石畳と石レンガの通路を進んでいくと、とても広い空間に出た。
左右のはしが見えないくらいに広がっていて、天井もものすごく高い。
ただし、広い空間のど真ん中に大きな建物が鎮座していて、歩けるスペースはとても狭かった。
ユウゴ
ぼくは自信なくみんなに聞いた。
自分達は通路を歩いてきたのだから、建物の中にいるはずだ。
そこにさらに建物があるというのは、奇妙な感覚だった。
ユトリ
ユトリが言ったように、この建物には入口や窓が一切なく、全面コンクリートで囲まれている。
これも建物とは認識しづらい理由の1つだった。
ガイド妖精
ガイド妖精が発した光を建物らしき物の壁に当て、文章を表示する。
【アンノウン・ビルディング】 ・建物に入って出る。 ・入るのは自由。 ・出るためには条件がある。 【A】目を閉じて入る。 【B】目を開けて入る。
今度の問題は、今までとは比べ物にならないくらいに、わけがわからなかった。
建物というのは、目の前にある大きなコンクリートの塊のことだろう。
ここに入って出るのが、次の競技ということなのだろうが、2択の意味がよくわからない。
目を閉じていても、目を開けていても、入る場所は変わらないはずだ。
そもそも、どっちのほうが難易度が高いのかもわからない。
目を閉じていたほうが、前が見えない分怖いかなと思う程度。
これまでの競技3つは、どれも難易度の違いはわかりやすかった。
それと同時に、難易度の差はそれほどなく、どの競技のどの難易度も頑張ればクリアできるくらいに設定されていた。
それなら、どっちを選んでも変わらないんじゃないか?
今のぼくのポイントは6。
第4ブロックでクリアできれば4ポイントもらえるから、足せば10でブロンズクラスに昇格できる。
ここは少数派になりそうな方を選んだほうがいいか。
ぼくはAを選んだ。
ガイド妖精
ユウゴ
ユトリ
今回のリバ戦では初参戦のユトリは、ガチガチで噛み噛みに噛みたおしている。
メイカ
ホマレ
ユトリ
これは、ぼくがしっかりしていないとな。
ユウゴ
ショウリ
メイカとホマレも声をそろえて『うん』と答えた。
この3人の考え方は、いつもシンプルだ。
そこそこ成績もいいから、考えすぎないのも大切なのかもしれないな。
ガイド妖精
ガイド妖精に呼ばれて、ぼくとユトリが一歩前に出る。
ガイド妖精
ガイド妖精
この場に残るショウリ達に釘を差した後に、ガイド妖精がぼく達に話しかけてきた。
ガイド妖精
ガイド妖精
ユウゴ
ユトリ
ガイド妖精に言われるままに、目を閉じる。
当たり前だけど何も見えない。
ガイド妖精
目を閉じたままで歩くのは、足元や前方の状況がわからないので、かなり怖い。
いつもより狭い歩幅で、いつもよりゆっくりと歩く。
このまま進むと、入口も窓もない建物にぶつかってしまうんじゃ。
そう思うと、さらに歩幅が小さくなる。
ガイド妖精
ガイド妖精からの無慈悲な指示。
おびえながら前に進んでいくと、足先に湿地帯の泥を踏んだような感触がかえってきた。
その感触は足だけでなく、手や肩、胸などにも広がっていく。
この全身が泥の中に引き込まれるような感覚には、覚えがあった。
入学試験で壁をすり抜ける隠し通路を通った時に近い。
ぼくの体は今、入口も窓もない建物の壁をすり抜けて、中に入り込んでいっているんだ。
10歩ほど進んでいくと、全身にまとわりついていた、泥に引き込まれるような感覚が消え去った。
壁の隠し通路を通り抜けたんだ。
ガイド妖精
ガイド妖精に言われて、目を開ける。
目の前にはガイド妖精、となりにはユトリもちゃんといる。
でも、それ以外が何もなかった。
足元は灰色の砂が広がっていて、周囲をぐるりと見回しても、コンクリートのような灰色の壁に囲まれていた。
ユウゴ
ガイド妖精
ガイド妖精が、今回の競技のルールを復唱する。
【アンノウン・ビルディング】 ・建物に入って出る。 ・入るのは自由。 ・出るためには条件がある。
建物に入るまでは終わった。
ぼく達がやるべきは、出るための条件を探すことか。
ガイド妖精
ガイド妖精
そう言うと、ガイド妖精は高く飛んでいき、見えなくなってしまった。
ユウゴ
ユウゴ
とりあえず、ユトリに聞いてみた。
ユトリ
ユトリ
ユトリから意外な答えが返ってきた。
始める前の緊張ガチガチな姿からは別人だ。
ユトリ
ユウゴ
おどろいたけど、思い返してみればアミ戦には脳トレのクイズのような問題もいくつかあった。
そういう類の問題だったのだろう。
ユトリ
その建物に入る時、人は目を閉じている。 その建物から出る時、人の目は開いている。
ユトリ
ユウゴ
ユトリ
ユトリ
ユウゴ
ユトリ
このユトリの推理が正解なら、今通ってきた壁の隠し通路を、もう一度通って外に出ればいいってことだ。
ぼく達は回れ右すると、壁に向かって歩き出した。
ゴチン×2。
壁に頭をぶつけた。
ユウゴ
ユトリ
目を閉じていたから真っ直ぐ歩いてきたんじゃなかったのかと思い、壁を撫でたり叩いたりして隠し通路を探したけど、手がすり抜ける気配は一切ない。
ユトリ
ユトリ
ユウゴ
この手の問題はトライアル・アンド・エラーで、不正解をひとつひとつ潰していって、正解を導き出すしか無い。
その取っかかりを示してくれただけでも、ユトリが一緒で良かったと思う。
ユウゴ
ユトリ
ユウゴ
ユウゴ
ユトリ
ユウゴ
ユトリ
ユウゴ
ユトリ
ユウゴ
ユトリ
ユウゴ
ユウゴ
ユトリ
ぼくの言わんとしたことが伝わったようで、ユトリが顔を真赤にして声を上げた。
ユトリ
ユトリ
ユトリ
ユトリ
ユトリ
ネガティブモードのユトリをなだめながら、問題の答えを聞き出した。
ユトリ
ユウゴ
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