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声を出そうとするも、はじめは掠れた母音しか出なく、そのあとには咳をした。
どうやら喉に桜色の液体があったようだ。簡単に舌が動く。
西空ともり
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西空ともり
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一瞬、幼い西空ともりの姿も見えた。
西空ともり
西空ともり
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西空ともり
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西空ともり
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西空ともり
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西空ともり
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西空ともりの形をしたものは、凍えた目で彼女を見る。
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
その凍えた目に映った、哀れな彼女の姿。
するとしだいに氷は解け、奥にある緑が見えてきた。
西空ともりの形をしたものは浴槽を出る。
役割を終えた髪の毛たちは、吸い込まれたかのように収縮した。
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西空ともりの形をしたものはそっと近づき、彼女の頬を撫でた。
産毛の弾性が感じられるほど優しく触れた。
西空ともり
西空ともり
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西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
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西空ともり
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西空ともり
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西空ともり
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西空ともり
空洞
西空ともりは全身が凍り付くのを感じた。
頬に触れている目の前の彼女の手より、なによりもずっと冷えた感覚である。
西空ともり
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西空ともり
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西空ともりの形をしたものの髪が再び動く。
人の腕ほどの束になって、それが二人の間に止まった。
黒い網の向こうには光る何かが見える。
西空ともりが気付くと、すぐにその光が露わになった。
バナナやミカンの皮をめくるように、髪が外にハネ、渦巻をつくって落ちた。
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西空ともりは思わず、息をのんでしまう。
光の正体は、カッターナイフの刃の反射だった。
そして、髪が再び動き始めたのだ。
西空ともり
刃は少女の胸、心臓の上に触れる。
細い液体が流れていく。桃色。
はじめは『つー』、次に『つるー』。そして一気に……
『どりゅうぅぅぅぅうう!!』
辺り一面に飛び散った!
西空ともり
???
カッターナイフに刺された少女は、西空ともりの形をしたものである。
確かにその身体は貫かれた。風穴があくほど大きく貫かれたはずだった。
しかし、よく見れば液体など何も流れていなかった。
すべて西空ともりの錯覚だったのだ。
西空ともり
???
「空洞」
二人の声が重なる。
西空ともり
西空ともり
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西空ともり
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西空ともり
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西空ともり
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西空ともり
西空ともり
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西空ともり
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二人は動かない。
西空ともり
西空ともり
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言ってすぐ、西空ともりの形をしたものは手を口のところに戻した。
もともとそんなところにはなかったが。
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西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
二人は動かない。
西空ともり
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「あの日、西空ともりは夢を見た。」
二人は、左右セットのスピーカーのようなものだ。
当然、声は重なる。
「予言めいた力を持った、奇妙な夢だった。」
「そして、そのことも彼女は自然に確信できていた。」
「目を覚ますと、スマートフォンに一つの通知があり、」
「彼女はそこで友の死を知る。」
「既に知っていた死だった。夢でそうだった。」
