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ニキ

あーダルっ

ニキ

今日はこのままバックれたいなぁ…

いつもの様に学校の屋上で、カバンを枕にして仰向けに寝転がっていた

地元ではそこそこの進学校有名なここで、こんな風にサボってるやつは珍しい

勉強は嫌いでは無いが、好きでもない。そもそも面倒くさがりなので、楽ができる方が性に合っていると思う

そんな俺が、そこそこの力で合格出来て楽に卒業できるところを選ばなかった理由…それは

ガチャっ

しろせんせー

あ、やっぱりここにおった

しろせんせー

お前なぁ…

しろせんせー

毎回呼びに行かされる俺の気持ちにもなれや

ニキ

んー?

ニキ

今日は早かったねww

しろせんせー

早かったね…じゃないんよ

しろせんせー

まったく…

しろせんせー

お前、ホンマはかなり出来るのに

しろせんせー

なんでこんなにちゃんとせんのや

ニキ

何でだろうねぇw

屋上の扉を開いて、呆れ顔でやってきた男

こいつが、俺をここの学校へと惹き付けた原因だった

ニキ

ボビちゃん、いつも真面目だと疲れない?w

気だるげに起き上がって、膝の上に肩肘をついて問いかけると、ボビーはフッと顔を逸らしながら口の中で小さく何かを呟いた

ニキ

ん?

ニキ

聞こえなかった

ニキ

もう1回

しろせんせー

…いや、なんでもない

しろせんせー

とりあえず、教室戻るで

しろせんせー

担任、クソ怒り狂っとったで

ニキ

マジかぁ…ダルっ

軽く肩をすぼめながら立ち上がると、ボビーはあからさまにほっとしたような顔をした

先程のつぶやきは聞かれたくなかったらしい

しろせんせー

ほら、はよ

ニキ

あーわかったわかった

ニキ

ボビちゃんてばせっかちさんなんだからw

しろせんせー

アホなこと言うとらんと

しろせんせー

はよ歩けや

ニキ

はいはいww

怒ったような口調で話しているのに、いつも目元が優しげにこちらを見ている

そんな彼に初めて出会ったのは、中学3年の春塾の先生に無理やり受けさせられた模試の会場だった

~中学3年生、今から3年前~

ニキ

あーもう帰りたい…

ニキ

なんだよアイツ…

ニキ

真剣に受けて

ニキ

偏差値が前回より5つ上がったら、ゲームさせるとか…

ニキ

なんで親と協力してんだよ…

毎日のようにゲームをしていた俺は、塾講師とタッグを組んだ親にゲーム類を全て取り上げられ、無理やり模試会場に連れてこられていた

目標値を決められて、それを越えなければゲームをさせて貰えないと…

イライラはしていたが、受験前だというのに本腰を入れていなかった俺も悪いのかと半ば諦めていた

ニキ

あぁもう…久々に真面目に勉強したから眠い

しろせんせー

しろせんせー

えっと俺は…ここやな

ニキ

ん?

しろせんせー

あ、すまんな

しろせんせー

カバンに当ってもーたわ

ニキ

全然いいけど

ニキ

何?関西の人?

しろせんせー

せやな

しろせんせー

関西出身やで

ニキ

俺、広島から越してきたんだ

しろせんせー

お、似たようなもんやな

ニキ

なぁ、仲良くしようぜ

しろせんせー

模試受けに来て

しろせんせー

友達できるとは思ってへんかったけど、ええでww

ニキ

それはそうww

ニキ

俺はニキ

しろせんせー

俺は連れにはしろせんせー呼ばれとる

ニキ

ふぅん…独特なあだ名だなw

しろせんせー

そう言われればそうやなww

そこから俺たちは、1教科終わる度に色々話した

志望校は…とかどんなものが好きか

普段何してるのか

そんな話をしてるうちに、俺はたまに覗く八重歯や特徴的な笑い方、唐突に出る低く耳障りのいい声…彼のことが気になって仕方なくなっていった

その時は、新しく出来た友達への興味関心程度に思っていた

ニキ

あーダルすぎる…

ニキ

もう、勉強やりたくない

夏期講習をサボって公園でアイスを食べていると、遠くから見覚えのあるシルエットが近づいてきた

ニキ

あれ?

しろせんせー

お、ニキやん

ニキ

ボビー久しぶりー

いつの間にか定着したボビー呼びや、当たり前のように笑顔で呼ばれる関係性が、その頃の俺には嬉しかった

しろせんせー

お前今日は塾やろ?

