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ぬいぐるみの目玉

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ぬいぐるみの目玉

1 - ぬいぐるみの目玉

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2020年01月19日

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昔々、ロンドンの街の一角に

アリシアという、可愛らしい少女がおりました

アリシアは6歳の誕生日を迎え

父親のディランから、クマのぬいぐるみを貰いました

アリシア

わぁっ!

アリシア

可愛い!すっごく可愛いわ!

アリシア

ありがとう、パパ!

ディラン

ああ、気に入ってくれて何よりだよ

ディラン

大切にするんだよ?

アリシア

うん!

アリシアは大層喜びましたが

ダルシー

・・・・・・

母親のダルシーは、そのぬいぐるみが気に入りません

ディラン

何だよ、ダルシー

ディラン

一人娘の誕生日に、その仏頂面は無いんじゃないかい?

ダルシー

だってディラン・・・

ダルシー

あなた、あのクマを本当に可愛いと思っているの?

ディラン

もちろんさ

ディラン

だって僕が選んで買ったんだよ?

ダルシー

あなたのそのセンスには、昔からつけていけないわ

ダルシー

アリシアも変なとこ似ちゃったわね・・・

ディラン

どういう意味だい?

ダルシー

そのままよ!

ダルシー

ぼろ雑巾みたいにヨレヨレだし、糸も所々ほつれてるし!

ダルシー

何より、あのギョロギョロした目!

ダルシー

なんであんなの買っちゃったの!?

ディラン

この前スコットランドに行ったとき

ディラン

森の中に、小さい雑貨店があってさ

ディラン

その中で売ってたから、買ったんだよ

ダルシー

森の中って・・・

ダルシー

怪しさ全開じゃない

ディラン

これならアリシアも気に入るだろうなぁと思って

ディラン

そしたら予感的中ってね

ダルシー

的中したからいいものの・・・

ダルシー

今後はそんなものにお金かけないで!

ディラン

分かった分かった

ダルシー

あなた・・・

ディラン

ごめん、謝るよ

ディラン

誕生日に喧嘩なんてやめよう

ディラン

アリシアが起きてしまうよ

ダルシー

ダルシー

分かったわ・・・

ダルシー

私達も、そろそろ寝ましょう

 

しかし、次の日の朝

アリシアは、高熱を出してしまいました

アリシア

う・・・

アリシア

ゔうぅん・・・

ダルシー

しっかりして、アリシア!

ディラン

今お医者様を呼んでくる!

ダルシー

急いで、早く!

ディランは急いでお医者様を呼び

それから間もなく、お医者様と一緒に帰ってきました

医者A

それでは、診察します

ダルシー

お願いします!

医者A

・・・・・・・・・・・

しかし

医者A

医者A

ディラン様、ダルシー様

ディラン

はい!

ダルシー

何か分かりましたか!?

医者A

それが・・・・・・

医者A

・・・・・・・・・・・

どれだけお医者様が検査をしても

アリシアの病気は

何なのかサッパリ分からなかったのです

医者A

申し訳、ございません・・・

ダルシー

冗談じゃないわ!!

ダルシー

帰って、このヤブ医者!!

ディラン

お、落ち着けよ!

ディラン

新しい病気かもしれないじゃないか!

ダルシー

でも・・・

ダルシー

そしたら・・・アリシアは・・・

アリシア

・・・・・・・・・・・

 

その夜

アリシア

う・・・

アリシア

ん゙・・・

ダルシー

アリシア・・・

ダルシー

大丈夫よ

ダルシー

明日は、もっと立派なお医者様を呼んでくるから

ダルシー

ダルシー

ん?

ダルシーが、ふとアリシアの机に目を向けると

そこにはあのクマのぬいぐるみが、ぐったりと座っていました

ダルシー

・・・・・・・・・・・

その時ダルシーは、とある異変に気がつきました

ダルシー

こいつ・・・

ダルシー

何だか目が大きくなってない?

