♪
___それはとても綺麗な音だった。
轟姫
轟姫が空けた穴から、下の様子が伺える。 音はそこから聞こえた。
私たちに奇襲をかけた、和服の女が白目を剥いて倒れていた。
轟姫
轟姫の言葉はおよそ仲間に向ける物とは思えないが…敵の内部事情などどうでもいい。
私の目は白目の女ではなく、もう1人の人物に向けられていた。
ミファエル
レジスタンスの一員、イロハもまた傷だらけで地に倒れていた。 その顔はどこか幸せそうだ。
イロハはきっと共鳴現象を起こす「必殺技」を使ったのだ。 自傷を伴う諸刃の剣。
その他にも幾つかのダメージが見受けられる。本当に……危ない。 轟姫も視線を辿り、大きく鼻を鳴らした。
轟姫
轟姫
轟姫
轟姫
ミファエル
ミファエル
穴から視線を外した。
ミファエル
ミファエル
轟姫
轟姫は、手に持つ長槍を横に大きく振った。
ボウッ
薄暗い回廊にオレンジの光。 ___炎だ。
四元素の科学力は想像の上を行く。 あの長槍は特殊だ。振ると炎が発生する。
炎を纏った長槍を構え、轟姫が突進して来る。
___銀髪が宙を舞う。 斜め上から跳ね上がって来た槍を、上体を反らしてかわす。鼻先を炎の尾が霞める。
…上体を反らした勢いそのままに、近距離にある轟姫の鼻っ柱目掛けて蹴り上げる。
轟姫
しかし轟姫の顔色は変わらず、顔を傾けて蹴りをかわした。 …別にいい。これくらいで肩を落としてたら戦場になんか立てない。
数度 床上を回転して取った距離を、轟姫は一瞬で詰める。
炎の槍の猛攻。 1つ1つの軌道を見極めかわして行く。
轟姫
ミファエル
槍の横振りを身を屈めてかわすと __膝下まであるスカートの裾を少し捲る。
右足に蛇革で留めた小型の銃を取り出し_____
ド ド ド
その鼻先に銃口を突き付けると躊躇わず引き金を引いた。
轟姫
轟姫は上体を反らして弾丸を避けたが、鼻の頭に薄く紅の筋が走った。
それを指先で拭い取った轟姫の眼前に___左足に取り付けていた組み立て式の槍の刃。
轟姫
ギギィン! ガァン!
___回廊に、炎の唸りと2本の槍の衝突音が響く。
ガァァン!
一際甲高い金属音。火花。 蝋燭の火が揺れる。
どちらからともなく距離を取った。
轟姫
ミファエル
轟姫
轟姫
轟姫は槍を持っていない方の掌をゆっくりと広げた。
赤に近い、オレンジの人魂のような物が掌に発生する。 それは分裂しながら掌を離れ
加速をつけ再び集合した時には巨大な火柱へと変じていた。 _床に穴を空けた技だ。
ミファエル
・・・・ 私は近くの騎手像を引き寄せ 防御と回避に成功_____
ミファエル
違う、まだだ。 もう次の火柱が___
ミファエル
直撃は避けたが、熱風と何より床に穴を空ける威力だ。 足場は無くなり私は下の庭へ____
___落ちる寸前、なんとか片手が穴の淵を掴んでくれた。
しかし銃は下に落ちた。 取りに行こうと思えば行けるが、下にはイロハがいる。
あの女の業火に晒させたくない。晒させない。
ミファエル
持っている槍を突き刺し、反動で再び回廊に降り立つ。 轟姫が目を細めて庭を顎でしゃくった。
轟姫
ミファエル
轟姫
ミファエル
私の指先から、薄紫に発光する光の帯が現れる。 それは壁際に等間隔に並べられている騎士像にくっつき
ミファエル
ふわりと 騎士像達は浮遊し、轟姫の頭上で止まった。
ミファエル
ミファエル
光の帯が騎士像から離れた。 すなわち磁力の消失。働くのは重力のみ。
鉄製の騎士像が轟姫めがけて墜落する。
轟音。
ミファエル
ミファエル
回廊には騎士像の山。 薄く上る土埃。
轟姫
騎士像の山からオレンジの爆発。
轟姫
炎の槍で騎士像を蹴散らして、轟姫が突進して来る。
ミファエル
ネオジム磁石の磁力で別の騎士像を引き寄せ、その隙に距離を取って回避する。
ミファエル
轟姫
轟姫は嫌ったらしい笑みを浮かべると、長槍を背中に納めると
クロスに装備しているもう1つの武器、弓を取り出した。
ボウッ
放たれた弓矢は、たちまち炎に包まれ真っ直ぐ私の元に飛翔する。 …確かにこれだと間合いも何もない。
軌道を読み避けるのは容易だが、炎の弓は着弾後そこを火の海と化す。
それの連射。 「殲滅」と言うワードを多用するわけだ。
轟姫
ミファエル
さながら流星群のように、絶え間なく炎の弓が飛翔する。 __私はその群れの中に飛び込んだ。
加速をつけた勢いのまま、壁に飛び移り
ミファエル
壁面を数歩 走行すると、轟姫の真上で槍を振りかぶった。 更に騎士像の持つ大剣(鉄製)も引き寄せる。
轟姫は しかし不敵に笑った。間違いを嘲笑うかのような___
轟姫
着弾した後の弓の残骸が 揺れながら1ヵ所に集まって行く。
ゴウゴウと唸りを上げ形作られていく それは____
轟姫
雄に2メートルは越す、炎の獅子。
咆哮と共に。 炎の前足が視界を___
ミファエル
ドゴォーン!!
喰らった。 炎に包まれているが爪は鋭い。脇腹が深く出血している。
壁の一部ごと地面に叩きつけられたおかげで、体に引火した火は消えた。
しかし身体中が痛い。背丈と同じくらいの大きさの、壁の一部がのしかかって身動きが取れない。息も苦しい。
轟姫
轟姫の声がぼんやりと聞こえる。 遠くからなのか近くからなのか、距離が掴めない。
頭部から滴る血が床に染みを作る。
轟姫
轟姫
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