男にストーカーされてるサラリーマン

あれからゆきなりの行方は分からない。頭に血がのぼってその場で連絡先を消したが、思い直しまた連絡先を登録し直した。

連絡先を消したのを後悔した。会話の履歴が一切残ってない。怒りの感情が高ぶり過ぎてよく見ていなかったが、違和感のようなものが残っていた気がして仕方ない。

警察に心当たりがあるかと聞かれ、つい村瀬の名前をだしてしまった。 もしかしてという疑念が消えなかったのだ。高校時代の話をすると警察は鼻で笑ってた。

連絡はやはりつかなかった。会社、親、友達、知り合い思い当たるところを片っ端からあたったが行方はつかめなかった。警察に捜索願をだしたが、成人した男性を捜索して見つけ出すことは難しいと言われた。

ゆきなりが前に勤めていた会社から連絡があった。置いてあったものを改修に来てほしいと言われた。親でなく友人に頼むのはどうかと思ったが荷物を引き取った。もしかしたら荷物の中にいなくなった理由があるかもしれない。

ゆきなりの荷物は書類の束に筆記用具、それに名刺入れだった。書類の束に一通り目を通したが収穫はなかった。

名刺入れには営業先で交換したであろう名刺が並んでいた。一枚一枚確認していくと一枚の名刺し目が止まった。

「山野井　浩太」

その名前を見た瞬間、ドクンと心臓が跳ねあがった。慌てて高校の同級生に電話をかけた。高校時代に村瀬とたまに話してたやつで村瀬が生きてることを知ってた同級生だ。

「この前も言ったけど、村瀬の親離婚したんだよ。それで村瀬は母親の旧姓使ってるんだと、確か山何とかっていう忘れたけど」

「でも村瀬に会ったとしても絶対タケル気づかないよ。話し方は相変わらずボソッとしてたけど見た目普通のやつになっててさ、そこら辺のちゃんとしたサラリーマンに変身してんだ。人って変わるもんだなって感心したよ」

電話口からの内容を聞き、足から崩れそうになった。

「あっ言い忘れてた。村瀬恋人できたんだってさ」

冷や汗が止まらなくなって、指先まで冷たくなってるが分かった。

「「長年思い続けてた人と一緒に暮らすんだ」って満面の笑みで言われてリアクションに困ったよ。」

「男の恋人が出来たって聞いて驚いたけど、相手があのゆきなりだろ？天地がひっくり返るぐらい驚いたよ。ゆきなりホモ嫌いだったのにさ」

「村瀬がどこにいるか？知らないな。遠くに行くって言ってたけど、詳しくきかなかったし、あいつの電話番号？知らないよ。この前はたまたま会っただけだし」

「しつこいな。本当に知らないって、お前ゆきなりに聞けよ。聞けない？まだ友達なんだろ連絡先ぐらい知ってるだろ」

電話の内容は警察に伝えた。警察の捜査は以前より強化されたが、ゆきなりと村瀬の消息は掴めてない。