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ラストの「また、天使を見れる」の一言に、ゾッとしました。 記憶が戻らない方が、幸せなのかも知れませんね。
凄い!凄かったです! 記憶を無くした彼女が飛び降りたときに見えた、天使に恋しちゃったと言う解釈で大丈夫ですか?!(違ってたらごめんなさい) 兎に角凄かったです!
そんな彼女の言葉を
僕はどこか軽く見ていたのだろう
皮肉混じりで発した、無責任な僕の言葉が
彼女を殺したんだ
彼女はまるで、背中から翼でも着いてるかの様に
窓から空へと飛び出した
その姿は僕に、天使を幻視させた
しかし、その姿とは裏腹に
彼女の体は、重力に逆らわず落下した
急いで窓から見下ろした彼女の姿は
羽をもがれた天使の様で
血溜まりの下に伏せていた
僕は、暫し時間をおき 状況を理解し始め、慌てて119番を押した
結果として、彼女は助かった
否、助かってしまった
手術が終わり、意識を回復させた彼女の病室へ 訪れた時に見た彼女の目は、酷く濁りきっていた
原因なんてわかりきっている
僕のせいだ
死にたければ死ねといったのに 死にかけている彼女を助けた
結局 僕は、一人の命を背負いたくなかったのだ
数日後、僕は毎日彼女のもとへ通っていた
贖罪なんて大層なものではなく どうにかして、罪の意識を失くしたかったのだ
けれども、現実は非情で
彼女は、記憶喪失と幼児退行を起こしていた
担当医の話だと、辛い記憶からの自己防衛としてのものらしい
僕は何も言えなかった
「君がこうなった原因だよ」とでも言えばいいのか
と、 少し自暴自棄な思考に陥ってたことに気づき、落ち着かせる
そして、落ち着いてから発せられた言葉は
嘘だった それも、最低な嘘
このままじゃいけないと思っていながら 口は勝手に嘘を並べていく
彼女は一瞬戸惑っていたが、すぐに僕を信用した
実際は、彼女に友達は居らず 学校中で疎遠だったのだが
そうして、互いに自己紹介を済ませた後、 僕は逃げるように病院を出ていった
自宅へと帰って 僕はなぜあんな嘘をついたのかを考えた
別に、友達なんて言う必要はなかった
むしろ、知り合いとか、他人です とか言っておけば彼女と関わらなくてよくなったのに
わざわざ、彼女に親身になる必要なんて───
──そうか
僕は、彼女に恋をしたんだ
いや、恋なんて綺麗なものじゃない
これは激情だ 迸るような愛だ
僕は、彼女の姿
正確にいえば、彼女が教室から飛び降りるあの瞬間
空に飛び立つ天使の姿に魅了されたのだ
きっと、これは普通じゃない
けれど、一度自覚してしまったそれを、 止めようとする気持ちは湧かなかった
そう、これは愛だ
それならば、愛すべき彼女に戻すべきだ
だから、彼女のために記憶を戻すお手伝いをしよう
きっと、その時にまた天使が見れるから