テラーノベル
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蘇枋隼飛が消えた。 いや、居なくなった。と言った方がいいのかもしれない。 桜の殺風景な白い部屋。 その中にある小さな机の上に、 「ごめんね。」 という手紙が1通だけ置いてあった。
それ以来、蘇枋は消えた。 級友達に聞いても、 皆口揃えて知らぬ存ぜぬ。 桜こそしらないのか?と、聞き返された位だ。
自分の恋人が、文だけ置いて急に消えた。蘇枋が消えた、なんて実感が湧かない。それでも、心にぽっかりと大きな穴が空いた気分だった。
その穴は、何をしても塞がらなくて、 きっとこれからも、アイツが帰ってこない限り開いたままなのだろう。
桜の日常は、急に変わってしまったのだ。
冷たい雨が、ざぁざぁと振り、ここら一体を濡らしていく。 傘をさして歩いているのに、 桜の心だけがびちゃびちゃに濡れている。
風鈴の制服を腕に通しただけで、 来ている服は半袖の白いTシャツ。 少しひんやりとした風に煽られ、 早く帰ろうと足を早めた時だった。
動けなかった。 それを見た瞬間、早めた足に枷が着いた様にびくりとも。
桜
赤みがかった紫寄りの髪に、白い医療用眼帯。綺麗な白い肌に通された服は、その顔に良く似合うチャイナ服。 その耳には、雨で濡れ重みをましたであろうサンゴのタッセルピアスが着いている。 濡れた髪から除く蘇芳色の赤い瞳は鋭く光こちらを睨んでいる。
傘もささずに、冷たい雨に振られ続け、その身体を震わせながら体育座りをしている男は、桜のよく知る人物だった。
違うのは、桜よりも一回りも二回りも小さな体、右目を覆う布だ。
どうして、なんで、そんな言葉が口からあふれでた。 困惑する頭。震える身体、 ズキリと痛む胸。
頭が思考を放棄しようとする。 何とか1歩、その男… 男の子に近寄り、傘を差し出した。
桜
『恋人を拾いまして。』
コメント
3件
この度は新連載ありがとうございます✨ もう既に伏線がはってあるのでしょうか…🤔 プロローグからわくわくがとまりません😖💕 素敵なお話楽しみにしてます、これからも頑張ってください🔥
皆様、いつもご愛読ありがとうございます。連載にも余裕が出てきたので、なんとなんと、前から話していた新連載です!今回はプロローグということで、とても短いですが、へぇこんな感じのお話がでるんだなぁくらいに思っていてください🙇🏻♀️