フッと、
自身の体が落ちていく
弧を描きながら飛んでいくような
そんな感じ...
悠希
俺は、いや僕は
昼食のトーストを食べながら 普段はあまり見ないニュースを見ていた
知り合いが、ニュースや新聞を見てる奴は 頭が良いとか言っていたが、そんなことはない
ただボーッと流れていく映像を見てるだけ
どうやったらこれで頭が良くなるのだろう、と自嘲しながら
ニュースキャスターが話す内容に耳を傾ける
ニュースキャスター
ニュースキャスター
身元不明の遺体が発見されました
ニュースキャスター
大量の品種不明の花が咲いており
ニュースキャスター
ニュースキャスター
ニュースキャスター
ニュースキャスター
へぇ
僕は、先ほどのニュースに少し気になった
どうやってこの状況ができたのか、興味があった
お、もしかしてこういうのが、頭が良いってことなのか?
まぁ、そんなわけがないな
こんなこと明日になったら忘れているだろう
忘れるということは、それだけのものでしかない、ということだ
なら、どうでもいいか
僕はそう考え、思考をニュースから 今日行く植物館のことに切り替えた
悠希
僕は、件の植物館のパンフレットを眺めながらぼやく
最近、この近くに 大きな植物館が開館したらしく
僕は、今日ここに行く予定だ
悠希
未知の体験に心を躍らせながら、僕は支度を済ませる
悠希
リュックサックには、水筒、ペンと手帳、パンフレットが入ってある
悠希
僕は、帽子を被り リュックサックを背負い、植物館へと向かった
植物館へ着き、受付へと僕は向かう
従業員
従業員
受付で、僕は熱烈に歓迎された
従業員
悠希
従業員
従業員
従業員
従業員
従業員
他の植物館にはない貴重な花が展示されています!
従業員
従業員
悠希
そう言って従業員は、他の客の相手をしに行った
悠希
目の前には、前、右、左に扉がある
懐古の植物コーナーはこちら→
僕は、右の扉を開けた
悠希
館内は、流石大きな館と銘打っているだけに広かった
ガラス張りの天井は太陽の光を煌びやかに映し出す
悠希
あまりにも綺麗な光景に見とれ、本来の目的を忘れかけていた
館内には沢山の木や花が咲いており、水の流れる音がよく聞こえる
悠希
トウダイグサ科トウダイグサ属 『ポインセチア』 11月頃から12月頃に美しく色づく
僕は設置されている説明文を読む
悠希
美しい白色の花弁と花言葉が、母さんはとても好きだったらしい
クリスマスの夜に僕に教えてくれたんだ
えーと、花言葉はなんだったっけ?
悠希
何だろう、記憶が曖昧だ
悠希
古代コーナー
僕は、次のエリアに移動する
ここにも沢山の木や花が咲いている
悠希
周りの木のなかで、一際大きい木がある
イチョウ科イチョウ属 『イチョウ』 イチョウは実は、一億五千万年前の古代から繁栄していました そして現在、一種のイチョウだけが残っています
悠希
そう思うと、このイチョウからとてつもない神秘を感じてくる
悠希
少し自嘲する
悠希
案内板を見ると、この先に寄生植物コーナーとやらがあるらしい
悠希
僕は早足で向かった
寄生植物コーナー
悠希
入ると 先ほどの場所より、じめじめとした感覚を覚える
ラフレシア科ラフレシア属 『ラフレシア』 ブドウ科の植物の根に寄生する、全寄生植物
ヤッコソウ科ヤッコソウ属 『ヤッコソウ』 シイノキなどの根に寄生する、全寄生植物
ハマウツボ科ハマウツボ属 『ハマウツボ』 キク科ヨモギ属の根に寄生する、全寄生植物
ツチトリモチ科ツチトリモチ属 『ツチトリモチ』 ハイノキ属のクロキやハイノキなどの根に寄生する
沢山の花があるが、気分は優れない
どれもこれもが不愉快で、醜いとさえ思う
悠希
頭が重い
妙な倦怠感を感じながら
僕は、
僕は、館の中央へ、半ば無意識に向かう
悠希
頭が痛くなってきた
倦怠感は最早、強烈な疲れへと変わった
それでも
僕の足は中央へ、中央へと向かう
悠希
そうして、たどり着いた
中央には、一輪の小さな花が咲いていた
設置されている説明文には
希望科 未来属 『ドリームフィン』 貴方の怠惰な夢は終わりを告げる 頭に咲いたお花を枯らせ 待ち人がいる
悠希
頭痛が酷くなる
何だ、僕は、いや俺は、何かを忘れている?
悠希
悠希
悠希
思い出した
俺は、帽子を投げ捨てる
悠希
俺は自身の頭を触る
すると、髪の毛とは別の感触
そう、まるで花弁のような...
悠希
悠希
戻らなきゃ
俺は、戻らなきゃいけない
悠希
目の前に咲いている花が
光の粒子となって、消えていく
それと同時に、俺の頭に咲いている花の感触がなくなっていく
そして、俺の体は
空へと吸い込まれるように、
落下した
...ゆ..き..?
声が、聞こえる
.....ゆう...き...!...?
俺を、呼ぶ声
せん....せ..! ..う..が!
眠っていた俺を、ずっと待ってくれていた人
悠希!
今、行く
母
医者
目を開けると、そこには見知った人の姿
その姿を見間違えるはずがない
悠希
悠希
悠希
母
母
医者
医者
医者
そう言って医者は席を外す
母
母
悠希
悠希
母
母
静かな病室の中で、 一輪のポインセチアが、すきま風にゆられていた