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第1話 - あ

2023年09月30日

#恋愛

結城　真矢

サヤカ

メイさん

サヤカ

今日、駅前のスーパーに来てた？

メイ

あ、はい

サヤカ

やっぱり！珍しいな～と思ったのよ

サヤカ

声かけようと思ったけど、まさかメイさんみたいな庶民的な人があの高級スーパーに来るなんて、

サヤカ

ないだろうな～と思ってたから、ちょっと声かけるの遠慮しちゃったのよ

サヤカ

間違えちゃったら恥ずかしいしね

メイ

はぁ、そうですか...

サヤカ

それで、どうして今日はあそこで買い物してたの？

サヤカ

いつもは、メイさんの家の近くの激安スーパーに行くんでしょ？

サヤカ

私、知ってるんだから

サヤカ

メイさんが、いつもその激安スーパーでタイムセールの時間を狙って買い物行くこと...

メイ

昨日は、たまたま電車で移動する用事かあったので、

メイ

ちらっと見てみたんです

メイ

結局買い物はしなかったですけど...

サヤカ

高級スーパーに行っておいて、何も買わずに出てきたの！？

サヤカ

それは失礼でしょ

サヤカ

さすが、庶民がやることは違うわね...

メイ

思った以上に、値段が高くてやめただけです

メイ

そんなに、悪いことですか？

サヤカ

悪いこと、っていうか...マナーとしてどうなのかしら、ってことよ

サヤカ

ああいうところに入ったら、少しでも買い物するものでしょ

サヤカ

雰囲気だけ楽しんで帰ってくるなんて...信じられないわね

メイ

別に、周りに迷惑かけてるわけじゃないですし、

メイ

サヤカさんにも、特に迷惑かけてないですよね！？

メイ

何がそんなに気に食わないんですか？

サヤカ

私はね、自分が気に入っている空間の中は、100％高級な雰囲気にしておきたいの

サヤカ

平凡な人がいたら、その場の雰囲気が台無しになるでしょ！

メイ

そんな理由ですか...

サヤカ

そんな理由？

サヤカ

そんなこと、ないと思うけど？

サヤカ

ハイブランドのアパレル店の通りの中に、一軒だけ個人のよく分からないお店があったら...

サヤカ

その通りの雰囲気が台無しになるじゃない

サヤカ

それだけ、他の人に影響を与えるのよ

メイ

気にしなければいいじゃないですか

サヤカ

気にしなくても入ってくるのよね

サヤカ

あまりにも、周りと雰囲気が違いすぎて

サヤカ

だって、今日着ていたカーディガン、あれなに？

サヤカ

どこのカーディガンなの？

メイ

普通の、平均的な価格のカーディガンです

サヤカ

え！？うそでしょ？

サヤカ

高級スーパーに行くなら、今度から前進しっかり身を整えから行きなさいよ

サヤカ

質の高いところに行く人たちは、外見もよく見せないとダメなの

サヤカ

これ、頭に叩き込んでおいて、次からは同じ失敗しないように...！

サヤカ

気を付けてね

メイ

気を付ける、って...何を気を付けるんですか...？

メイ

悪いこと一切してないのに...

サヤカ

そんなこと言って...私は忠告したんだからね！

サヤカ

絶対に、同じこと繰り返さないでよ

~3日後～

サヤカ

メイさん、今度近所の人たちでアフタヌーンティー行くんだけど、

サヤカ

メイさんも来る？

メイ

アフタヌーンティー...興味あるんですけど...

メイ

今月はもう金銭的に厳しいので止めておきます...

サヤカ

そうなのね

サヤカ

まあ、いいわよ別に

サヤカ

無理して誘うなんてことしないから

サヤカ

それに、1人7000円のアフタヌーンティーだからね

サヤカ

メイさんには、少し厳しいわよね

メイ

それ分かってて、私のこと誘っているんですよね？

サヤカ

違うわよ

サヤカ

メイさんも、たまには贅沢な気分味わいたいかな～と思ったの

サヤカ

毎日、毎日、旦那さんお少ない収入のせいで、あまり贅沢できないんでしょ？

サヤカ

可哀そうに

メイ

別に、私は不満なんて一切ないですよ

メイ

私は、今以上の生活は特に望んでないです

メイ

夫のことを応援する、って決めたんですから

サヤカ

メイさんの旦那さん、今はゲーム会社の社員なんでしょ？

サヤカ

年収も、そこまで高くないのにどんな夢掲げちゃってるのかしら？

サヤカ

対した位置にはつけないでしょうに...

