雨 が 降 る 日 の ハ ル ジ オ ン

案内されたのは 山の中ひとつぽつんと建っている小屋

指を指したところには

巫の姿だった

ああ、この子は優しい子だ

この子にも家族が居た

みんな同じなんだ

わかる、家族を失う痛みを

俺も経験した

自分が死ねばよかったのにとか 考える日々が沢山あった

わかる、わかるよ 辛いよね

今すぐにでも逃げ出したいよね

大丈夫

怖かったよね

あのとき、

おかあさんは痛いことをたくさんする人だった

痣がふえる

怒鳴る声

もう慣れっこだった

でもちゃんとなまえを呼んでよ

おかあさんは十四で私を産み、

わたしが十のとき、 まだおかあさんは二十四だった

おかあさんは二十もの上の男と子供を作り

相手は遊びだったことが判明

わたしが二つの時ほどまでお世話をしてくれたが

結局それからは放置

わたしが六つになったら暴力がふえた

おかあさんの手には きらきら光る刃物があった

言葉が出なかった

“殺される”

それだけが頭に残った

おかあさんが死んでいた

おかあさんは髪も短く

着物もちゃんと着ない人だった

男に間違えて当然

あの人は何も言わずに去ろうとした

わたしは“ともだち”というものがいない

“ともだちをつくるにはまずなまえをきく” と、本に書いてあった

干天の慈雨

いつの間にか斬られてた

けど痛くなかった

心が暖まった

全然記憶あるじゃん

…そういえば

あの時言って欲しかったのは

これだったな、

＿＿＿＿＿！

巫という少女は塵に

骨も残らない

epilogue

おかあさんは珍しく着物をちゃんと来ていた

やっと見つけた

大切なもの

やっと見つけたよ

「 雨 が 降 る 日 の ハ ル ジ オ ン 」

f i n .

𝘛𝘩𝘢𝘯𝘬 𝘺𝘰𝘶 𝘧𝘰𝘳 𝘸𝘢𝘵𝘤𝘩𝘪𝘯𝘨.

Profile

巫 (かんなぎ) 正体不明の鬼. 気の弱い少女.

一沙 (かずさ) 巫の人間の姿. 推定 明治前半頃の人間.

ハルジオン 別名 ￤ 貧乏草 花言葉 ￤ 追想の愛