短編

一人きりの帰り道

いつもは仲のいい友達と帰っているのだか

今日に限って補習らしい

いつもと何も変わらない道を歩き

ふと道端に落ちているハンカチに目を留める

淡い黄色で少し湿っている

きっとついさっき落としたに違いない

僕はこのハンカチの持ち主を知っている

目を閉じて思い浮かべる

陽だまりのような君の存在を

切りよく担任が教室に入ってきて

一日がスタートした

ハンカチを拾った時から

ずっと💛くんのことが頭から離れない

早く返さなくちゃ

休み時間に💛くんの教室を尋ねるも

先生に呼ばれたとかで結局会えなかった

曲がり角を曲がると目の前には

ハンカチの持ち主

💛くんが歩いていた

姿を見つけた途端

咄嗟に口から出た言葉

だけど言葉が続かない

なんて言えばいいのだろうか？

何その笑顔

急に胸が締め付けられる

早くハンカチを渡さなくちゃいけないのに

だけど今渡したら

もう二度と喋ることが無いかもしれない

これをきっかけに

仲良くなることはできないのだろうか？

普通ハンカチ拾ってもらったくらいで

メールの交換とかしないよね

断られる……よね

ごぞごとカバンをあさる君

彼は素早く交換をして

何やら文字を打ち始めた

ピロン

通知がなって画面を見てみると

よろしくお願いしますm(_ _)m

もう行っちゃうんだ

なんか寂しいな

ん？またあした

ってことは明日も会えるってこと？

何それ天国じゃんか

後で💛くんの教室行こっかな？

そんなことを考えてると

クラスメイトから呼ばれていると言われ

廊下に出てみると

💛くんと一緒に帰れるんだ

2人きりで帰る…

なんかドキドキするな

早く放課後にならないかな

💛くんと2人きり

急接近の予感です

先生に呼び出されて

少し遅くなってしまった

💛くん待っててくれるかな？

なんの話してるんだろ

なんで女の子もいるんだろ

でも💛くんも男の子だもんね

やっぱり＿＿＿

諦めた方がいい？

ぽつりとそんな言葉が出た

自分でも驚くくらい低い声で

だって女の子じゃなくちゃ

僕を見てくれないでしょ？

みんな僕に可愛いって言ったって

それは男の子の可愛いでしょ？

やっぱり女の子になりたい

ド直球すぎてびっくりする

好きな人を言うべきなのだろうか？

でも言ったとしても彼が

受け入れてくれる可能性は低い

そんなあっさりでいいの？

僕言っちゃうよ？

だって

なんで僕がハンカチの持ち主を

知っってたか知ってる？

ずっと君を見続けてきたからだよ

最初は目で追うだけだった

廊下ですれ違うときとか

外で体育をしてる時とか

太陽みたいな笑顔で

周りを照らしてる君

お話…したいなって

だけどひとつも関わりのない僕が

急に喋りかけたって

仲良くはなれないだろう

だから僕は得意の頭を使った

どうしたら君と喋れる？

どうしたら仲良くなれる？

思いやりのある君ならば

きっとこうしてくれるって信じてたから

一人きりの帰り道

ポケットからハンカチを取り出し

適当な場所で

落とした

少し先で君を待ち

拾ったと同時に歩き出す

早く明日にならないかな？

もう少しで君と話せる

騒ぐ心を沈めて

空を見上げる

やっと

君と話せる

これは

偶然

なのか

それとも

必然

だったのか

僕は今

💛くんの隣で

笑いあってる

差し出された手を

握り返して

前よりも少し色が暗くなっていたが

僕が拾ったそれだった

~END~