メイ

夫のことバカにする人に、教えたくはないです

メイ

私は彼のこと、誇りに思っているので

メイ

なので、私もできる限り節約して、

メイ

夫が買いたいものを我慢しているから私も我慢しよう、って決めたんですよ

サヤカ

それ、叶うといいわね～

サヤカ

いつになることやら、って感じだけど...

サヤカ

まあ、せいぜい頑張ったらいいんじゃない？

サヤカ

私の夫は、大手不動産会社に入社してから、1年でトップセールスマンになったけどね

サヤカ

おかげさまで、買いたいものは買えるし、いい家にも住めているし...

サヤカ

来月は、海外旅行にだって行けちゃうし...本当に、あの人と結婚してよかったわ～

メイ

サヤカさんは、旦那さんのどこが好きなんですか？

サヤカ

決まってるでしょ？

サヤカ

贅沢させてくれるところよ

サヤカ

贅沢できれば、私は誰とだって幸せに暮らせるの

メイ

それ、本気で言ってるんですか？

メイ

旦那さんのどんなところが好きとか、言えますか？

サヤカ

好きなものを食べさせてくれるところ、好きな服とか鞄をプレゼントしてくれるところ、かな？

サヤカ

メイさんは、どうせ旦那さんからプレゼントされたことなんて、ないんでしょ？

サヤカ

籍だけ入れて、まだ挙式も挙げていないみたいだし

サヤカ

結婚指輪もしてないけど、まさか...それもお金がなくて買ってもらえてないの？

メイ

今後、買ってくれる予定です

メイ

でも、私はそれでもいいんです

サヤカ

それで婚約の証明になってると思ってるの？

サヤカ

指輪はいつも、毎日、お互いの関係を確かめ合えるものなのに...

サヤカ

旦那さん、もしかしたらいつか愛想つかしちゃうかもね

メイ

私は、夫のこと信じてます

メイ

夫が夢に向かって努力していることも知っているので、

メイ

パートナーとして側で応援しているんです

メイ

これ以上、サヤカさんと話してても時間の無駄なので、切りますね

メイ

それじゃあ

～1週間後～

ソウタ

サヤカ！俺がいつも読んでるゲーム関連の雑誌なんだけど...

ソウタ

お隣の奥さんの旦那さんが、雑誌に載ってるんだよ！

サヤカ

ソウタ～何言ってんの？

サヤカ

メイさんの旦那さんは、ゲーム会社の会社員じゃん

サヤカ

そこまで上の役員って言うわけでもないし、インタビューなんて受けるわけないでしょ

ソウタ

本当だよ！今写真送るけどさ...ほら！

サヤカ

え～？

サヤカ

本当だ...え！？ゲームディベロッパーとして会社設立！？

サヤカ

え！？どういうこと？

サヤカ

一般的な会社んだったんでしょ？

ソウタ

え？サヤカ知らないの？

ソウタ

俺、前に話したこと会ったと思うよ

ソウタ

「メイさんの旦那さん、ゲーム開発者で会社で働きながら、

ソウタ

ゲーム会社の設立を目指してるらしいって」

ソウタ

会社員の仕事を続けながら事業を進めてたんだよ

サヤカ

そんな...じゃあ、旦那さんの夢ってこのことだったの...？

ソウタ

すごいよな～

ソウタ

だって、会社員しながらゲーム作ってて、

ソウタ

スマホアプリでできるゲームは多い時で1か月で1千万回もダウンロードされてるんだよ

ソウタ

今年の年収は2億が見込まれてるんだってさ

サヤカ

2億！？そんなに！？

ソウタ

本当、同じ社会人として尊敬するよ

ソウタ

本業しながら、ゲームの開発までして、しかも会社設立まで叶えるなんて...

