真尋も気づいたのか、歩みを緩めた。
真尋
真尋
千夏
千夏
私は、まっすぐ冬馬のほうへ歩いていった。
千夏
千夏
声をかけると、冬馬はゆっくり顔を上げる。
冬馬
淡々とした声。
でも、その目はどこか冷えていた。
冬馬
冬馬
真尋のほうを顎で示しながら 冬馬は面倒くさそうに聞く。
千夏
千夏
説明しようとすると 冬馬は「へぇ」とだけ呟いて ポケットに手を突っ込んだ。
冬馬
冬馬
——突き放される。
それが、怖かった。
千夏
必死に冬馬の腕を掴む
冬馬の動きが止まる。
冬馬
冬馬
千夏
必死に弁解する。 でも冬馬は、ふっと鼻で笑った。
冬馬
千夏
好き、って言いたかった。
でも、その言葉は喉の奥に詰まってしまった。
冬馬は少しの間、私を見つめ それからふっとため息をつく。
冬馬
冬馬
短く言って、歩き出した。
私は、それに従うように後を追ってしまう。
——真尋が、後ろで何か言おうとしていた気がした。
でも、私はもう聞こえなかった。
冬馬の部屋に着くなり、私は彼の腕を強く掴んだ。
千夏
その先を言う前に、冬馬の唇が塞いできた。
千夏
強引で、乱暴なキス。
でも、拒めなかった。
彼の体温が 冷たくなりかけていた心を温めるような気がして。
冬馬
冬馬
耳元で低く囁かれる声が、体の奥に染み込んでいく。
千夏
千夏
違わない。 真尋は優しくて、私のことを大切にしてくれるのに。
それでも私は、冬馬にすがってしまう。
彼に触れられたら、全部どうでもよくなる。
冬馬
冬馬はそう言って、私の髪を乱暴に撫でた。
私は何も言えず、ただ彼に身を預けてしまった。
また、同じことを繰り返してる。
わかってるのに。
やめられない。
——冬馬の沼から、抜け出せない。