もともと気味が悪いほど大きかった、ぬいぐるみの青い目玉は

初めて見たときよりも、一回りほど大きくなっていたのです

ダルシー

・・・気持ち悪い

ダルシー

ダルシー

(アリシアとディランには悪いけど)

ダルシー

(やっぱりこれは、あとで捨てちゃいましょう)

ダルシーは、ぬいぐるみを麻布でくるみ

2階の物置に運んでしまいました

 

それからというもの

ディランとダルシーは、街の有名な医者を一軒一軒訪ね

アリシアを診察させました

しかし

医者B

申し訳ありません・・・

医者C

いや、ちゃんと診察したのですが・・・

医者D

皆目見当がつかないというか・・・

医者たちは口をそろえて

「分からない」と言うばかり

アリシアの容態は、みるみるうちに悪くなってゆきました

アリシア

パパ・・・っ

アリシア

マ、マ

アリシア

苦し、よぉ・・・!

ディラン

アリシア!

ダルシー

ああ、もうダメだわ・・・!

ダルシー

神様っ・・・!!

2人はついに、藁にも縋る思いで

近くの教会へ行くことにしました

 

しかし、その夜

アリシア

・・・・・・・・・・・

アリシア

うぅ・・・

ディラン

アリシア!

ディラン

どうした、水か?

アリシア

さっき・・・

アリシア

夢、見たの・・・

ディラン

夢?

アリシア

クマさんが・・・っ

アリシア

怖い、顔で・・・

アリシア

「出してくれ、出してくれ」って・・・!

ディラン

ディラン

(そういえば)

ディラン

(あのクマ、いつの間にか無くなってたな)

ディラン

(まさか!)

ディラン

ダルシー!!

ダルシー

どうしたの?

ディラン

君、あのクマのぬいぐるみに何かしたか!?

ダルシー

!!

ダルシー

べ、別になにも・・・

ディラン

とぼけるんじゃない!

ディラン

頼む、アリシアに関わることなんだ!

ダルシー

え!?

ディラン

もしかしたら、とんでもないことになっているかも・・・!

ダルシー

は!?一体何の・・・

ダルシー

ダルシー

と、とりあえず

ダルシー

アレは2階の物置よ!

ダルシー

今すぐ行きましょ!

ディラン

ああ!

 

ダルシー

これよ

ダルシー

この布の中

ディラン

・・・・・・・・・・・

ディラン

っ!

ディランが勢いよく布を開くと

そこには

ディラン

ディラン

!!!

ダルシー

ひっ・・・!!

ダルシー

キャアァアアァ!!

そこには

両目が顔の半分にもなろうかという

変わり果てたクマのぬいぐるみがあったのです

ダルシー

の、呪いよ・・・っ!

ダルシー

アリシアはこいつのせいでっ!!

ディラン

すぐに教会へ行こう!!

ディランは夜道の中、馬車を走らせ

丘の上の教会に、2人とぬいぐるみを連れて行きました

ドンドンドン!

ディラン

神父様!!

ダルシー

どうか娘をお助け下さい!

神父

こ、これはこれは・・・

神父

どうされたのですかな、こんな夜・・・

神父

神父

!!

神父

そ、そのクマは・・・

ディラン

こいつです!

ディラン

こいつの呪いを、どうか解いて下さい!!

ダルシー

お願いします!!

神父

ふむ・・・

神父

確かに、息が詰まるほどの禍々しさを放っている・・・

神父

神父

外へ移動しましょう

神父

教会だと、きっと響いてしかたがない

ディラン

ディラン

わ、分かりました・・・

ディラン、ダルシー、アリシアは神父様に言われるがまま

正面にオリオン座が輝く、広い丘へ移動しました

神父

おお

神父

こんなところにちょうどいい枝が2本

ディラン

え、枝?

ダルシー

ちょっと、さっきから何なんです!?

ダルシー

早くして下さいよ!

神父

これは奥様、失敬

神父

しかし、これで準備は整いました

神父

神父

それでは、お三方

神父

念のため、耳を塞いで下さい

神父

目も閉じた方がよろしいかな

ディラン

は、はい

ダルシー

はい・・・

ダルシー

アリシア、ちょっとごめんね

アリシア

・・・・・・・・・・・

2人が耳を塞ぎ、アリシアが耳にスカーフを巻いたのを確認すると

神父様は、何やら力を入れて

クマの目に枝を2本、突きつけました

ディラン

な、何を・・・

神父

そして

次の瞬間

 

グサッ!!!

