TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

人魚姫には

彼女を献身的に慕う

一人の騎士が居たそうだ

これは そんな騎士の物語…

騎士団長

マリーナ様。本日の夕食をお持ちしました

マリーナ

……

マリーナはペンを握りしめ、文字を書いた

マリーナ

「いつも、ありがとう」

それは拙くも 心のこもった文字

騎士団長

いえ!

騎士団長

マリーナ様は、王子の命の恩人なのです!

騎士団長

お気になさらず

マリーナ

マリーナ

「うれしい」

騎士団長

私も、です…

騎士は目の前の女性を 見つめる

騎士団長

(今でも、信じられない…)

騎士団長

(こんなに、か弱い女性が)

騎士団長

(荒ぶる海の中、王子を救ったとは…)

騎士団長

騎士団長

(マリーナ様は…)

騎士団長

(言葉を話せぬが)

騎士団長

(強い意志と、勇気を持たれるお方…)

騎士団長

(一国の騎士団長として、見習いたい!)

騎士団長

早く、記憶が戻るといいですね?

マリーナ

マリーナ

「いたい」

騎士団長

も、申し訳ございません!

騎士団長

どこか、痛むのですか!?

マリーナ

「ここに、いたい」

騎士団長

マリーナ様…

マリーナが慕うのは 王子、ただ一人

そう理解していても

騎士団長

(マリーナ様…)

芽生えた想いは 騎士の心を 支配してゆくのだった

騎士団長

王子!

騎士団長

今日もマリーナ様と、お会いにならないのですか!?

王子

…マリーナ?

王子

ああ、あの村娘か…

王子

命を助けてもらった事は、感謝している

騎士団長

ならば!

王子

その礼として

王子

記憶のない、彼女の世話をしているんだ

王子

…充分だろう?

騎士団長

(充分…?)

騎士団長

(あんな、質素な部屋に住まわせて!?)

騎士団長

しかし…!

王子

ええい、黙れ!

王子

僕は所詮、次男坊…

王子

貴族たちに取り入らねば、この立場すら危うい…!

王子

この意味、お前なら分かるだろう?

王子

農民から成り上がった、騎士団長様なら…

騎士団長

…くっ!

騎士団長

(人間は…)

騎士団長

(なんと、浅ましい…)

騎士団長

(地位や名誉にしか、興味がないのだ…)

だが、騎士とて人間

王族に仕える者として 頭を垂れるのだった

騎士団長

…失礼致しました

王子

うむ

王子

分かれば、よい

数日後

騎士団長

マリーナ様…

騎士団長

船酔いは、大丈夫ですか?

マリーナ

……

マリーナ

「へいき」

マリーナ

「海は、すきよ」

マリーナは笑みを 浮かべるが

その瞳に、以前のような 力強さはない…

騎士団長

(どうなされたのだろう…?)

騎士団長

(航海に出てから、様子がおかしい…)

その夜

マリーナ

(王子様は、船でも舞踏会ばかり…)

マリーナ

(航海に出れば…)

マリーナ

(お話ができると、期待していたのに…)

マリーナは、帰ることの 許さない海を眺めた

マリーナ

(お姉様の言う通りだわ)

マリーナ

(海の中で、夢を見ていれば…)

マリーナ

(わたしは、幸せだったのね…?)

その時だった

お姉様

マリーナ!

マリーナ

…っ!!

マリーナ

(お姉様…!)

水面から顔を覗かせたのは、姉だった

マリーナ

(お姉様…!髪が!!)

久しぶりに会った姉には 美しい髪が無かった

お姉様

これは、ね…

お姉様

精霊に、頼んだのよ。
妹を助けてほしいと…

姉が短剣を差し出す

お姉様

マリーナ!
これで、王子を殺しなさい!!

マリーナ

……!

お姉様

それが、貴女の

お姉様

故郷に帰る、唯一の方法なのよ!!

マリーナ

(…王子様を?)

マリーナ

(できません!)

マリーナは首を横に振り

精一杯 自分の意志を伝える

お姉様

マリーナ!
これは命令よ!!

お姉様

貴女は、海の精霊を怒らせてしまった…

お姉様

許してもらうには、それしか方法がないの!

マリーナ

(そんな…)

お姉様

王子を殺しなさい

マリーナ

マリーナ

(わたしには、出来ない…)

お姉様

それでも、人間の味方につくのなら

お姉様

わたしは、貴女を許さない…!!

マリーナ

(お姉様…)

姉の思いを無下にはできず

マリーナは、無言で短剣を受け取った

お姉様

マリーナ…

騎士団長

(マリーナ様が、人魚…?)

騎士団長

(あの短剣で、王子を!?)

騎士は目の前で起きた出来事に混乱していた

だが同時に

騎士団長

(やはり、マリーナ様は…)

騎士団長

(人、ならざる者だったのか…)

納得もしていた

騎士団長

(マリーナ様…)

騎士団長

(貴女は、どんな選択をなされるのですか?)

騎士団長

騎士団長

(私は、貴女にお仕え致します…)

騎士団長

(それが、君主を裏切る結果になっても!!)

数日後

兵士

大変だ!

兵士

誰かが海に、身を投げた!!

騎士団長

なに!?

騎士団長

(まさか…)

恐れていた事が起こった

騎士団長

マリーナ様!?

マリーナの部屋は空だった

騎士団長

マリーナ様!

兵士

団長!

兵士

おそらく、身を投げたのは…

「マリーナ様です」

騎士団長

(なんと…)

もちろん騎士は、マリーナを見守っていた

出来うる限りの 時間を割いて

騎士団長

マリーナ様は、王子を…

騎士団長

傷つける素振りすら、見せなかった…

騎士は、海を覗き込む

ブクブクと泡立つ海面を 目にして

騎士団長

……

騎士の中で

何かが、変わった…

騎士団長

王子!

騎士団長

王子は、居られぬのか!?

王子

なんだ?
騒々しい…

騎士団長

王子!!
マリーナ様が…!

騎士団長

騎士団長

海に、身を投げました…

王子

王子

そうか…

騎士団長

それだけですか!?

騎士団長

悔いは、ないのですか?

王子

…団長。お前は僕に、なにを望む?

王子

僕は、ただ一度、彼女に命を救われただけ

王子

恩は、返した

騎士団長

しかし…!

王子

ええいっ!

王子

お前の君主は、誰だ!?

騎士団長

私の…私が、お仕えするのは…

ダンっ!

騎士団長

マリーナ様!
ただ、お一人です!!

騎士の突き立てた短剣は

王子の美しい髪を 切り裂いた

王子

ぶ、無礼者…っ!!

王子

誰か!

王子

誰か、この者をひっ捕らえよ!!

騎士団長

それには、及びません

騎士団長

この身は、マリーナ様に捧げると決めました…

騎士は床から 王子の髪を拾うと

甲板へと走り その身を海に投げた

騎士団長

(マリーナ様…!)

騎士団長

(今、参ります!)

兵士

団長!!

王子の髪を握りしめ

愛しい人魚姫の元へと 向かうため…

この作品はいかがでしたか?

687

コメント

11

ユーザー

王子様と人魚姫との恋……!😍 だ、だと思ったら…… 「王子の紙を握りしめ……!?」 「愛しい人魚姫の元へ……!?」 んん?騎士目線……!? えー!!ってなりました😂 どんでん返し……😲 今回も面白かったです! 次も楽しみにしております☆

ユーザー

騎士団長様………! 王子様と人魚姫の恋のお話でなく、 騎士目線のお話である事に驚き、感動しました………!😢✨

ユーザー

人形のお話感動致しました 続きが気になる✨  いいね 500回押しました

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