?????side
『あぁ。こちらに いらっしゃいましたか。』
踏み切りの近くで向き合って 横たわる2人の青年。
『戻ってこられたのですね。 じゃぱぱ様、ゆあん様。』
まだ意識が戻らないようだ。 それもそのはず。
時空の歪みからの脱出なんて 相当の体力を使うでしょう。
『お帰りなさいませ。』
その幸せそうな2人の青年は お互いの手を離すまいと ぎゅっと握っていた。
じゃぱぱside
じゃぱぱ
俺は目を覚ました途端に 激痛に襲われた。
覚悟し始めて1番に見えたのは 真っ白の天井体を起こして 次に見たのは真っ白の壁。
よく見ると俺は点滴に繋がれていた。
あたりを見渡してみると隣のベッドに 横たわるゆあんくんに気が付いた。 この部屋は俺とゆあんくんしかいない ようで何故かベッドの距離も近かった。
まるで俺たちの為に作られたような。 そんな安心感のある場所だった。
ここは安全だと言い切れるような そんな安心感。
よく見ると彼も同様に 点滴に繋がれていた。
ゆあん
ゆあんくんも起きたようだ。
俺と同じような反応で 少し笑ってしまう。
じゃぱぱ
ゆあん
俺はまたその瞳を見ることができて 心から安心した。 近くにあるゆあんくんの手を取った。
白くて骨張ったその手を優しく 撫でてから強く握った。
じゃぱぱ
ゆあん
ゆあんくんの安堵した表情を見て 俺は頬が緩んだ。
すると病室の扉が開く音がした。
医師や看護師が入ってくるものと ばかり思ったから小綺麗なスーツを 着た男の人が現れて驚いた。
じゃぱぱ
『驚くのも無理ないですね。 しかし私自己紹介が苦手でして あちらの世界を知る者とでも 言いましょうか。』
ゆあん
『あなた方が落ちた時空の歪みです。』
じゃぱぱ
『そうですね。 少しお話ししたいことが ございまして、 此処まで来させて頂きました。』
じゃぱぱ
俺はゆあんくんと顔を見合わせた。
少し不信がるような表情をする ゆあんくんと目が合う。
確かに俺も不審がってない訳では 無いけどこの人の口調や話し方は どこか味方だと確信させるものがあって 不思議だった。
この部屋が安全だと感じた時の 感覚と似ていた。
雰囲気に謎の説得力がある。
じゃぱぱ
『あなた方が体験したことや 見たものは誰にも言わないと 約束して頂きたいです。 お2人だけの秘密ということで 留めておいてください。』
『あなた方の見た世界は 夢でも幻覚でもありません。 現実に起こりました。』
『この世界には運命という ものがあります。 必ずそうなると決まっているもの。 あなた方が見たのは そういった運命の裏側です。』
ゆあん
あぁ、なるほどと思った。
こうやって世界の秘密は 守られているのだ。
運命さえも縛ることができない世界に 俺たちは落ちたのだ。
こうして俺たちが戻って来れたのは 決まっていたハッピーエンドでもなく 運命でもなく確実に俺たち自身が 掴み取った結果であるという事。
あっちの世界での話や ゆあんくんのこれからの話。 それと俺の知らないこれまでの話。
しっかり聞かなきゃいけない。
いつかはきっと聞かなきゃいけない。 話さなきゃいけない。
でもそれは、今じゃない。
俺たちは、世界の秘密を見た。
あぁ。
こうやって世界はできていた。
俺たちのように 元の世界に戻れなかった人たちは 次の人生で強く生きていて 欲しいと願う。
俺たちはまだこの世界で もがいて不器用なりに精一杯 生きることを許された。
それならばこの人生を全力で 走り抜ける義務がある。
じゃぱぱ
『親族の方々には 私共がお話をしておきますので 御二方は何も仰らなくて大丈夫です。 では、また何処かで。』
ゆあん
スーツの男が部屋を出て扉が閉まって また静寂が訪れた時ゆあんくんは ポツリとそんなことを言う。
俺はその言葉が嬉しくて その目を見つめた。
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
無邪気に笑うゆあんくんと目が合う。
するとどうも不思議なことに ゆあんくんに引き寄せられるようにして どちらからともなく唇を重ねた。
体の痛みなんて忘れて ベッドを乗り出して。
少し離れて、また重ねた。
長くて短い。
やっと唇が離れて目と鼻の先で笑う ゆあんくんは実に幸せそうな顔で 俺の顔もだらしなく緩んだ。
鼻の頭や頬にキスを降らせる。
鼻がくっつきそうな距離のまま ゆあんくんが言った。
ゆあん
鼻がくっつきそうな距離のまま 俺は言った。
じゃぱぱ
少し言葉が変わったのは許して。
ゆあんくんへの愛が大気圏を 抜けたところだから。
ゆあん
病室の窓の外。 青い木々の葉が通り 雨に打たれて音を立てる。
土曜の朝は雨か。 そうかそうか。
熱のこもった俺たちの 金曜を覚ますような 数ヶ月ぶりの雨だったという。
END.
コメント
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ある作品を前までずっと見てて、でも私テラーが重すぎて1回消しちゃったんです。それで戻ってきた時にあの作品をもう一度見たいと思ったけど見つからなくて諦めてました。その作品は主様が書いたものだったんですね!私は主さんが書く小説とても大好きです!
こんな短い見やすい作品を神作品にするなんて主さん神ですね!? 最初の方はどういう結末か分からなかったけど、 最後はにやにやしちゃうぐらい最高でした!