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夢野ひより
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走り出す気配。
本当に性格悪い。 深手を負った私の心臓を串刺しにする気だ。文字通りトドメを刺す気だ。
轟姫
ミファエル
指は動く。 磁力の放出。
騎士像の持つ、大振りの これまた鉄製の剣を引き寄せ、向かって来る炎の槍の防御を___
轟姫
知ってる。
やはり弾き飛ばされた。
衝撃で瓦礫からの脱出は成功したが、
ミファエル
血が止めどなく溢れる。目が霞む。
轟姫
この女、強い。
ミファエル
___駄目かもしれない…。
参考
マイクロ波を放出するマグネトロンに、フェライト磁石を合わせたのが、電子レンジです。
作中ではマイクロ波の性質だけを取り入れました。
(要は人間をチンした状態です。たぶん髪とか焦げるんじゃないかなぁ、と想像して書かせて頂きました)
非リアは理科 すごい苦手なので、あたたかい目で見て頂ければ…。。 読んでくださりありがとうございました。
__私は幼い頃から、優秀と言われて育った。
魔術養成学校のペーパー試験。実技試験。 全てにおいてトップだった。
それが当然だと思っていた。
だって私は努力したから。 努力して結果を出さないと、私に価値は無いから。
__私の生まれた家は、殊更 権力に、城に住む事に固執していた。
護衛する為とかでは無い。 城に住む身分、と言う肩書きが欲しいのだ。
だから同じように贔屓されていたゴームの家を目の敵にし、1人娘である私に、王族の目に留まる人間になれと努力を強いた。
反抗とか、非合理な事はしなかった。
ただ寝る間も惜しんで努力してるだけなのに「才能」、「家柄」の1言で片付けられ
周りから妬みと言う名の嫌がらせを受けるようになり、自分は一体何なのだろう、と思う事はあった。
ゴームの家系は代々「糸」の魔術だが、私の親族も「操り糸」の魔術を使えるのではないか
___そんな事をつらつらと考える1人ぼっちの休み時間は、酷く虚しかった。
___城に住むアレンは、何度か目にした事がある。
魔術制御は全然で、それなのに時々城を抜け出し遊び回っている。
苦労知らずの脛かじり。こう言う人が「才能」や「家柄」を多用するんだ。
こう言う人に媚びを売る意味が分からない。 ……でも私は操り人形だ。
そして元「四聖」の反乱が起きた。
家はそんな時でも、権力を指向した。 反乱から数日後、私を呼びつけ言った。
「レジスタンスと言う対抗勢力に、王族の者がいるらしい。 レジスタンスに入りなさい。共に反逆者を討ちなさい
そしてお前の実力を示しなさい。 王族の目に留まる人間になりなさい」
元「四聖」の実力は折り紙つきだ。彼らの独裁政治が始まる事は、誰の目にも明らかだ。勝ち目を考えるなんて非合理だ。
要は私は命を賭して、或いは犠牲にして王族に媚びを売らないといけない。 操り人形以下の存在だ。
___反抗なんて非合理な事はしなかった。 こんな下らない世界に、未練など無かったから。
「ねぇ、貴方はどんな魔術なの?私は音!あ、私イロハ!」
ムードメーカー気取りの女がいた。
「うるさいぞイロハ」
そして敵対関係となっている、ゴームもいた。
「アンタもレジスタンスに入るのか?磁力の家の者だろう。俺は前からアンタらは胡散臭いと思っていた
アンタは本当にこの国を思って、レジスタンスに入ったのか?」
「えー、それってどう言う事?」
…どうして私が矢面に立たされる。 下らない。本当に下らない。
アレンがいた。
1人になりたくて、あの月がよく見える中庭に行くと、 アレンが肩を震わせて泣いていた。
アレンの父親が殺害されたのは聞き及んでいた。 この時間がその瞬間なのだろう事は理解出来た。
なのに、苦労知らずの脛かじりのくせに、 アレンは不躾に迷い込んだ私を怒らなかった。
「人前では泣かないようにしてんだ」
「泣きたいなら泣けばいい」
無性に腹が立った。 …だってアレンの泣き笑いが下手くそだから。
だって私は 「泣いてる暇があるなら勉強しよう」と言い聞かせて生きて来たから。
「そっか。じゃあ泣く」
アレンは泣いても許される身分だ。境遇だ。 私と違って。
だから堪えるな。身勝手な大人に反抗しろ。 貴方は我が儘を言える。
私と違って。私の分まで。
「…待って。一緒にいて。 1人は嫌なんだ…」
「___ありがとうスッキリした
アンタは知ってる。すげー優秀なんだろ。 でも父さんが言ってた。挫折の無い人間なんて居ないって
アンタが無理だ、どうしようも無いってなったら、今日のお礼。 アンタの我が儘を気の済むまで聞いてやる」
「………こっち見ないで
今目にゴミが入ってるの」
理解してくれなんて言わない。 隣にいてくれる人が欲しかった。休み時間はずっと1人で過ごしてたから。
___あの瞬間。 レジスタンスに身を置く理由が確立した。
駄目かもしれない…
初めての挫折だ。
ミファエル
だから私は勝たないといけない。アレンに約束を守って貰う為に。
脇腹を押さえ、震えながら立ち上がる。
ミファエル
ミファエル
轟姫
轟姫が槍を一振りし、炎と共に駆けて来る。
轟姫
ミファエル
騎士像を引き寄せ、防御と回避。
投げ出された自分の槍を回収し、繰り出される炎の槍を受ける。
ガキィン!
