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夜の青葉城西体育館は、ぬるりと重たい空気に包まれていた。 天井近くまでうねる呪力が、鉄骨を軋ませ、蛍光灯が明滅している。 まるで体育館そのものが、生き物のように歪んでいた。

久遠 梓

......きたわね

その先にいたのは──人の形をした“残像”。

顔は影に沈み、判別できない。 けれど、その動きは異様なほど“綺麗”だった。

伏黒 恵

まずい......
皆、早くここから離れろ
説明できないけど、危険だ

呪霊――いや、相馬駿の魂が変質したそれは、空間すら歪ませるほどの呪力を放ち、咆哮と共に膨れ上がっていった

虎杖 悠仁

及川さん、下がって――!

次の瞬間、呪霊が放った黒紫の衝撃が 真っ直ぐ及川に向かって弾丸のように突き進む。

及川 徹

っ!

及川が身を翻そうとするより早く 虎杖の身体が前に出た。 風が鳴り、爆ぜるような音が響く。

及川 徹

悠仁ッ!!

及川が叫んだ時には、虎杖の身体が呪力に叩きつけられ、床を削って滑っていた。 虎杖は肩で息をしながらも立ち上がる。 額から血が一筋、頬を伝って落ちた。

虎杖 悠仁

だ、大丈夫だった?
及川さん!怪我は?

及川 徹

っ!
お前はまず自分の心配を...!
俺は大丈夫だから

虎杖 悠仁

そっか、良かったぁ...

床に膝をついた虎杖が、それでも笑っている。その笑顔はまっすぐで、愚直で、誰かを守ることに一切の迷いがなかった。

伏黒 恵

バレー部の奴らは避難させた
及川さんも安全なところに避難しろ

及川 徹

.........分かった...

ドン! 空気が裂ける音とともに、呪霊の腕が振り抜かれた。 虚空を叩きつけた呪力の塊が、床に“呪力の杭”のように突き刺さる。

伏黒 恵

──玉犬・渾。囲め!

玉犬が呪霊の四方に展開するも、呪霊はジャンプスパイクのモーションで突撃。 空中からの一撃で式神を潰し、着地と同時に“呪力の砂煙”が舞う。

伏黒 恵

攻撃パターンが……まるで訓練されたプレイヤーそのものだ。こいつ、“バレー”が術式の核だな……

釘崎 野薔薇

スパイクの癖に顔面狙いなんて、陰湿ね──だったら、こっちも遠慮しないわよ!

芻霊呪法「簪」

床に打ち込んだ釘が、呪霊のジャンプと同時に爆ぜる。 だが、呪霊は“レシーブモーション”で呪力を弾き返す。

釘崎 野薔薇

チッ、レシーブまで完璧かよ……!

及川 徹

(俺なんかより……
ずっとずっと強いじゃん、こいつら)

自分のために身を挺した少年と、その少年を守る仲間たち――彼らの連携、絆、覚悟。

バレーで鍛えた瞬発力も、危機察知も、通じなかった。自分の球を全力で追ってくれた仲間のように、虎杖は迷わず“前”に出た。

及川の胸に残ったのは、呆れとも憧れとも違う、ちくりと痛むプライドだった。 羨望か、劣等感か、あるいは――。

虎杖 悠仁

だったら、俺が行く!

猛スピードで接近。スパイク動作の途中に踏み込んで殴る。 だが──

相馬 駿

……お前は、“才能だけのやつ”か

虎杖 悠仁

ぐっ……!

虎杖の拳が、相馬の“サーブフェイント”にすり抜けられ、カウンターで膝蹴りを喰らう。

久遠 梓

あなたの──呪いの名前、わかりました

久遠 梓

✍「名前:相馬 駿」
🏺

久遠 梓

“咎響”──言霊、起動

周囲の呪力が一気に静まり返る。 呪霊の動きが、一瞬だけ“止まった”。

久遠 梓

名前を持つものは、呪われも、祓われもするのです

相馬 駿

まだ、終わってねぇ
……俺は……あの舞台に、立つんだよ!

叫びと共に、幻影の“青葉城西バレー部”が現れ、相馬と共に攻撃を仕掛けてくる。 彼らは呪力の像であり、実体を持たない――だが攻撃は“痛み”として現実に届く。

乙骨 憂太

“リカ”、いこう

呪霊化したリカの顕現。 体育館が歪むほどの呪力の波。

リカ

憂太ァァァ
憂太の敵は、アイツ?

