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ねぇ、私のこと好きだった? そう尋ねる彼女の後ろにだんだんと近づいてくるように張り付く夕暮れ。悲しげに囁く風の音。 何処か不気味な笑みを零す鮮やかでなんとも癒えない雲の色。 聞いているの‥貴方。 僕は心に秘めた言葉を言えず、ただ一言しか言えなかった。 ‥うん、聞いているよ。 彼女の目も見ず背景に浮かぶ人工的にも見える自然で創られた壁を見る。そのとき、彼女は寂しそうにスカートの裾を強く握りしめた。 実はね、言わなくちゃいけないことがあるの なんだよっと頭を掻きむしった。 そうすると、また彼女はスカートの裾を強く握りしめ口を開いた。 私ね、もう帰らないといけないんだ。 あっそう、ご自由にお帰りくださいと言わんばかりに僕は彼女の後ろを手のひらでどうぞとジェスチャーをした。 …貴方は私が一番大切だった。 僕は彼女が急に独りで詩を読んでいるかのように、語りかけているのかも分からない声で、単語や言葉を並べ彼女自身と僕自身が創り出したものを話していった。 でも、私は貴方を一番大切にしていなかった。 貴方のことをずっと頭の片隅においていた。必要なときに出して、今でないと思うと収める‥そんな単純な動作を繰り返すたび、いつもいかなる時も出しているものよりも、この単純なものが私の大切なもの…一番大切なものへと変わった。 変わったといっても、単純な動作なことは変わらない。貴方に対する気持ちだけが変わったの。 私はその思いがいっぱいになったとき、甘い甘い液体を淹れたコップからそれが溢れ出した。 そして、そこから溢れ出した液体が貴方に‥貴方の心、すべてに流れていき違うコップへと勝手に入っていった。だから、私のことを貴方は嫌いになったかもしれない‥拒絶されたかもしれないと思ったの。でも、それは大きな勘違いだった。勝手に貴方のコップへ入ったのではなく、貴方が受け入れたからそのコップへ注がれていった。 そこから、私と貴方の日記が始まった。最初はそこら辺の公園や町中を歩いているただのカップルに過ぎなかった。でも、それが壊れてしまった。 いや、私が壊してしまった。 彼女は僕との日記、いわゆるラブラブな二人の時を話した。正直に言うと、やめて欲しい。思い出させないでくれとも思う。早く僕から離れてくれと。成長してくれと。 その話をする彼女は目を輝かせたり時折目から光が一切失われたときもあった。僕はそんな彼女を愛らしいと思う。…昔はそうなんだろうな。きっと、たぶん。 …じゃあ、これで最後かな。もうこれ以上貴方のところへは戻らないし行かない。 だから、最後だけは答えてよ。 ねぇ、私のこと好きだった?… 彼女は最後のときもこれを言うつもりだと知った。今の僕は面倒くさいと思い返事をしないだろう。けど、今日で最後だ。心に秘めていたものを今言わないと後悔することになるかもしれない。 あぁ… そう答えると、彼女は嬉しそうに僅かなほほえみを見せた。けど、そのほほえみの中には何かどす黒いものが見えた。 僕が見る限り、それは悪くも善くもない微妙な気持ち悪さがあった。 じゃあ、いくね。 彼女が後ろを振り向き、あの壁に吸い込まれていきそうになったとき、僕は一言言い放ち僕も後ろを振り向き、彼女とは真反対の薄明るいが‥少し虚しさがある景色へと後ろを決して振り向かず歩き出した。 今も好きだから。 彼女は僕の方を振り返ったのかは分からないが、後ろで何か、チョコレートコスモスの匂いがした気がした。
作者から☆
これは、病気でなくなった彼女が未練を残して、まだ彼のそばにいたけど彼にあの質問に答えてほしくて、ずっと聞いていたけれどもうあっちに逝かないといけないと知った彼女は『最後だから』と質問を聞き彼が答えてくれたから逝こうとした。けど、彼も彼でまだ今も彼女を想っていた事がわかって、彼女は暗い暗い闇の中へ彼は真反対の未来がある明るい、けど心は虚しく闇のようなところへ歩んでいきましたって言うお話でした☆ ちなみにチョコレートコスモスの花言葉は 「移り変わらぬ気持ち」「恋の思い出」「恋の終わり」です。別れの中にも残る愛情を表現する。って感じでこの二人に似ているから☆ 「恋の終わり」はある意味、終わってしまった2人の虚しい決断の表れ。 『別れの中にも残る愛情』はこの2人の別れで2人に残るわずかでも儚くても強く、凶器でも切れない愛情。