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番人/むとうけい作

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番人/むとうけい作

1 - 番人/むとうけい作

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2020年04月22日

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あるところに議会を重んずる小国がありました。

全ての決まり事は一部の権力者によって決められていました。

国には古くから受け継がれてきたシンボルがあります。

シンボルは三方を断崖絶壁に囲まれた石の塔に納められていました。

塔はとても過酷な地にあるため、誰も近づくことができませんでした。

塔の扉は番人一族によって守られています。

父から子へと代々受け継つぎ、シンボルを護ってきました。

もちろん番人一族は扉を護るだけで、塔の中に何があるかは知りません。

番人一族が知らないのですから、当然、国民も知りません。

恐らく国民のほとんどは、自分の国にシンボルがあることさえ知らなかったのです。

シンボルがどんな物か、それを知るのは議長と大臣たちだけ。

そして、塔の中に入れるのはシンボルの管理を任されている担当大臣だけです。

その大臣は一日に一度、正午に見廻りにやってきます。

ゴーン

ゴーン

ほら、今日も正午を知らせる鐘の音が聞こえてきます。

城から出てきた大臣が太鼓腹をゆらしながら、やってくるではありませんか。

番人(僕)

大臣様に敬礼!

番人(僕)

扉に異常はありませんでした

番人(僕)

本日も変わった出来事はなく、平穏そのもの!

大臣

ご苦労である

大臣はポケットから鍵束を取り出すと、

扉についている錠前を開け、塔の中へ入っていきました。

その翌日。

番人(僕)

おじ上お疲れ様です

番人(僕)

交替にまいりました

番人(おじ)

ご苦労!!

番人(おじ)

扉に異常なし

番人(おじ)

甥よ、変わったことと言えば、塔にけしからんツバメが巣を作ったことだ

番人(僕)

けしからんツバメですか…?

番人(おじ)

我が国の大切なシンボルが納められている塔だ

番人(おじ)

たとえツバメであっても侵入の罪は免れない

番人(おじ)

恐らく議会において、ツバメに何らかの処罰が下されるはず

番人(僕)

処罰?

番人(僕)

もしや巣を壊すと?

番人(おじ)

そういうことになるだろう

番人(僕)

ツバメになんの罪があるでしょうか?

番人(おじ)

ツバメに罪などない

番人(おじ)

巣を作った場所が悪かったのだ

番人(僕)

陽射しがポカポカと暖かく平和そのもの…

スッ

番人(僕)

ツバメのつがいがいったりきたり

番人(僕)

きっと、雛のために餌を運んでいるに違いない

番人(僕)

巣を壊してしまったら雛は死んでしまうかもしれない

番人(僕)

あっ

番人(僕)

城から大臣様がやってきた

番人(僕)

手に火かき棒を持っている

番人(僕)

あれでツバメの巣を壊すのかもしれない

番人(僕)

大臣様に敬礼!

番人(僕)

扉に異常なし

番人(僕)

ツバメが巣を作るくらいで、その他に変わった出来事はありませんでした

大臣

そこが大問題だ!

大臣

議会は、けしからんツバメを殺処分することにした

番人(僕)

さ、殺処分って言いました?!

大臣

そうだ

大臣は袋から毒ガススプレー取り出しました。

番人(僕)

大臣様、ツバメは巣を作っただけです

番人(僕)

なんの罪がありましょうか?

大臣

君は議会の決定に逆らうつもりかね?

番人(僕)

逆らうつもりなど…ただ可哀想だと思いました…

大臣

ふん

大臣

害鳥に同情とはおめでたい

番人(僕)

大臣様は本気でツバメに罪があると?

大臣

ふん

大臣

ツバメに罪などない

大臣

巣を作った場所が悪かったのだ

大臣は扉の錠前を開けて、塔の中へ入っていきました。

番人(僕)

ツバメくん! 外敵は鳶(トビ)や鷹(タカ)じゃない

番人(僕)

外敵は人間なんだ

番人(僕)

ツバメくんお願いだから大臣様から逃げておくれ…

ほどなくして大臣が出てきました。

手にはツバメの死骸が入った袋を下げています。

番人(僕)

なんてことだ

番人(僕)

命よりもシンボルが大切だなんて

ツバメの死を悼むように風がヒューヒューっと鳴りました。

 キ   ィ  イ

  バ    タ   ン  !

番人(僕)

あれ…扉が…開いている…

番人(僕)

どういうことだ?

