【愛してるから…言えないこと。】

言ってしまった。

もう後戻りできない。

しばらく沈黙が続いた。

僕は耐えれずに泣きながらうなずく。

やっと声に出た言葉はそれだった。

やだ……嫌いにならないで………

僕のこと

捨てないで………

落ち着く大好きな匂いに包まれた。

僕はさとみくんが抱き着いてきたことに気づくのがだいぶ遅かった。

僕を抱きしめて涙を流しながら謝ってくる。

ずっと怖かった。

妊娠してることに気づかれたとき

みんなは…さとみくんは…僕のことを捨てるんじゃないか。

ずっと言えなかった。

ずっと僕のことを抱きしめながら話してくれる。

目に涙をためながら耳元でそう囁いてくれた。

久しぶりにさとみくんの笑顔を近くで見れた。

ずっと苦しかった心が

やっと解された気がした。

かわいらしい声が聞こえてくる。

僕はあの日からさとみくんにサポートされつつ順調に赤ちゃんを育て

今日、やっと出産日となった。

さとみくんに抱きしめられた瞬間涙が出てきた。

僕の隣に生まれたての赤ちゃんは先ほどとは違い、静かに寝ている。

僕たちがそんな話をしていたころ

いきなりドアが開いて莉犬くんが抱き着いてきた。

莉犬くんのあとから三人が出てきた。

どうやら僕は大分メンバーに心配かけたらしい。

みんなで笑いながら話をする。

……よかった…

このメンバーで…

さとみくんで。

今なら心から笑うことができるよ。

僕はさとみくんの手を握った。

みんなしゃべってる中僕はさとみくんにそう告げた。

笑いながらそう返してくれる君。

僕たちのつないだ手の

お互いの薬指についた指輪だけが

キラっと光っていた。