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湯気が立ち昇るお風呂場を出て、私の 恋人が待つ居間へ向かった。
この後の楽しい時間を想像して 自然と広角が上がってしまう。
梓
誠
キッチンで2人分のグラスを手に持ったまま、こちらを見て柔らかく微笑んだ彼。
なんて懐っこくて愛らしい笑顔なんだろう
初めて会ったときからずーっと、いつ見ても癒されるこの笑顔に弱いのだ。
これは惚れた弱みだろうか?
誠
梓
誠
梓
梓
こくこくと頷いてから、テーブルの上に グラスを置いた彼は、いつもの 定位置である椅子に座った。
私はテーブルの隣にある棚から、小分けのお菓子が入った袋を取り出して、テーブルの上に広げた。
それから彼の向かいの席に腰をおろす。
彼は甘いものが好きなので テーブルの上のお菓子を見て 嬉しそうに手を伸ばした。 とても可愛い。
二人ともお酒を普段から飲まない為、もちろん彼が注いでくれたのはお茶だ。
一口飲んで、彼の方に視線を戻す。
梓
誠
梓
他愛無い会話をしながら隣の恋人と ゆっくり過ごす夜はとても穏やかだった。
彼とは付き合って3ヶ月になるが ひとつだけ。 順調に見える私たちにはひとつだけ 普通では無い部分があるのだ。
それがきっかけで彼と出会えたのだから良いじゃないかと言う友人もいるが、私はこれを良しとしてはいない。
このままお互いに見て見ぬフリをして 過ごしていくつもりもないのだ。
彼の事が本当に大事だからこそ しっかり向き合いたい。
彼にも同じように 向き合ってほしいと思っていた。
梓
誠
優しい眼差しを向けられて、言葉に詰まってしまう。
本当は今日のデート中もずっとこの話を しようしようと思っていたのに、いざ彼の 顔を見ると口が動かなくなってしまって 今に至る。
私の「偽の顔」が 彼は好きなのではないか?
「無機質な白い物体を被った私」が 彼は好きなのではないか。
真実なんて知りたくはないのではないか?
梓
怖くなって俯いてしまう。 両手に持ったグラスをぎゅっと握った。
そんな様子を見た彼は、驚いたような顔をして、慌てて隣の席に移動してきた。
誠
グラスを強く握っていた手を、彼の手が 優しく包んだ。
…大丈夫だ、きっと大丈夫。
こんなに優しい彼となら大丈夫。 私たちは、きっと分かり合える。
梓
梓
きょとんとした顔でこちらを見つめる彼。
私は真剣に彼を見つめ返す。
誠
誠
彼はゆっくり頷きながら困惑した顔をしている。 何か勘違いをしていないかなと心配になるが、やっと話が出来ることが決まってひとまずほっと胸を撫で下ろす。
そうと決まれば私も覚悟を決めて、話す 内容を整理しなくては。
梓
誠
梓
お茶の残りを飲み干して、席を立つ。
彼は少し心配そうにこちらを 見上げたので、頭を優しく撫でてあげた。
大丈夫だよ、私きっと あなたになら全部話せるの。
頭の中を整理しながら、私は 浴室へと向かった。