ニキ

ダルいからサボったw

しろせんせー

お前なぁ…ww

しろせんせー

まぁでも、お前の志望校は

しろせんせー

お前の実力やったら余裕やもんな

ニキ

ふふふ

ニキ

ボビーはもうちょい上のとこだもんね

しろせんせー

せや…結構きついで

そう苦笑いしたボビーは、ふと俺を見つめて言葉を止めた

ニキ

ん?なに?

しろせんせー

お前と学校一緒やったらなぁって

ニキ

え?

しろせんせー

お前とやったら毎日楽しく過ごせそうやなぁって

ニキ

それって…

しろせんせー

まぁ…冗談やw

しろせんせー

今から志望校変えろとか言わんし

ニキ

しろせんせー

たまに会えるだけでも楽しいしな

俺から目を逸らして心做しか寂しそうに笑うボビーの顔が印象的だった

それと同時に、感じたことがないくらい胸が激しく高鳴っていった

今思えば、アレがボビーを意識し始めたきっかけだったんだろう

ニキ

そっか…

ニキ

そんなふうに思ってくれとるんや…

しろせんせー

ははっw

しろせんせー

気にせんでええで?

しろせんせー

冗談やからww

ニキ

冗談…ね

しろせんせー

それよりさぁ…

そこから、互いに近況やら分からないところなどの話をして、時間を過ごした

話をしながらも、先程のボビーの顔がチラついて胸の高鳴りも収まらず、イマイチ集中出来なかったのを未だに覚えている

入学式当日

しろせんせー

あ…れ?

しろせんせー

ニキ?

ニキ

ん?あぁ、ボビーじゃん!

ニキ

やっほー

しろせんせー

やっほーちゃうわ!

しろせんせー

なんでお前がここおるん?

ニキ

なんでって

ニキ

俺もここ受かったからw

しろせんせー

え?

しろせんせー

だってお前…

ニキ

ふふふ

ニキ

ボビーが言ったんだよ?

ニキ

俺と同じ学校がいいって…

しろせんせー

え?

しろせんせー

お前…そんなことで…

ニキ

そんな事ってw

ニキ

俺には結構な理由よ?ww

しろせんせー

いや…え?

しろせんせー

はぁ?

目をまん丸にして慌てるボビーの反応が可愛くて、胸がキューってなった

思わず抱きしめたいと思った自分に驚き、その時にやっと、俺がボビーに抱いている感情が何なのかを悟った

ニキ

ボビー

しろせんせー

なんや?

ニキ

あのさ…

しろせんせー

ん?

ニキ

…これから3年間よろしくな

しろせんせー

ふはww

しろせんせー

なんや改まってww

しろせんせー

当たり前やろww

しろせんせー

お前の隣は俺のもんや!

ニキ

ふふふww

ニキ

ボビー俺の事大好きやんw

しろせんせー

…うるせぇ///

ニキ

あれあれぇ?ww

ニキ

どうしたのかなぁ?ww

ニキ

照れちゃったのかなぁ?w

しろせんせー

うるせぇうるせぇ!

しろせんせー

ほら、教室行くぞ!

ニキ

ふふふ

ニキ

まってよボビー

真っ赤になって照れているボビーが可愛すぎて、俺はニヤニヤしながらボビーを追いかけた

現在

りぃちょ

ニキニキー

ニキ

ん?りぃちょ?

りぃちょ

ねね

ニキ

なんだよ!

りぃちょ

いいから…こっちきてよ

ニキ

ちょっ

ニキ

ひっぱんなや

ニキ

ボビーごめん

ニキ

先教室行っといて

しろせんせー

あ…あぁ

ボビーに連れられて教室に向かっていた俺は、隣のクラスのりぃちょに手を引かれ廊下の端まで連れていかれた

ニキ

で、なんだよ

りぃちょ

あのさ

りぃちょ

俺…好きな人出来たかも!

ニキ

へぇ…で?

りぃちょ

え?反応酷くない?

ニキ

割とどうでもいいしな

りぃちょ

どうでもいいとか言わないでよ!

りぃちょ

相手とか気にならんの?

ニキ

気にならんなぁ

りぃちょ

ねぇ、酷くない?

ニキ

わかったよ

ニキ

相手は誰だよ

りぃちょ

バ先の先輩

ニキ

お前のバ先ってカフェだっけ?

