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紫煙
紫煙
紫煙
LAN
いるま
LAN
紫煙
紫煙
紫煙
LAN
ふと、甘そうないい匂いがしたから。
おねだりをしてみた理由なんてその程度。 ただ、仕事で疲れた脳に少しだけ甘いものが欲しくて、そこにタイミングよくフラペチーノを持ったいるまがいて、つまりは偶然。
正直、そこにいたのが他のメンバーだろうが、ふざけて同じことを言ったと思う。 分けてくれればラッキー、拒まれてもそのままふざけて駄弁ったりできるならいいかな、なんて。
__だから、いるまが俺の片思い相手だったことも偶然だ。 更に言えば、手に持ったフラペチーノをいるまが分けてくれるともそこまで思ってなかったし、当然気づいてもなかった。
いるま
ーーそう、いるまと間接キスになることに。
LAN
フラペチーノを軽くこちらへ差し出し、月色の瞳を細めて、少しからかうように告げてきたいるま。 その言葉の意味が脳に辿り着いた瞬間、俺の顔は多分、凄く赤くなっていたと思う。
待って! ピュアすぎんか、というツッコミは一旦待ってお願い! 相手はあのいるまだ。かわいいことや媚びることは滅多にせず、リスナーに向けたパフォーマンスだとしても恋愛系のワードなんてほとんど言わない、あの! いるま先生なのだ。 耐性がなくても当然だと思わないだろうか。俺は思う。
更に、いるまが『俺に』言ってきたというのも大きい。 シクフォニはグループの特性上、好みの女性のタイプなどは基本的に動画等で吐かされている。それを鑑みれば、俺がいるまの好みなどではないことなど明白だ。だから、いるまが俺を恋愛的に意識するような発言など、プライベートで聞くことはないと思っていた。
思っていた、のに。夢じゃなければ、今、聞けてしまった。 だから俺は一瞬、そのことにありえないほど動揺した。 ーーだが、それは本当にありえないミスだった。
LAN
そう。俺の恋心は、できるだけバレてほしくないものだった。 何故なら、俺はシクフォニのリーダーで、いるまはそのメンバー。 グループ内で恋愛となると、とてつもないハードルがある。
俺の気持ちがバレることで、俺といるまの関係がこじれたり、いるまが俺を受け入れなかったら、と思うと怖くて動けなかった。 いや、俺が嫌われて傷つくだけならマシだ。いるまが俺を不快に思い、一緒に仕事もしてくれなくなったら、シクフォニは続かない。
大切な6人を背負った俺が、その可能性を選ぶ訳にはいかなかった。 俺は、いるまのことが恋愛的に好きだ。だが、それ以前にシクフォニのリーダーなのだ。グループを守らなければいけない。 だから、6人分の責任で、俺の恋心は封じられている。
ーー封じられて、いた。のだが。 今、俺はめちゃくちゃ動揺してしまった。 ただのリーダーのリアクションでは、断じてなかった。 焦りと危機感が、頭の中で渦巻く。
LAN
万が一にも、この恋心を悟られてはいけない。 とにかく何か言って、この場を乗り切らなければ。 そう思って、覚悟を決めているまの方を見た。
いるま
…………?
LAN
いるまが、照れて…いる?
LAN
頭の中が、一瞬にして真っ白になった。
まずいこと言ったか、みたいな。 月色の瞳がらしくなく彷徨う様と。 照れたような、その顔。
いるまのその表情たったひとつで、俺の中に渦巻いていたはずの思考や迷いが、溶かされていくのがわかる。
先程まであんなに感じていた、傷つくことへの怖さも。 リーダーとしての、大切な責任すらも。 その、表情ひとつで。
期待してしまう。 いるまも、俺を好いてくれているのでは、と。
LAN
あれほど焦っていた思考が、どんどん働かなくなる。 『好き』という気持ちが、暴れ出してきてしまう。
LAN
もし、……そう、もしもの話。
もしも、いるまも俺のことを好いてくれているのならば。 この気持ちは、封じなくてもいいのではないだろうか。
そんな都合のいい考えが、甘い匂いと共に脳を誘惑する。 心を縛る鎖が、外れる音がする。
ふと、この静寂に耐えきれなくなったのか、いるまが照れた顔をそむけ、フラペチーノを引っ込めようとしたのが目に映った。
LAN
このときの俺は、いるまの照れ顔に食らっていたのだ、と言い訳をしておく。 緩んだ理性では、溢れ出たちいさな欲を、抑えられなくて。
いるまの手首を掴んでぐいと引き寄せ、そのままその手に持っていたフラペチーノのストローに、そっと唇を寄せてしまった。
いるま
LAN
なるほど。 この、甘すぎるほどの幸せが、恋の味。
紫煙
紫煙
紫煙
紫煙