遠い花

春はいつ来たのか そういえば桜が一瞬咲いて直ぐに散ったな〜なんて考えながらサッカーボールを足でつついていた

体育なんてやる気起きないし、面倒だ 暑いし、汗もかくし

足取り重く佳奈の近くまで行きボールを渡した

わしゃっと頭を撫でようとする手を掴んで阻止した

馴れ馴れしい女子生徒は私の傍についてずっと離れないでいた

女子生徒と話してると後ろからギュッと佳奈が抱きついてきた

少し無理してると直ぐに分かる

だから嫌や

諦めきれなくなる

放課後

そろそろ帰ろうかと思って廊下に出ると窓の外には雨が降り始めていた

微かに香る雨の匂いが段々と強くなってきて、あっという間に雨足は強くなっていた

外に出ると人々は傘をさして歩いていた

傘を持っていないのはどうやら私だけらしい

私は意を決して雨の中を歩き始めた

彼氏と帰路を別れてから家に向かっていると前方にずぶ濡れになりながら雨の中を歩いている珠樹の後ろ姿を見つけた

慌てて走って傘の中に珠樹を入れた

ハンカチを取り出して顔の水滴を取る

バサッと珠樹は前髪をかきあげて少し微笑んだ

その仕草に思わずキュンっとしてしまった

家に帰りたくない私を察して佳奈は自分の家に連れてきて、直ぐにお風呂に入れられた

着替えだけ取りに行ってもらって今日は佳奈の家で泊まることになった

棚から何か遊べるものが無いか探す佳奈をチラッと見ながら部屋を見渡すと小さい頃の私達の写真が飾ってあった

それは昔、佳奈が運動会で転けて、それを私がおんぶして運んでる写真だった

写真を見て昔の思い出を遡っていると

佳奈のスマホが鳴った

スマホを持って部屋を出ていった佳奈

相手はもう分かってる

扉の向こうから聞こえる楽しそうな声に胸がギュッと苦しくなる感覚