ソウタ

俺も見習っていかないといけないな

ソウタ

俺の方が年上なのに、なんか悔しいな～

サヤカ

ねえ、これどんな会社なの！？

サヤカ

もう少し詳しく教えてよ！

ソウタ

あ！ごめん、これから営業でお客さんがくるから行かないと行けないんだ

ソウタ

今持ってる雑誌、家に持って帰るからその時にでも詳しく見てよ

ソウタ

それか、メイさんに直接聞いてみたらいいんじゃない？

ソウタ

それじゃ、急いでるからごめんな！

～10分後～

メイ

サヤカさん、お話することがあるんです

サヤカ

何？自慢でもしに来たわけ？

メイ

自慢...？何の話ですか？

サヤカ

あなたの旦那さんのことよ！

サヤカ

ゲーム開発者で、すごい人気が出て会社設立するんでしょ？

メイ

あ、もう知ってるんですね

メイ

そうなんですよ

メイ

夫がずっと持っていた「自分でゲームを作って、ゲーム会社を設立する」

メイ

っていう夢が、要約叶えれそうなんです

メイ

これまで少し、長かったですけど...

メイ

彼の夢を傍で応援できて、本当に良かったです

サヤカ

偉そうなこと言って...そういうところが気に食わないの！

サヤカ

なんで今まで言わなかったの！？

サヤカ

あ、叶えられなかったら恥ずかしいから、とか思ってたんでしょ

メイ

違いますよ

サヤカ

やっぱり、陰では旦那さんのこと、信じてなかったんじゃない

メイ

だから、違いますって...前にも一度、言ったじゃないですか

メイ

夫のことバカにする人に、夢を教えたくなかったですし、

メイ

夫も、叶えられるまでは近所の人たちには内緒にしてくれ、って言われてたんです

メイ

驚かせたいから、って...

サヤカ

どうせ...会社っていっても大したことないんでしょ？

サヤカ

それに、1年目が上手くいくかなんて、保証はないしね

サヤカ

赤字になる可能性の方が、大きいんじゃないの？

メイ

いえ、夫はこれからのプロジェクトに、ワクワクしてるところですよ

サヤカ

これからのプロジェクト？

メイ

実は、シンガポールで行われるゲーム解発のエキシビジョンの開催者が、

メイ

夫のことも招待してくれたんです

メイ

それで、「ぜひうちと組んで、面白いゲームを作っていきたいって言われているみたいで」

メイ

1年目から上手くいきそうです

サヤカ

まだ会社を設立したばかりなんでしょ？

サヤカ

そんなうまい話、あるわけないじゃない...

メイ

私は、いつもどんな時も、夫のことを応援していくので

メイ

これからは、もうそんなこと言うの、止めてもらっていいですか？

サヤカ

いきなり、偉そうなこと言って...

メイ

まあ、そう言えるのも今のうちかもしれないですね

メイ

今日、電話したのは引っ越しの連絡をしようと思ってかけたんです

サヤカ

引っ越し？

メイ

はい

メイ

私も、夫についてシンガポールへ引っ越すことにしました

メイ

家ももう決まっていて、エキシビジョンの開催者が良いタワーマンションの持ち主で、

メイ

もしシンガポールに住むんだったら、そこを少し値下げして移住しておいで、

メイ

って言ってくれたんですよ

サヤカ

タワマンに住むの！？

メイ

そうなんですよ

メイ

もう、急に生活が激変しすぎちゃって...頭が追いついてないです...

メイ

それで、再来月から引っ越すので、あと1カ月と数週間、よろしくお願いしますね

サヤカ

じゃあ、出発する前にうちでお食事会でもしていかない？

サヤカ

旦那さんのお話も聞いてみたいし、サインももらいたいわ～

メイ

夫のこと、バカにしてきた人の家になんて、あがりたくないですよ

メイ

夫も、サヤカさんが近所の人たちに自分のことを

メイ

「ゲーム会社に勤めるなんて地味よね～って噂話を聞いたことがあるみたいで...」

メイ

行く気は全くないと思います

サヤカ

そんなこと言わずに...！

サヤカ

ご馳走も用意しておくから、ぜひ来てちょうだいよ！

メイ

いえ、本当に、結構です

メイ

私も、夫も、大切な人と一緒に過ごせたらそれで十分、幸せなので

メイ

それじゃあ、他の近所さんにも挨拶があるので失礼しますね

～後日談～

メイ

夫は、シンガポールでのエキシビジョンで見事に自分が開発したゲームをアピールでき、

メイ

沢山の来場者に興味を持ってもらえました

メイ

シンガポールでの暮らしはすごくのんびりできて、今までの心にゆとりもできて最高です

メイ

これからも、夫の幸せに暮らしていきたいと思います

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結城　真矢

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