ユウマ
腹減ったなあ、なんか飯でも食いにいくか?
ミチル
そうね!せっかくのクリスマスなんだし、なにかおいしいものでも食べたいよね!
ミチル
クリスマスに本物のチキンでも食べられたらなあ....
ユウマ
まあ、時代が時代だし、おれらが生まれる前までは鶏肉からできる本物のチキンだって本当に食べられたみたいだけど
ミチル
そうよね。私たちが25歳だから、ちょうど30年前までは食べられたんだってね。ママたちの時代が羨ましいわ〜
ユウマ
今は微生物を利用したバイオテクノロジーでできた肉しか食べられないからな〜
時代は20XX年、
世界人口は100億人を突破。
世界中が食糧難に突入し、人類の大半が微生物を利用したバイオテクノロジーで日々の食を賄っていた。
日本を始め、世界中でベーシックインカムが本格導入され、労働はAIに。
人類は毎年1月1日の定期厳選日の審査によって毎月の給付額が決まる。
AI関連の一部を除き、労働という概念は常識から消え、レストランや工場などほとんどがAIによって管理、運用されている。
ユウマ
今月の金も残り少ないし、とりあえずザイセリヤでいいんじゃね?
ミチル
ええー!
またザイセ??
わかったよー。
ユウマ
しょうがねえじゃん、毎年毎年給付額は下がる一方だし、
ユウマ
なにかと国のお偉いさんは人口が増える一方でって言って金減らしてくるんだから
ミチル
そうよね、こんなんじゃ10年後なんて生きていけないわよ。生まれた時は毎月40万ももらってたのにいまじゃ毎月20万なんて。
アルト
不在着信
ユウマ
ん?アルトからだ
なんだろ
ミチル
ユウマもアルトくんみたいにトップAI企業のエリートだったらもっと楽できるのになあ笑
ユウマ
るせえ!笑
あいつは親父が社長だろうが!コネだよどーせ!笑
ユウマ
ちょっと電話かけるわ。
ミチル
うん!おっけい!
ユウマ
アルト
おー、ユウマ元気か?
ユウマ
おー、アルトどうした?
アルト
久しぶりだな!
いやな、親父から聞いたんだけどよ、人の増加率がやばいからってさ、来週の厳選の基準が一気に跳ね上がるらしいんだよ
ユウマ
おいまじかよー!!
これ以上給付額が減ったら生活できないぞ?
アルト
ハハ!苦しいのはみんな一緒だろ、おまえとは小学校の時からの仲だから一応教えてやろうと思ってな
ユウマ
いいよなあ、おまえは世にも珍しい仕事もあるんだから全然余裕だろ
アルト
まあな笑
でもまあ、例年に比べて今年は行政指導所行きも増えるって話だ。
まあ、大丈夫だとは思うが、ユウマには10年前のことがあるからな、心配でな。
ユウマ
ああ......
まあ、大丈夫だとはおもうけど
アルト
あの時のこと、ミチルには話したのか?
ユウマ
いや。
アルト
そうか、まあ、それはおまえの自由だしな。話はそんだけ!
アルト
このあと関係会社のご令嬢と食事があるから、またな!
ユウマ
おお、いいご身分だなあ笑
クリスマスだしどーせまじのチキン食いに行くんだろ?
アルト
大正解!
チキン持ち帰れたらおまえにも持ってくからよ!
ユウマ
はいはい、楽しんでこいよ
アルト
またな!
ユウマ
通話
05:00
ミチル
話なんだったの?
ユウマ
また、定期厳選の基準が厳しくなるんだってよ
ミチル
ええー!
まじで耐えられないんだけど!
生活できないよ!
ミチル
ユウマの顔が一瞬暗くなってたけど、なんかあったの?
ユウマ
ん?ああ、なんでもないよ!
ミチル
ほんと?
嘘でしょ、なにかあったの?
ユウマ
いや、給付額が減ったら今までみたいにミチルとデートできる数も減るのかなーって
ミチル
なにそれかわいい!笑
お金がなくたって、私はずっと幸せだよ!
ユウマ
そ、そうか、それならよかった!
ユウマ
(10年前のことだけは誰にも言わないと決めたんだ。隠し通すんだ。)