怖い、そして寂しい
自分から辞めたくせに
暗い部屋で一人ベッドに体育座りをした
母親
入るわよ
母親
暗いなー
椎名 結
お母さんどうしたの…?
母親
お客さん
母親
結に会いたいって
椎名 結
…っ
椎名 結
(樹里…?)
母親
男の人でさ
母親
怪しいから家の中には入れてないのよ
椎名 結
…なんで
母親
知ってる人?
母親
知らない人なら追い払う…
母の言葉に慌てて私はその人に会いに行った
椎名 結
川平、さん…
寒そうに白い息を吐きながら外に立っていた
川平 理樹
なんで急に辞めんだよ!
久しぶりに彼の本気の怒鳴り声を聞いた
椎名 結
進路が決まったからですよ
椎名 結
それ以外に理由なんて…
川平 理樹
嘘つけ
川平 理樹
それだったら急に辞めねえだろ
椎名 結
川平さんには関係ないじゃないですか!
川平 理樹
関係ある!
椎名 結
レガーレの店員だからですか…
椎名 結
私は辞めたからもう…!
川平 理樹
ちげえよ
椎名 結
…え
川平 理樹
いいか
川平 理樹
一度しか言わねえからよく聞け
川平 理樹
川平 理樹
俺はお前が好きだ
川平 理樹
好きだから一緒にいてえ
川平 理樹
それは関係無いって言えるか?
椎名 結
川平さん…
真剣な目を向けられる
向き合うのが怖いから…逃げたのに
川平 理樹
言えよ
川平 理樹
もう逃げんな
彼は逃してくれない
椎名 結
ごめ…なさ…
傷ついた目を見るのが怖くて下を向く
けれど無理やり顔を上げられた
予想に反して
目の前の彼は呆れたように笑っている
川平 理樹
知ってたよ
川平 理樹
俺様は何だってお見通しだからな
川平 理樹
川平 理樹
お前の好きな奴だって分かるぞ
椎名 結
ごめんなさい…
椎名 結
傷つけたくなかったのに…!
川平 理樹
それが理由か
川平 理樹
傷付かねえよ
川平 理樹
一方的な想いだったんだから
川平 理樹
むしろ女嫌いな俺を魅了してくれてありがとな
彼はどこまでも優しい
近づいた距離からふんわりとコーヒーの香りがした
椎名 結
椎名 結
…っ…
川平 理樹
泣くなよ
川平 理樹
きっと皆も傷つかねえから
椎名 結
でも…
川平 理樹
むしろお前いねえ方が傷つくから
川平 理樹
ま、これ以上はこの人から聞けよ
椎名 結
…っ!
川平さんは去っていき、代わりに現れた相手に心臓が跳ねる
椎名 結
____、なんで…
???
もう、逃げないで
私は、想いを伝えてもいいのかな
泣いてる彼女をもう抱きしめられない
撫でてもやれない
アイツの笑顔を一番に見られるのも俺じゃない
川平 理樹
川平 理樹
分かってたけど、キツイな…
俺の恋は終わったが
せめて好きなやつの恋はハッピーエンドで終わってほしい
次回予告
椎名 結
…私は
???
聞かせて
真っ直ぐなあなたの瞳が好き
辛いとき側にいてくれたあなたが好き
何度も隠した想いを私は…
次回最終回