TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

走り出す気配。

本当に性格悪い。 深手を負った私の心臓を串刺しにする気だ。文字通りトドメを刺す気だ。

轟姫

これが殲滅だ

ミファエル

……………

指は動く。 磁力の放出。

騎士像の持つ、大振りの これまた鉄製の剣を引き寄せ、向かって来る炎の槍の防御を___

轟姫

日々磨いている武器と、飾っているだけの武器擬(もど)きを、同列に扱われるとは屈辱だ

知ってる。

やはり弾き飛ばされた。

衝撃で瓦礫からの脱出は成功したが、

ミファエル

はぁ……はぁ…

血が止めどなく溢れる。目が霞む。

轟姫

さっきまでの威勢はどうした。もうスタミナ切れか?

この女、強い。

ミファエル

はぁ……はぁ…

___駄目かもしれない…。

__私は幼い頃から、優秀と言われて育った。

魔術養成学校のペーパー試験。実技試験。 全てにおいてトップだった。

それが当然だと思っていた。

だって私は努力したから。 努力して結果を出さないと、私に価値は無いから。

__私の生まれた家は、殊更 権力に、城に住む事に固執していた。

護衛する為とかでは無い。 城に住む身分、と言う肩書きが欲しいのだ。

だから同じように贔屓されていたゴームの家を目の敵にし、1人娘である私に、王族の目に留まる人間になれと努力を強いた。

反抗とか、非合理な事はしなかった。

ただ寝る間も惜しんで努力してるだけなのに「才能」、「家柄」の1言で片付けられ

周りから妬みと言う名の嫌がらせを受けるようになり、自分は一体何なのだろう、と思う事はあった。

ゴームの家系は代々「糸」の魔術だが、私の親族も「操り糸」の魔術を使えるのではないか

___そんな事をつらつらと考える1人ぼっちの休み時間は、酷く虚しかった。

___城に住むアレンは、何度か目にした事がある。

魔術制御は全然で、それなのに時々城を抜け出し遊び回っている。

苦労知らずの脛かじり。こう言う人が「才能」や「家柄」を多用するんだ。

こう言う人に媚びを売る意味が分からない。 ……でも私は操り人形だ。

そして元「四聖」の反乱が起きた。

家はそんな時でも、権力を指向した。 反乱から数日後、私を呼びつけ言った。

「レジスタンスと言う対抗勢力に、王族の者がいるらしい。 レジスタンスに入りなさい。共に反逆者を討ちなさい

そしてお前の実力を示しなさい。 王族の目に留まる人間になりなさい」

元「四聖」の実力は折り紙つきだ。彼らの独裁政治が始まる事は、誰の目にも明らかだ。勝ち目を考えるなんて非合理だ。

要は私は命を賭して、或いは犠牲にして王族に媚びを売らないといけない。 操り人形以下の存在だ。

___反抗なんて非合理な事はしなかった。 こんな下らない世界に、未練など無かったから。

「ねぇ、貴方はどんな魔術なの?私は音!あ、私イロハ!」

ムードメーカー気取りの女がいた。

「うるさいぞイロハ」

そして敵対関係となっている、ゴームもいた。

「アンタもレジスタンスに入るのか?磁力の家の者だろう。俺は前からアンタらは胡散臭いと思っていた

アンタは本当にこの国を思って、レジスタンスに入ったのか?」

「えー、それってどう言う事?」

…どうして私が矢面に立たされる。 下らない。本当に下らない。

アレンがいた。

1人になりたくて、あの月がよく見える中庭に行くと、 アレンが肩を震わせて泣いていた。

アレンの父親が殺害されたのは聞き及んでいた。 この時間がその瞬間なのだろう事は理解出来た。

なのに、苦労知らずの脛かじりのくせに、 アレンは不躾に迷い込んだ私を怒らなかった。

「人前では泣かないようにしてんだ」

「泣きたいなら泣けばいい」

無性に腹が立った。 …だってアレンの泣き笑いが下手くそだから。

だって私は 「泣いてる暇があるなら勉強しよう」と言い聞かせて生きて来たから。

