テラーノベル
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夜の青葉城西体育館は、ぬるりと重たい空気に包まれていた。 天井近くまでうねる呪力が、鉄骨を軋ませ、蛍光灯が明滅している。 まるで体育館そのものが、生き物のように歪んでいた。
久遠 梓
その先にいたのは──人の形をした“残像”。
顔は影に沈み、判別できない。 けれど、その動きは異様なほど“綺麗”だった。
伏黒 恵
呪霊――いや、相馬駿の魂が変質したそれは、空間すら歪ませるほどの呪力を放ち、咆哮と共に膨れ上がっていった
虎杖 悠仁
次の瞬間、呪霊が放った黒紫の衝撃が 真っ直ぐ及川に向かって弾丸のように突き進む。
及川 徹
及川が身を翻そうとするより早く 虎杖の身体が前に出た。 風が鳴り、爆ぜるような音が響く。
及川 徹
及川が叫んだ時には、虎杖の身体が呪力に叩きつけられ、床を削って滑っていた。 虎杖は肩で息をしながらも立ち上がる。 額から血が一筋、頬を伝って落ちた。
虎杖 悠仁
及川 徹
虎杖 悠仁
床に膝をついた虎杖が、それでも笑っている。その笑顔はまっすぐで、愚直で、誰かを守ることに一切の迷いがなかった。
伏黒 恵
及川 徹
ドン! 空気が裂ける音とともに、呪霊の腕が振り抜かれた。 虚空を叩きつけた呪力の塊が、床に“呪力の杭”のように突き刺さる。
伏黒 恵
玉犬が呪霊の四方に展開するも、呪霊はジャンプスパイクのモーションで突撃。 空中からの一撃で式神を潰し、着地と同時に“呪力の砂煙”が舞う。
伏黒 恵
釘崎 野薔薇
床に打ち込んだ釘が、呪霊のジャンプと同時に爆ぜる。 だが、呪霊は“レシーブモーション”で呪力を弾き返す。
釘崎 野薔薇
及川 徹
自分のために身を挺した少年と、その少年を守る仲間たち――彼らの連携、絆、覚悟。
バレーで鍛えた瞬発力も、危機察知も、通じなかった。自分の球を全力で追ってくれた仲間のように、虎杖は迷わず“前”に出た。
及川の胸に残ったのは、呆れとも憧れとも違う、ちくりと痛むプライドだった。 羨望か、劣等感か、あるいは――。
虎杖 悠仁
猛スピードで接近。スパイク動作の途中に踏み込んで殴る。 だが──
相馬 駿
虎杖 悠仁
虎杖の拳が、相馬の“サーブフェイント”にすり抜けられ、カウンターで膝蹴りを喰らう。
久遠 梓
久遠 梓
久遠 梓
周囲の呪力が一気に静まり返る。 呪霊の動きが、一瞬だけ“止まった”。
久遠 梓
相馬 駿
叫びと共に、幻影の“青葉城西バレー部”が現れ、相馬と共に攻撃を仕掛けてくる。 彼らは呪力の像であり、実体を持たない――だが攻撃は“痛み”として現実に届く。
乙骨 憂太
呪霊化したリカの顕現。 体育館が歪むほどの呪力の波。
リカ
乙骨 憂太
リカ
乙骨 憂太
乙骨 憂太
釘崎の術式をコピー。 異形の釘を、何本も空中に展開させる。
一斉に投げ放たれた呪力杭が、相馬の両脚と腕を床に縫い止める。
相馬 駿
相馬の咆哮と共に、空間が“強制的に巻き戻る”ように歪む。
相馬 駿
時空間を歪ませる術式。 再現するのは“最後の試合の一点”。 術式名は恐らく 『一球入魂(いっきゅうにゅうこん)』
観客の声援まで再現された空間の中、乙骨が一歩、前に出た。
乙骨 憂太
梓は無言で頷き、すぐさま懐から紙片を取り出す。 墨筆で、ためらいなく書き込む──
久遠 梓
久遠 梓
紙片を、呪いの壺に投げ入れた瞬間、乙骨がその壺をリカに媒介として具現化させる。
乙骨 憂太
リカ
リカは白い呪力の霧とともに、梓の術式を媒介する“音叉”のような構えに変化する。 その瞬間、乙骨と梓の術式が**“重ね掛け”**となり、言霊が空間を貫く。
“響”――記憶を呼び起こす言霊 “悼”――鎮魂の意志 “継”――誰かに託す決意
響きは術式の中を通ってリカへ リカから呪力となって空間全体に届いた。
久遠 梓
呪霊・相馬の身体がびくりと震える。
相馬 駿
伏黒 恵
虎杖 悠仁
乙骨 憂太
乙骨は両手を合わせ、膨大な呪力を圧縮。
乙骨 憂太
リカの術式共鳴による純粋な呪力音波が、空間を震わせる。 呪霊・相馬の“本体”へ、その光が届く。
相馬 駿
乙骨 憂太
呪霊の核が砕ける。 そして、彼の魂は、静かに消えた。
久遠 梓
乙骨 憂太
久遠 梓
梓は、壺を包んでいた布をぎゅっと握る。
久遠 梓
乙骨 憂太
久遠 梓
乙骨 憂太
久遠 梓
乙骨 憂太
言葉の間に、沈黙が生まれる。 けれど、それはどこか居心地の良い沈黙だった。
久遠 梓
乙骨は、意外そうな顔をして それから困ったように笑う。
乙骨 憂太
「呪い」と「想い」、 それぞれの“過去”と“未来”を背負って。 交差するのは、きっと偶然じゃない。 これは、“青春”と“呪術”の、すこし不器用でまっすぐな交差点。
コメント
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続き楽しみに待ってます!!