「西空ともりは、その日の学校で屋上へと向かった。」
「奇妙な力――彼女も夢で死を体験していたのだ。」
「運命が死と重なったのを感じた。」
「扉の手前まで着き、彼女は思った。」
「『どうせ鍵が掛かっている』」
「しかし、そんなことはなかった。」
「金網の向こう、逆光ではあったが、一人の少女の姿。」
「その瞬間、西空ともりは全身の血液に電流を覚えた。」
「あの少女も死ぬ、と。」
「声を上げようとする――しかし、出てきたのは吐息とわずかな母音のみ。」
「少女は枯れた翼で空を飛んでしまった。」
西空ともり
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西空ともり
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髪が動き、西空ともりの形をしたものの傷が露となる。
カッターナイフに貫かれた胸の風穴。
そこには何もなかった。
その体の中身、それすら空っぽだった。
シロアリに食われた木の幹のように、あったはずのものが消えてしまっていた。
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
浅い眠りで、西空ともりは午前の四時に目を覚ました。
普段は七時になってもなかなかに起きれないというのに。
カーテンを捲くると、朝日が既に出ていることがわかった。
レースカーテンの影が伸びていた。
寝ぼけた意識、西空ともりは窓の外を見る。
その瞬間、白いものが落ちた。
向かいのアパート前の歩道に落ちた。
初め西空ともりには、それが何か理解できなかった。
明らかではあるというのに、理解することだけが脳に拒まれていた。
長髪、白いワンピース。
近所のおじいちゃんが水をやっている花々へ、
赤い液体が流れ、土はそれを食らっていた。
どこからか現れた、三匹の烏が吠える。
かーかーかー。
すると、たちまち二〇近い群れが空に円を描いた。
烏は電線に足を掛け、再び鳴く。
かーかーかー。
文字にすれば同じだが、その吠え方は先ほどとは違うように思えた。
先ほどのが人間の知覚できる範囲への声であるならば、
これはそれを超えた何かへ吠えたように思えた。
後に西空ともりは、亡くなった女性は二〇代社会人だったことを知る。
なお、この事件はネットニュースでもこれ一つで取り上げられることはなく、
自殺に関するまとめ記事に、数百の似たものとともに出された。
先日、昼休み。
屋上へと繋がる階段に腰を掛ける二人。
西空ともりと山本紅里夢は弁当箱を取り出した。
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
藤原るる
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢は手に力を加える。
割り箸が綺麗に割れた。
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
場が静まり返る。この下のあたりを歩いた男子生徒らの、つまらない猥談が聞こえてきた。
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
お菓子売り場で駄々をこねる子供のように喚いた。
もしくは、おもちゃ売り場だろうか。
少なくとも西空ともりは、こんな山本紅里夢を見たことがなかった。
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
西空ともり
声が荒げてきた。
近くを歩く人に聞こえるだろうが、もはやそんなことはどうでもよく思えていた。
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢も声を荒げる。先生を呼ばれるかもしれない。
その考えはあった。しかし、それよりも感情が先走っていた。
西空ともり
山本紅里夢の全身から力が抜けていく。
両手で頭を抱え、上半身を大きく前に倒した。
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢の様子がやはりおかしい。
声から察するに泣いているのだと、西空ともりは気が付く。
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
山本紅里夢
西空ともり
西空ともりは煙草の煙で輪を作るように、優しい息を頬から吐いた。
天井を見上げる。ニコニコと笑っているみたいなシミがあった。
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
ヘンゼルとグレーテルが魔女の家を訪れた時のような、奇妙と呼べる多幸感をともりは覚えていた。
湯気に浮かんだ砂糖の香りと鉄の苦みが、前頭葉の上の遊園地で着ぐるみをかぶっている。
クマさんとライオンさんの歌うエンヴィーが、相対性理論の流れ星とともに果てた。
その姿、まさにメリーゴーランド。
電線に縛られた王子様は、彼女より黒い馬に乗って現れた。
西空ともり
王子様は優しく微笑む。
馬から降りて、ひらりとマントをなびかせた。
震えるともりを抱きしめる。涙を流すともりを柔く包む。
西空ともり
ともりは王子様の衣装を強く握った。王子様は寂しげな瞳を見せる。
二人は見つめ合った。
王子様は最後に、ともりの頭に手を回す。二人はキスをした。
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
西空ともり
山本紅里夢
…………
……り。
……ともり。
ともり!!
西空ともり
瞼を開くと、母の顔が正面にあった。
老けた皮膚のシミがはっきりと見える。ニコニコと笑っているようだ。
西空ともり
西空ともり
西空ともり
お母さんは洗面所を早歩きで後にした。
西空ともり
コメント
2件
前作絡めんの美味すぎかよ ごちそうさま
いやー、今回も深くてやばかった……! 「桃色は存在しない色」って話から、自分自身も錯覚かもしれないって展開、めっちゃ刺さった。西空ともりの中身が空っぽだったっていうラスト、ゾッとしたけど美しかったな。紅里夢ちゃんとの屋上のシーンも好き。「逃げていいんだよ」って言葉にグッときた。哲学と心理描写が溶け合ってて、解像度高すぎる🔥 続きが気になる……!