ミファエル
轟姫
ガァン! ガギン ギィィン!
ガギィン…!
轟姫
轟姫が舌打ちして後ろに距離を取った。 轟姫の槍の刃が根元から砕け散る。
ミファエル
轟姫
轟姫は使い物にならなくなった槍を投げ捨てると、すぐさま炎の弓を繰り出す。
あれは間合いも遠距離も近距離も無い。 私は___
轟姫が幾度も床に空けた穴に足を進めた。
轟姫
轟姫
左肩を弓が掠める。
ミファエル
掌で引火した火を消しながら、私は穴に向かって磁力の帯を放つ。 __痛い。熱い。
轟姫
轟姫
ミファエル
・・・ 投げた
風切り音。 磁力で穴から引き寄せた物は___
轟姫
雅美の手裏剣。
ミファエル
コントロールも もちろん優秀な成績を納めた。 __投げた手裏剣は余さず轟姫にヒットする。
ミファエル
轟姫
ミファエル
・・・・・ 銃を構えた
躊躇わず引き金を引く。
轟姫
軸足。今度も命中。 轟姫の片膝が遂に地を付く。
轟姫
ミファエル
ミファエル
ミファエル
銃を納め、槍を構えて轟姫との距離を詰める。
轟姫
火炎のような怒気を顕(あら)わに、下から私を睨みつけると轟姫は左手を私に向かって広げた。
___弓が着弾した後の炎が、揺れながら1つ所に集まる。 弓の炎は連動している___
眼前に、あの巨大な獅子が現れた。
轟姫
轟姫に呼応してか、耳をつんざくような雄叫びをあげて、獅子が私に前足を振り上げる。
ミファエル
___銀髪が宙を舞った。
首があった場所を、獅子の業火が猛スピードで通過する。 __首を傾けてかわし、また獅子を追い越す。
首筋に髪が垂れた。
背中まであった髪は、獅子の前足によりほぼ ごっそり持って行かれた。 今は肩にも届かない。……体が軽い。
轟姫
槍を持っていない手に「磁力」を宿らせ、走る勢いを止めずに
轟姫の口に押し込んだ。
轟姫
ミファエル
ミファエル
ミファエル
ミファエル
轟姫
轟姫の身体が時折大きく痙攣(けいれん)し、大量の血を吐き出す。
轟姫のもう片方の膝も、地に付いた。 その身体から、立ち上る湯気。焦げて行く黒髪。
轟姫
ミファエル
___正真正銘、 全身全霊を駆けた大技だ。
炎の弓が掠めた所が痛い。獅子に抉られた脇腹も痛い。
目が霞む。 ____私の限界も、近い。
轟姫
地に完全に膝を付き、喀血(かっけつ)を繰り返しながら、轟姫は問うた。
まだ、倒れない…か……。
ミファエル
痛む身体を奮い立たせ、足と槍を引きずりながら轟姫へと歩を進める。
轟姫
ミファエル
轟姫
轟姫
轟姫
轟姫
ミファエル
轟姫の首筋に、槍の刃を当てる。 轟姫はもう立ち上がろうともしない。
ミファエル
乱れ、縮れた髪の向こうの、轟姫の口元に笑みが広がっているのは気のせいだろうか。
きっと気のせいだ。 今の私は最高に昂ってる。身体中が痛いのに体が軽い。
ミファエル
気のせいだ。轟姫が笑ってるなんて。 笑っているのは私だ。
気のせいだ。轟姫が笑ってるなんて。 流れる声は微かに震えている。
轟姫
槍を持つ手に力を入れる。 ………約束は守ってねアレン。
ミファエル
あてがった刃を、一閃した。