恋のメシア

クラスはもう皆、自分が必要とされた定位置につき、

自分にあった輪に入り、

完璧に役をこなしていた。

なんとなく、右斜めの席の春山くんの方を見る。

そう言って、3人は教室から出て行く。

春山くんはというと

そそくさと自分の席に戻り

読書をしていた。

スクバについてあるクマのキーホルダーがやけに目に入る。

知らないうちに声に漏れていたらしく

春山くんがこちらを見ていた。

三日月の笑った目が、また私の心を温める。

来たものの、何を話すか迷う

手で口元を隠す春山くん

とてもよく笑う人だ

私はコクリと頷いたまま、春山くんのことは見れないでいた。

本当に不思議な人だと

会って1日目で分かった

さっきからずっと

らいあ君のことしか話さない

でもずっと

廊下から教室内に広がる声

らいあ君と目が合う

反射的に目を逸らしてしまって

変な沈黙が流れる

わざとらしく、その場を凌いだ

やっぱり、らいあくんは女子からものすごくモテモテだ。

ドラマや漫画などにでてくる

ヒロインと結ばれる男の子なんだろうな

席に座っても

斜め前の席の春山くんの背中を見てしまう

少し見える眼鏡

ビックリした。

男の子と話すのは、まだ少し緊張する。

どうしてみんな

こんなにも普通に異性と話せるんだろう

自分に自信なんかないし、自信になるものもない私からしたら

住んでる世界が

違いすぎる。

また笑う。

三日月目で。

そういうと彼は

ふわっと笑って

と、口パクで言うのだ。

笑って見せると

彼は少し驚いて、また笑った。