りぃちょ

そうそう

りぃちょ

制服かっこよくて決めたとこ

ニキ

で、それがどうした?

りぃちょ

それがさ

りぃちょ

相手男なんだけど…

りぃちょ

どう思う?

ニキ

どう…とは?

りぃちょが頬を赤らめながら、なぜか落ち着かない様子なのが不思議だった

りぃちょ

いや、同性だよ?

りぃちょ

へんじゃない?

ニキ

んーまぁ

ニキ

女食い散らかしてるお前が男ってのは珍しいけど…

ニキ

問題なくね?

実際にボビーに好意を寄せている俺としてはなんの疑問も浮かんではいなかった

りぃちょ

あ…れ?

りぃちょ

戸惑ってる俺がおかしいのか?

ニキ

いや…というか

ニキ

俺も好きなやつ男だしな

ニキ

だからどうした?って感じ

りぃちょ

え?は?

りぃちょ

初耳なんだけど

ニキ

話してないしな

りぃちょ

え?だれ?

りぃちょ

俺の知ってる人?

ニキ

教えると思う?

りぃちょ

思わない…けど

りぃちょ

教えてくれたら協力とか…

ニキ

んーいらんなぁ…

ニキ

告る気もないしなぁ

りぃちょ

え?ないの?

りぃちょ

付き合いたいとかないの?

ニキ

あるけど…

ニキ

そりゃ抱きたいしチューもしたいけれども…

りぃちょ

急に欲望丸出しやな

りぃちょ

うんうんそれで

ニキ

でもさ

ニキ

それで関係崩れるのも

ニキ

しんどくない?

りぃちょ

あーまぁ…

りぃちょ

まぁまぁしんどいなぁ

ニキ

でしょ?

ニキ

だから…多分言わんな

りぃちょ

そっかぁ…

りぃちょ

俺も…

りぃちょ

そう考えると言えないな…

ニキ

やろ?

ニキ

言えんくなるよなぁ

ニキ

上手くいかんかったこと考えると

りぃちょ

あーたしかに…

りぃちょ

仲良く話せなくなるとか

りぃちょ

辛すぎ…

ニキ

だから俺は現状維持

りぃちょ

りぃちょ

お互い辛いね

ニキ

そうね…

いつもの様にニキを捕まえに行って、教室に向かう途中、隣のクラスの白髪のギャル男にニキをかっさらわれてしまった

正直おもんないし、ニキに引っ付くなやとは思うが、それを言い出せずにいた

ふと、連れ去られた方を見ると廊下の端っこで何やら楽しげに話している

りぃちょと呼ばれたその男は、時折顔を赤らめながらモジモジと恥ずかしそうにしていた

ニキもそれを見て楽しそうに笑いながら話している

気になって聞き耳を立てていると

ニキ

『好き……』

りぃちょ

『……付き合いたい』

ニキ

『…………抱きたい』

りぃちょ

『……仲良く……』

しろせんせー

(え?……なんの話……)

しろせんせー

(アイツらそういう関係……)

しろせんせー

(いやまさか……)

しろせんせー

(そんな話聞いたことない…)

途切れ途切れに聞こえてくるのは、恋愛ごとの話のようで、好きだとか付き合いたいだとか……

全部が聞こえてる訳では無いので、正確な情報は得られていないが、胸の奥がキューっと痛むのを感じた

ホントについ最近気づいたことだが、どうやら俺はニキのことを好きになってしまっているらしかった

しろせんせー

(くっそ……)

しろせんせー

(こんなんどうしたらいいんや……)

ニキ

ボビー?どうしたの?

しろせんせー

あ、ニキ

しろせんせー

話はもうええんか?

ニキ

あ、うん…そんなことより

ニキ

体調悪い?

しろせんせー

なんで?

ニキ

顔色悪いよ?

しろせんせー

あーなんでもないから

しろせんせー

気にすんな

ニキ

いや……でも……

何かを言いたげなニキに、俺は背を向けた

今はどんな顔をして向き合えばいいのか分からない

こんなになるなら、好きにならなければ……一瞬過ったその言葉に、緩く頭を振る

しろせんせー

(ちゃうな……)

しろせんせー

(好きになったからこそ)

しろせんせー

(今までより楽しかったしな)

ニキ

ボビー

ニキ

何かあったら言えよ?