乙骨 憂太

そう、僕たちの敵はアイツだよ

リカ

じゃあ、リカの敵

乙骨 憂太

リカ──力を貸して

乙骨 憂太

“模倣・芻霊呪法”──

釘崎の術式をコピー。 異形の釘を、何本も空中に展開させる。

一斉に投げ放たれた呪力杭が、相馬の両脚と腕を床に縫い止める。

相馬 駿

──やめろっ!

相馬の咆哮と共に、空間が“強制的に巻き戻る”ように歪む。

相馬 駿

何が努力だ……何が青春だ……
ケガ一つで、全部終わるんだよ!

時空間を歪ませる術式。 再現するのは“最後の試合の一点”。 術式名は恐らく 『一球入魂(いっきゅうにゅうこん)』

観客の声援まで再現された空間の中、乙骨が一歩、前に出た。

乙骨 憂太

梓ちゃん、もう一度“言葉”を

梓は無言で頷き、すぐさま懐から紙片を取り出す。 墨筆で、ためらいなく書き込む──

久遠 梓

✍ 【響】【悼】【継】
🏺

久遠 梓

咎、響け――

紙片を、呪いの壺に投げ入れた瞬間、乙骨がその壺をリカに媒介として具現化させる。

乙骨 憂太

リカ、今だけ……梓ちゃんの言葉、届けてあげて

リカ

……憂太が、そう言うなら
……リカ、届ける

リカは白い呪力の霧とともに、梓の術式を媒介する“音叉”のような構えに変化する。 その瞬間、乙骨と梓の術式が**“重ね掛け”**となり、言霊が空間を貫く。

“響”――記憶を呼び起こす言霊 “悼”――鎮魂の意志 “継”――誰かに託す決意

響きは術式の中を通ってリカへ リカから呪力となって空間全体に届いた。

久遠 梓

……あなた、まだバレーが好きなんですよね?
だったら……残していきませんか、その気持ちだけでも

呪霊・相馬の身体がびくりと震える。

相馬 駿

誰にも渡したくなかった……俺の青春
……俺の場所……!

伏黒 恵

でもそれ、もう呪いだろ

虎杖 悠仁

好きな気持ちは、誰かに渡していいものだよ。
そうやって、生きてるの

乙骨 憂太

終わらせる。
君の呪いも、苦しみも

乙骨は両手を合わせ、膨大な呪力を圧縮。

乙骨 憂太

“解呪式・零唱(ゼロソング)”――

リカの術式共鳴による純粋な呪力音波が、空間を震わせる。 呪霊・相馬の“本体”へ、その光が届く。

相馬 駿

……後輩たち、バレー続けてるか……?

乙骨 憂太

うん、君の分も背負ってる。
もう、立ち止まらなくていいよ

呪霊の核が砕ける。 そして、彼の魂は、静かに消えた。

久遠 梓

……ありがとうございました。
虎杖くん、伏黒くん、野薔薇さん
乙骨先輩。リカさんも

乙骨 憂太

梓ちゃんの言葉がなかったら、届かなかったよ
……怖くなかった?

久遠 梓

少しだけ。
でも、私たち呪術師ですから

梓は、壺を包んでいた布をぎゅっと握る。

久遠 梓

“言葉”って、時々、無力で
――それでも、残したいと思うんです。
届くかどうかじゃなくて……残すべきかどうか、で

乙骨 憂太

梓ちゃんは、強いね。

久遠 梓

……乙骨先輩の“想い”に、比べたら。
私はただ……書いただけ

乙骨 憂太

違うよ。僕の呪いは、僕だけでは持てなかった。
今、僕は、リカの重みを知ってる。
でも……君の“言葉”には、今も人を動かす力がある。あれは……救いだったよ

久遠 梓

……救いに、なれてたのかな

乙骨 憂太

なってた。僕が保証する。
だって……僕が救われたから

言葉の間に、沈黙が生まれる。 けれど、それはどこか居心地の良い沈黙だった。

久遠 梓

……やっぱり、リカさんのことは超えられそうにありませんね...(ニコッ

乙骨は、意外そうな顔をして それから困ったように笑う。

乙骨 憂太

リカちゃんは……永遠に、特別だから

「呪い」と「想い」、 それぞれの“過去”と“未来”を背負って。 交差するのは、きっと偶然じゃない。 これは、“青春”と“呪術”の、すこし不器用でまっすぐな交差点。

『呪いの午後、青春の手前』

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続き楽しみに待ってます!!

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