一部始終を呆然と眺めていたぼく。
あまりの非日常的な光景に固まっていると、涼ちゃんがおいで、と呼んでくれた。
ぼくは、混乱しつつも、呼ばれるがまま涼ちゃんのところに歩いていく。
藤澤
びっくりさせちゃってごめんね。
涼ちゃんが近くに来たぼくの頭をポンポンと撫でる。
大森
あの…ごめんっ、気付かなくて…
藤澤
大丈夫だよ。
ぼくが元貴を呼んだんだし。
ぼくが元貴を呼んだんだし。
そう言って、涼ちゃんはいつものぼくの好きな笑顔で微笑んだ。
大森
…さっきの人は、涼ちゃんの恋人なの?
藤澤
違うよ。
大森
え、じゃあなんで?
藤澤
ん〜、あの子にお願いされたからかな。
大森
そ、そうなんだ…
男同士、なのに?
男同士、なのに?
藤澤
うん、問題ある?
大森
そっか…ない、よね。
さっきの光景がずっと頭に残ってる。
回らない頭に、涼ちゃんのピアノの音色が流れてこんでくる。
いつもより少し寂しそうな音色に、心がギュッとなる。
ぼくは、何も言わずにただ窓の外を見ていた。