「そっか。じゃあ泣く」

アレンは泣いても許される身分だ。境遇だ。 私と違って。

だから堪えるな。身勝手な大人に反抗しろ。 貴方は我が儘を言える。

私と違って。私の分まで。

「…待って。一緒にいて。 1人は嫌なんだ…」

「___ありがとうスッキリした

アンタは知ってる。すげー優秀なんだろ。 でも父さんが言ってた。挫折の無い人間なんて居ないって

アンタが無理だ、どうしようも無いってなったら、今日のお礼。 アンタの我が儘を気の済むまで聞いてやる」

「………こっち見ないで

今目にゴミが入ってるの」

理解してくれなんて言わない。 隣にいてくれる人が欲しかった。休み時間はずっと1人で過ごしてたから。

___あの瞬間。 レジスタンスに身を置く理由が確立した。

駄目かもしれない…

初めての挫折だ。

ミファエル

はぁ…はぁ……

だから私は勝たないといけない。アレンに約束を守って貰う為に。

脇腹を押さえ、震えながら立ち上がる。

ミファエル

…さっきのセリフ、そのまま返してあげる

ミファエル

轟かせるのは、私の名前。
__私は魔術養成学校、首席で卒業したんだから

轟姫

…過去の栄光を持ち出すのは現状が不甲斐ないからだろう?

轟姫が槍を一振りし、炎と共に駆けて来る。

轟姫

現実を見ろ!そのボロボロの有り様で、私に殲滅される以外に何があると言うのだ!

ミファエル

………

騎士像を引き寄せ、防御と回避。

投げ出された自分の槍を回収し、繰り出される炎の槍を受ける。

ガキィン!

ミファエル

貴方に勝つ

轟姫

ほざけ

ガァン! ガギン ギィィン!

ガギィン…!

轟姫

チッ

轟姫が舌打ちして後ろに距離を取った。 轟姫の槍の刃が根元から砕け散る。

ミファエル

剣術でもトップなの

轟姫

調子に乗るなよ

轟姫は使い物にならなくなった槍を投げ捨てると、すぐさま炎の弓を繰り出す。

あれは間合いも遠距離も近距離も無い。 私は___

轟姫が幾度も床に空けた穴に足を進めた。

轟姫

はっ無駄な事を。落とした銃でも拾うのか

轟姫

私に背を向けるとは良い度胸だ!

左肩を弓が掠める。

ミファエル

………っ

掌で引火した火を消しながら、私は穴に向かって磁力の帯を放つ。 __痛い。熱い。

轟姫

私を見くびるなよ。あの銃はアルミニウム製。磁力は効かないだろう

轟姫

私に勝つと言っていたが空耳だったか?

ミファエル

____知ってるし確かに言った

・・・ 投げた

風切り音。 磁力で穴から引き寄せた物は___

轟姫

なっ……

雅美の手裏剣。

ミファエル

この手裏剣はニッケルで出来てる。ニッケルは磁力の影響を受ける

コントロールも もちろん優秀な成績を納めた。 __投げた手裏剣は余さず轟姫にヒットする。

ミファエル

最初に見た時は水瓶に入ってた。そのままだと流石に回収は難しいけど、今は「都合良く」地面に散らばってる

轟姫

ぐっ……あの、役立たずがぁっ…

ミファエル

____余所見しないで

・・・・・ 銃を構えた

躊躇わず引き金を引く。

轟姫

なァ"…っ

軸足。今度も命中。 轟姫の片膝が遂に地を付く。

轟姫

何故だっ
銃は磁力の影響を受けない筈っ……

ミファエル

引き金に手裏剣を引っかけたの

ミファエル

磁石にくっ付けたクリップで他のクリップを引っ付けて、遊んだ事無い?あれの応用

ミファエル

言った筈。
私は魔術養成学校、首席で卒業したの

銃を納め、槍を構えて轟姫との距離を詰める。

轟姫

フゥー…フゥー……
…ならば学習しろ優等生。炎の弓を使ったと言う事は

火炎のような怒気を顕(あら)わに、下から私を睨みつけると轟姫は左手を私に向かって広げた。

___弓が着弾した後の炎が、揺れながら1つ所に集まる。 弓の炎は連動している___

眼前に、あの巨大な獅子が現れた。

轟姫

刻み付けろ、轟かせろ!
私の名は、轟姫だ!!