クマのぬいぐるみ

クマのぬいぐるみ

ぎやァアアァアアアアアアアァァアアア!!!!

ディラン

!!!

ダルシー

ゔっっ!?

耳を劈くような、クマの大絶叫とともに

神父様はクマの両目を、枝でほじくり返しました

クマのぬいぐるみ

いぎィイイイ、ぎぎゃァアアッ!!!

クマのぬいぐるみ

グギギギィイイイイィィ!!!

ディラン

うっ・・・!

ディラン

耳がっ・・・割れ、る!!

ダルシー

見ちゃダメよ、アリシア!

ダルシー

・・・ぐっ!!

アリシア

・・・・・・・・・・・

クマのぬいぐるみ

ぎゃァアア、ッッガアアァ!!

クマのぬいぐるみ

ガッ・・・・・

クマのぬいぐるみ

ボトッ

神父

・・・・・ふう・・・

神父

終わりました

神父

これが、こいつの本体です

ディラン

うっ

神父様が指さした先には

潰れて水晶体が出た巨大な目玉が2つ

無残に転がっていました

ダルシー

こ、これがあの目玉・・・?

ダルシー

本物の眼球じゃない・・・

ディラン

ああ・・・

ディラン

見てると吐き気がする・・・

ディラン

ディラン

いや

ディラン

消えてくぞ

目玉は、夜空に吸い込まれるように

サラサラと煙になり、やがて無くなってゆきました

そして

アリシア

アリシア

ん・・・

ディラン

!!

今まで虫の息で眠っていたアリシアが

そのクリクリした目を、ぱっちり開かせました

ディラン

アリシア!!

アリシア

パパ・・・

ダルシー

アリシアッ!

アリシア

ママ・・・

その顔は、さっきまでの青白い顔とは一転

淡いピンク色の肌に戻っていました

唇も紫色ではなく、ルージュのような赤色になっています

アリシアの呪いが解けたのです!

ディラン

ディラン

良かった・・・

ダルシー

本当・・・

ダルシー

本当に良かった・・・!

ダルシー

ダルシー

アリシアッ!!

アリシア

わっ!

アリシア

マ、ママ!

ディラン

アリシア~!!

アリシア

パパまで・・・うわっ!

2人は滝のように涙を流し

アリシアをギュウッと抱きしめました

アリシア

あ、熱い・・・

ディラン

熱い!?

ディラン

まだ熱が下がってないのか!?

ダルシー

バカ!

ダルシー

あなたがギュウギュウくっつき過ぎなのよ!

アリシア

ママもね・・・

神父

ホッホッホ

ディラン

ディラン

神父様

ディラン

このたびは・・・

神父

お礼など結構ですよ

神父

神のお導きを受ける者として、当然のことをしたまでで御座います

ダルシー

ダルシー

いえ

ダルシー

貴方のおかげで、娘は救われたのです

ダルシー

ここでお礼を言わずして、いつ言えば良いのか・・・

ディラン

そうです

ディラン

神父様

ディラン

本当にありがとうございます

ダルシー

ありがとうございます

アリシア

・・・・・・・・・・・

アリシア

ありがとうございますっ!

神父

ホッホッホ

神父

どう致しまして

 

ディラン

では、神父様

ディラン

あなたに神のご加護があらんことを

ディラン

ディラン

ハッ!

ディランは手綱を引き、馬を走らせました

だんだん遠ざかっていく馬車を

神父様はその姿が消えるまで、ずっと見守っていました

そして

神父

神父

アリシア、ディラン、ダルシー

神父

あなた方に神のご加護があらんことを

神父

アーメン

神父

神父様は、そっと十字を刻むと

夜空をしばらく仰ぎ

やがて教会へ帰って行きました

 

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お久しぶりです。合宿から帰ってきた作者です。 今回は昔話みたいに書くことに挑戦しました。最初はそんなつもりはなかったんですが、物語作ってるうちにそれっぽい話になったのでこうなりました。いつもより書いてて楽でした。また作れたらシリーズ化させたいな。 あと語り手は全体的にアリシア関係を話してるんですが、主人公はディラン。でも恐らく一番セリフ量が多いのはダルシー。なんかややこしいことになってすみません。

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