背中を向けたままの俺の肩に手を乗せ、優しく声をかけてくれるニキ

勘違いしてしまいそうになるから、やさしくしないで欲しい……

ニキ

よし……帰るか

少しサボりすぎたせいで、追加の課題を渡された俺は、居残りをして終わらせていた

ニキ

さすがにサボりすぎたかぁ……

ニキ

進級ギリ位の単位はいけてるはずなんだけどなぁ

正直、ちゃんと本気でやれば余裕だとは思う

だけど……

ニキ

おっかけてもらえんくなるしなw

ガラガラガラガラ

ニキ

ん?

しろせんせー

ニキ

しろせんせー

終わったか?

ニキ

あ、あぁ

ニキ

なに?w

ニキ

待っててくれたの?

しろせんせー

……ついでや

ニキ

ついで?ww

しろせんせー

……

しろせんせー

待つとかするわけないやろ

ニキ

ふふふw

ニキ

一緒に帰ろっかw

しろせんせー

せやな……

しろせんせー

仕方ないから一緒に帰ったるわ

夕日に照らされてオレンジ色になっているボビーはとても綺麗だった

ニキ

ボビー……

ニキ

キレイだね

しろせんせー

はぁ?

しろせんせー

何言うとるん?w

照れたように笑うボビーは可愛くて、抱きしめたいほど愛おしかった

しろせんせー

冗談言うとらんと帰るで

ニキ

冗談じゃないよ

この時の俺は、昼間に聞いたりぃちょの恋バナが頭をチラついて仕方なくて、おかしくなっていたんだと思う

ニキ

ボビー

ニキ

こっちきて

しろせんせー

なんや?

近くに寄ってきたボビーの腕を掴んで自分の方へ引き寄せた

しろせんせー

ちょっ

しろせんせー

あぶねぇよ

ニキ

だまって……

思い切り抱きしめる俺に、ボビーはほとんど抵抗もなく俺に身を任せていた

ニキ

抵抗しないんだね

しろせんせー

……

ニキ

ねぇ

ニキ

ボビー好きなやついる?

しろせんせー

……なんでや?

ニキ

俺ね……

ニキ

好きで好きで仕方ない人居るんよ

しろせんせー

っ……

俺の腕の中でボビーの身体が強ばるのを感じた

ニキ

ボビー

ニキ

大好きだよ

しろせんせー

え?

ニキ

だから

ニキ

俺の好きなの

ニキ

ボビーだよ

ニキ

……嫌、かな?

しろせんせー

っ……うそや

ニキ

うそってひどいなぁww

しろせんせー

だって……

ニキ

結構前から好きなんよ

ニキ

ボビーが1番なんだ

しろせんせー

っ……ぅぅ

ニキ

え?なんで泣いて……

ニキ

泣くほど嫌?

しろせんせー

ちがっ……

言葉に詰まって涙を流し出したボビーの涙を指で拭った

ニキ

泣かないでよ

しろせんせー

ごめっ……

しろせんせー

おれっ……も

ニキ

ん?

しろせんせー

俺もニキ好きや

ニキ

え?

しろせんせー

俺もニキが1番なんや

ニキ

うそっ

しろせんせー

嘘やないって

ニキ

えっ

ニキ

てことは両想い?

しろせんせー

そうみたいやな

俺とボビーはしばらく顔を見合せて笑った

ニキ

ねぇ……

ニキ

キス、していい?

しろせんせー

……

しろせんせー

聞くなや……

ニキ

ふふふ

ニキ

顔真っ赤……可愛い

しろせんせー

可愛いいうな……

チュッ

ニキ

ふふふ

ニキ

恥ずかしいねこれw

しろせんせー

せやなww

至近距離で見つめあって笑った俺たちは、どちらからとも無く唇を合わせた

しろせんせー

……

しろせんせー

帰るか

ニキ

そうだねw

ニキ

ボビー……

ニキ

これからもよろしく

しろせんせー

せやな

しろせんせー

ほら……

ニキ

ん?

しろせんせー

手、繋いで帰ろうや

ニキ

ふふふ

ニキ

帰ろっか

俺らは二人、手を繋いで教室を出た

夕日に照らされて地面に縫い付けられた影が、寄り添うように歩くのが嬉しかった

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315

コメント

13

ユーザー

きゅんです…🫰

ユーザー

うわぁぁ良すぎ!いつもコメントできなかったけど今言う!いつも神作品ありがとうございます!尊い小説のお陰でいろいろ勉強とか頑張れてます!!

ユーザー

莉衣那さんの作品大好きです、、! 今回も最高ですありがとうございます🥹

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