轟姫に呼応してか、耳をつんざくような雄叫びをあげて、獅子が私に前足を振り上げる。

ミファエル

___銀髪が宙を舞った。

首があった場所を、獅子の業火が猛スピードで通過する。 __首を傾けてかわし、また獅子を追い越す。

首筋に髪が垂れた。

背中まであった髪は、獅子の前足によりほぼ ごっそり持って行かれた。 今は肩にも届かない。……体が軽い。

轟姫

っ………

槍を持っていない手に「磁力」を宿らせ、走る勢いを止めずに

轟姫の口に押し込んだ。

轟姫

ぐフッ…何を

ミファエル

足掻いても無駄。体内だから防御は出来ない。…イロハに教えて貰った

ミファエル

____内部振動。
マグネトロンって知ってる?

ミファエル

物体の水分子を振動させて内側から熱を発生させる、マイクロ波を放出するの

ミファエル

「火」の貴方に相応しいでしょう?

轟姫

ぐ……ゴフッ…

轟姫の身体が時折大きく痙攣(けいれん)し、大量の血を吐き出す。

轟姫のもう片方の膝も、地に付いた。 その身体から、立ち上る湯気。焦げて行く黒髪。

轟姫

はぁ…はぁ……ガハッ

ミファエル

……………

___正真正銘、 全身全霊を駆けた大技だ。

炎の弓が掠めた所が痛い。獅子に抉られた脇腹も痛い。

目が霞む。 ____私の限界も、近い。

轟姫

はぁ…はぁ…
……1つ、質問に答えろ

地に完全に膝を付き、喀血(かっけつ)を繰り返しながら、轟姫は問うた。

まだ、倒れない…か……。

ミファエル

今のは結構自信があった。倒れると思ってたのに……貴方本当性格悪い

痛む身体を奮い立たせ、足と槍を引きずりながら轟姫へと歩を進める。

轟姫

お前が優等生である事は分かった。…私と同じようにな

ミファエル

一緒にしないで。私は貴方と、馴れ合う気は無い

轟姫

私は非合理 不確実が嫌いだ。お前もそうだろう

轟姫

……獅子は私と連動している。最後の攻撃は一分(いちぶ)の情けも無く、全身全霊でお前を殲滅せんと振るった

轟姫

非合理 不確実を嫌うなら、一も二も無く防御に徹した筈だ。……なのにお前は回避して攻撃すると言う、非合理で不確実な手を選んだ

轟姫

…相討ちを好まないのだろう?何故だ。……私の業火を、確実に回避出来ると踏んでいたのか?

ミファエル

違う。
だって大切に手入れして来た髪が飛んだ

轟姫の首筋に、槍の刃を当てる。 轟姫はもう立ち上がろうともしない。

ミファエル

___冒険してみたくなったの。危ない事をしてみたくなったの

乱れ、縮れた髪の向こうの、轟姫の口元に笑みが広がっているのは気のせいだろうか。

きっと気のせいだ。 今の私は最高に昂ってる。身体中が痛いのに体が軽い。

ミファエル

操り糸が切れたから。生まれて初めて本能に従ったから

気のせいだ。轟姫が笑ってるなんて。 笑っているのは私だ。

気のせいだ。轟姫が笑ってるなんて。 流れる声は微かに震えている。

轟姫

………羨ましいよ

槍を持つ手に力を入れる。 ………約束は守ってねアレン。

ミファエル

これが、本当の私

あてがった刃を、一閃した。

参考

マイクロ波を放出するマグネトロンに、フェライト磁石を合わせたのが、電子レンジです。

作中ではマイクロ波の性質だけを取り入れました。

(要は人間をチンした状態です。たぶん髪とか焦げるんじゃないかなぁ、と想像して書かせて頂きました)

非リアは理科 すごい苦手なので、あたたかい目で見て頂ければ…。。 読んでくださりありがとうございました。

この作品はいかがでしたか?

40

コメント

1

ユーザー
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