―試練其の拾漆
希風石と煌月石を見つけ出し、流灯の やぐらへともっていってください―
最初に丘に来た日から二週間が 過ぎようとしていた。
一緒に行動を取るよりも別々になって それぞれで試練を進めたほうがいいのではないか。
そう兄に言われたので、 兄の言う通りに別行動を取っている。
咲蓮
咲蓮
十分ほど歩きつづけ、気づけば緑に あふれる森林の中にいた。
道の端には青々とした草が茂り、 小さな花が点々と咲いている。
鳥のさえずりが遠くで響き、 森全体が生きているようだった。
昼間の日差しは木々の隙間からこぼれ、 森の中に淡い光と影を落としていた。
緑の葉が風に揺れ、木々の間を 通り抜けるたびにひそかな 囁きのような音を立てた。
葉擦れの音が静かに響くなか、 小さな小川がさらさらと流れている。
咲蓮
咲蓮
今にも空に届きそうな木々を見上げて いると、ふいに木の枝にぶら下がっている ものを見つけた。
木の実にしては形が変わっていると思い、 そのもとへと駆け寄っていく。
咲蓮
咲蓮
その正体は、手のひらに乗るくらいの 大きさの石だった。
木を揺らすとすとんと落ちてきたので、 見失わないようにそれを 素早く拾い上げる。
なぜか、じんわりとした暖かさが指先に 広がる。
石の表面は滑らかで、手のひらに 馴染むような感覚があった。
まるで、自分を待っていたかのように。
咲蓮
?
咲蓮
上から声が降ってきたような気がしたが、見上げてみると誰もいなかった。
ただ、鳥のさえずりと葉の囁きが聞こえてくるだけだった。
咲蓮
咲蓮
そう思ってもう一度見上げたけど、 そう簡単には見つからない。
咲蓮
そう口にしたそのとき。
すぐそばを流れていた小川がきらっと 光ったような気がした。
そのほとりにしゃがみ込み、水の中を 覗き込む。
水底には丸みを帯びた石がいくつも 転がっている。
それらは揺れる水とともに 淡い輝きを放つ。
咲蓮
咲蓮
それらの石のなかに一つだけ、明らかに 他のものよりも光を反射している石を 見つけた。
そっと手を伸ばし、水に指を ひたしながら、それを拾う。
冷たい感触が広がり、指先から腕へと 澄んだ冷気が伝わった。
咲蓮
咲蓮
?
今度はさっきとは違う声が背後から かけられた。
慌てて後ろを振り向くも、そこには 誰もいない。
咲蓮
咲蓮
咲蓮
すると、手の中の石が光り始めた。
そして、緑と水色の光が、まるで道標の ように次々に地面へ光を落としていく。
その光たちは森の奥へとどんどん 進んでいく。
咲蓮
咲蓮
ワクワクした気持ちでその光をたどり、 森の奥へと足を進めた。
足元には落ち葉と苔が広がり、 木々の根が大地にしっかりと 根を張っている。
すると、目の前に幹の古びた一本の 大木が立っているのを見つけた。
よく見ると、深く紋様が刻まれていて、 根元には緑の苔が広がっていた。
その裏へと歩いていく。
すると、そこにいたのは。
咲蓮
小萩
咲蓮
咲蓮
小萩
彼の額にはうっすらと汗が滲み、 手には木槌があった。
そして、足元にはまだ木材がいくつか 残されている。
きっと、私がここに来るまでずっと 作業し続けていたのだろう。
風が吹き抜け、葉がさらさらと音を 立てる。
木漏れ日がゆらめき、そよぐ風が 草の香りを運んでくる。
しばらく経ったころ、最後の一打ちを 終えたらしい兄が、私の名を呼んだ。
そちらの方を向くと、大木の前に 小さなやぐらの姿があった。
その中にことんと、二つの石を入れる。
小萩
そう言ってどさっと地面に腰を下ろす。
咲蓮
咲蓮
小萩
小萩
咲蓮
里にあった像の姿を思い出す。
すると突然、その姿が私の よく知っている存在と重なった。
咲蓮
小萩
咲蓮
咲蓮
ぐうぅぅ〜…
咲蓮
小萩
小萩
咲蓮
やぐらの小さな扉を閉め、 私たちは森をあとにした。
私のお腹がなったせいなのか、
夕焼けに照らされた兄が 少し微笑んだような気がした。
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹
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