番人(僕)

大臣様が鍵をかけ忘れたに違いない

番人(僕)

番人(僕)

扉は開いている…

番人(僕)

今なら中に何が祀られているのか、わかるということだ

番人(僕)

いや、ダメだ

番人(僕)

大臣に試されているのかもしれない

番人(僕)

塔の中に入っているところを見られては、大変なことになる

番人(僕)

僕だけじゃない

番人(僕)

一族全員に災いがふりかかるかもしれない

番人(僕)

だが、しかし…

番人(僕)

大臣様は明日の昼までやってこない

番人(僕)

ツバメくんはシンボルのために殺されたんだ

番人(僕)

ツバメくんが死んだ理由がなんなのか僕は知りたい

番人(僕)

扉は開いている

番人(僕)

千載一遇のチャンスとはこのことだ

番人(僕)

塔に入るなら今だ

番人(僕)

覗くのはほんの少しだけ

番人(僕)

少しの時間なら見ても構わないだろう

番人(僕)

よし、塔の中に入って確かめてみよう

キ  ィ  ィ

番人(僕)

中は真っ暗だ

番人(僕)

あれ?

番人(僕)

塔の上に微かな灯りが見えるぞ

テク  テク

テク  テク

番人(僕)

なんだ、ただの炎か

番人(僕)

なになに?

番人(僕)

石碑に何か刻まれている

『建国の火』

2000年前より伝わる種火

この地にあった一本の木が落雷により焼失

祖先が炭になった木から種火を取り出したことに始まる

この場所を我が国の建国の地と定め

この種火を我が国の象徴、すなわち聖火とした

番人(僕)

僕が護っていたのは

番人(僕)

2000年前からある聖なる火!

番人(僕)

なんてことだ

番人(僕)

こんな大切ななものを知らずに護ってきただなんて

番人(僕)

2000年間一度も消えることのない火

番人(僕)

ということは万が一

番人(僕)

火が消えてしまったら大変だ

番人(僕)

急に震えが止まらなくなってしまったぞ

キィー…

バタン!

突風がピューと吹きました。

なんと聖なる火が風によって吹き消されてしまいました。

番人(僕)

ひぇー

番人(僕)

ど、どうしよう

番人(僕)

どうしたらいい?

番人(僕)

僕は終わりだ

番人(僕)

大臣様がやってくるのは明日の正午

番人(僕)

交替の兄になんて言えばいいのだ?

番人(僕)

おちつけ

番人(僕)

ダメだ

番人(僕)

おちついて考えてなど、いられない

番人(僕)

ツバメを殺処分したくらいだ

番人(僕)

どうしよう

番人(僕)

僕のために一族が皆殺しに遭ってしまったら

ガクガクと震える番人は立っていられません。

その場に座り込んでしまいました。

どのくらい経ったでしょう。

番人はよろよろと立ち上がりました。

番人(僕)

もはや死んで詫びるしかなさそうだ

番人(僕)

首を吊るにはこの柱がいいだろうか…

番人(僕)

お父さん、お母さん、兄さん、おじさん

番人(僕)

僕の先立つ不孝をお許しください

大臣

おい!おまえ!

大臣

何をしておる

番人(僕)

ひぇー

番人(僕)

大臣様…

大臣

むむっ!

大臣

さては、さては、おまえ

大臣

火を消してしまって死のうとしたな!

番人(僕)

ひぇー

大臣

聖なるこの地をそなたの屍で汚がしてはならぬ!

大臣

塔の鍵をかけ忘れたのはワシだ

大臣

したがって責任を取るのは大臣であるワシなのだ

大臣

おまえは死んではならぬ

大臣

仮におまえが死んで騒ぎになれば、余計に問題は大きくなる

大臣

おまえだけではない

大臣

我が一族も聖なる火を守ってきたのだ

大臣

議会に知られたら、我が一族も皆殺し

大臣

よいか、このことは他言無用

大臣

けして口に出してはならぬ

大臣

今日のことは墓場まで持っていくように

大臣

これより火をつける

番人(僕)

だ、大臣様それは?

大臣

東方の日出ずる国より伝来の

大臣

火打石という道具だ

カチッカチッ

ポッ

🔥

ボワッ

パチ   パチ

聖なる火は何事もなかったように燃えるのでした。

二人は秘密を胸に各々の仕事に戻りました。

若い門番は胸をなでおろす半面むなしさを感じました。

なぜなら

これからは、大臣が点火した火を護るのですから。

大臣は家に帰り、大切な火打石を祭壇に祀りました。

大臣

ありがたや、ありがたや

大臣

これまで何度も聖火が消える度に

大臣

一族の危機を救った火打石

大臣

この度もありがとうございました

大臣

この黒歴史は我が一族のみが知る事実

大臣

議長も議会もワシがつけた火を聖火だと思っておる

大臣

国民から隠し、自分たちだけで独り占めしているお宝が

大臣

まさかワシの手でカチッカチッした火だとは気づくまい

大臣

バレたら一大事

大臣

聞けば聞き腹

大臣

知らぬが仏とは、まさにこのことよ

ハハハハ

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