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高城寛貴(所長)

はい、わかりました

所長が受話器を置いてこちらにやって来た

沢田マリカ

所長!今のって!

高城寛貴(所長)

被害者の家族が訴えを取り下げる手続きをしたらしい

芹沢大和

どうして急に!?

高城寛貴(所長)

わかりません……

突然のことに

その場にいた全員が動揺を隠しきれず

龍三さんも真美さんも驚いていて

特に真美さんは言葉も出ないと言うような様子だった

三村龍三

あ、あの……

三村龍三

優真は……

高城寛貴(所長)

四十八時間後には釈放されるそうです

三村真美

お、お義父さん……

三村龍三

しかし……真美ちゃん……

三村真美

も、もう一度、龍二さんに連絡します!

三村真美

電車の切符も……変えてもらいますから!

真美さんは再び龍二さんに連絡を取り状況を説明

真美さんのスマホから

微かに驚く男性の声が聞こえた

一目だけでも会えたら

そんな思いで山梨の田舎からここまで来た二人

まさか訴えが取り下げられるとは思いもしていなかったはずだ

急遽もう一泊しなければいけなくなったため

そのホテル探しもしなければならず

二人は大慌てで宿泊予定のホテルへ向かった

数時間後

幸いにも今日泊まるホテルでの連泊が可能になったと連絡が入る

沢田マリカ

よかったですね……

沢田マリカ

同じところに泊まれることになって

芹沢大和

そうだな……

しかし

なぜ今になって訴えが取り下げられたのだろうか?

考えれば考えるほど謎は深まるばかり

被害者の家族にとって

三村優真の存在は脅威だったはず

虐待の事実を知り

彼女の傷を治療した彼を野放しにすれば

いずれ居場所を突き止めて乗り込んでくるかもしれない

世間に虐待の事実が露見し

彼女を殴った母親も

性的虐待を加えていた兄も

気持ち悪いと罵った父親も

警察に通報されて後ろ指を指されながら生きることになる

だから被害届を提出したのだと思っていた

彼が塀の中にいれば

虐待の事実が露見することもない

万が一調べられたとしても

彼女の身体にはもう傷はないし

全ての罪を彼に擦り付けることだってできる

それなのに

今になって訴えが取り下げられた

いったいなぜ?

まさか……

沢田マリカ

芹沢さん……まさか……

芹沢大和

あぁ、俺もそう思う

彼女だ……

彼女が家族に懇願したのだ

虐待の事実を隠すことを条件に

彼女が彼を助けようとしている

沢田マリカ

やっぱり……彼女も彼のことを……

芹沢大和

まだそうと断定した訳じゃないけどな……

沢田マリカ

で、でも……

芹沢大和

とにかく、明後日には釈放されるんだ

芹沢大和

お前は三村に会う準備しておけ

沢田マリカ

でも、もう面会はできないですよね……

芹沢大和

できるだろ?

沢田マリカ

え?

芹沢大和

釈放されるんだ

芹沢大和

そうなったら……

沢田マリカ

警察を気にせず会える!!

井川静(じん)

お母さんが訴えを取り下げた……

井川静(じん)

何でお前が犠牲になろうとしてんだよ……

井川静(じん)

お前を拉致したカスみたいな男に……

井川静(じん)

身も心も捧げたってのかよ!!

井川あすみ

お兄……ちゃん……やめ……て……

井川静(じん)

お前は俺のものだ……

井川静(じん)

誰であろうと絶対に渡さない!!

井川あすみ

だめ……い……いやぁ……

井川静(じん)

二度と俺を拒むな……

渇愛と純情ー愛の鎖に繋がれてー

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