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その日の夜 2人はまた海に来ていた。

グルッペンが夜の海を見たいと言ったからだ。

トントン

(今しかチャンスは無い。
ここでやらないと、俺は一生やれない…。)

トントンは悶々としながらグルッペンについて行った。

グルッペン

おぉ、落ち着いてるな。

グルッペン

天気もいいから星も月もよく見えるゾ。

トントン

ほんまや。
キラキラしとるな。

辺りには誰もいない。 ほかの生き物も息を潜めている。 この浜辺で動いているのは2人だけだった。

グルッペン

ほら何してる。
早く来いよ。

トントン

あぁ。

トントンはポケットに入れているナイフをぎゅっと握りしめた。

空を見上げているグルッペンのところまで歩いていき、首根っこを掴んで倒した。

その上に乗り、首元にナイフを振り下ろそうとした。

トントン

…すまん。

その時トントンの目はグルッペンの目をとらえた。

恐怖も憎悪も驚愕もない。 ただ信頼の色がその目に浮かんでいた。

それを理解した途端、トントンの手は止まった。 振りかざしたまま下ろさない手に持ったナイフが月に反射している。

グルッペン

…どうした?
やらないのか?

トントン

…できない……。
俺には…っ!

ついにナイフを砂の上に落とし、脱力した。

グルッペン

…なんでやらなかったんだ?
今が格好のチャンスだろう?

トントン

無理や、俺にはあんたを殺す度胸も覚悟もない…。

トントン

あんたのその目を見たら俺は何も出来なくなる!
なんでそんなに俺の事を信じてるような目で見るんや!

トントンは泣きわめいた。 今までの全てが悲しくなって、吐き出さずにはいられなかった。

トントン

父さんはおかしくなった!
今までだって父さんは頭が固くて頑固で、俺は苦手だった…。
だけど今はもうあの頃の父さんに会いたい…!

トントン

どうしようもなくて、従うしか無かった!

トントン

俺はそれであんたを殺そうとした…。

トントン

俺、俺はこんなにも無力や…。

そこまで一息で言うと、トントンは黙り込んでじっとした。

グルッペン

…辛かったな。

グルッペン

俺もなんとかしてやりたかったが、お前になら何されてもいいと思ってた。

グルッペン

それでお前が救われるなら、それで…。

トントン

え、じゃあ…
俺があんたを殺そうとしてたこと知ってたんか?

グルッペン

知ってたというか、予想していた。
最近のお前の様子と、お前の父親が接触していた奴を調べたからな。

グルッペン

…お前が持ってた荷物は重すぎた。
色んなもの持たされたんだろうと思って、お前がいない間に中を見た。

グルッペン

案の定、たくさんの武器と…

グルッペン

1枚の紙切れが入ってた。

トントン

あ……

グルッペンはポケットからその紙を出した。 中身を広げる。

グルッペン

これはお前の最後の手紙だな。
俺を殺したあと、お前も一緒に行くつもりだったんだろう。

トントン

……。

グルッペン

これは予想外だった。
何としても止めないといけない、だけどお前を苦しめたくもない。

グルッペン

お前は抵抗されればされるほど成し遂げようとする。
だからこうやって受け身になってみた。

グルッペン

…やめてくれてありがとう。
お前には生きていて欲しい。

トントン

…なんでそこまでして……。
俺はもう家には帰れん。
あんただって俺には会えなくなるだろ。

グルッペン

いや、そんなことないゾ。
うちの父親はお前のことを心配していた。
お前の父親のことは何とかしてくれるだろう。

グルッペン

だから、もし良かったらだが、うちに来ないか?

トントン

え、?

グルッペン

お前を歓迎するし、その方が安全だろう?

トントン

う…うわぁぁぁ泣

グルッペン

お、おい、やめろ!
鼻水つけるな!

トントン

ごめん、ごめん!!
俺が、バカだった…っ!

グルッペン

お前は馬鹿じゃない。
俺が言ってんだからこれはお世辞なんかじゃない。

トントン

ウン…

グルッペン

でも、自分で命を絶とうとする奴ほど馬鹿なヤツはいない。
まだ人生はこれからだ。
お前は俺と一緒に大きいことを成し遂げる。

トントン

あんたと一緒に…?

グルッペン

あぁ、俺がいれば百人力だろうが?

自信満々にそう言ってドヤ顔をしてくるグルッペンを見ると、何故か心が落ち着いてきた。

トントン

ふっ、確かにそうかもしれんな。

全てどうでも良くなって、トントンも地面にころがった。

トントン

…俺家を出る。
あんなところにいたら、俺が俺じゃなくなる。
ていうかなっとった。

トントン

…助けてくれ、グルッペン。
俺をあの家から救ってくれ。
俺が俺であるために。

グルッペン

もちろんだ。

帰りに新幹線にて

トントンは今までが嘘のようにぐっすり眠っており、起きる気配がない。

持ってきていた武器は全て捨て、身軽になったトントンの顔は憑き物が取れたように晴れやかだった。

グルッペン

(まったく、まだ中学生だと言うのにあんな大人びた顔して…。
俺も人のこと言えんが、まだ子供なんだから子供らしくあって欲しいな。)

グルッペン

(そういえば、父さんは動いてくれてるんだろうか。)

あの夜、宿に帰ったあとにグルッペンの父親に全てを話して対処してもらっていたのである。

グルッペン

…もしもし父さん?

グル父

なんだ?

グルッペン

その後どうなったんだ?

グル父

無事洗脳奴は逮捕、トントンくんの父親は病院に送られたよ。
少し精神的に参っていたからね。
治った後にちゃんと罰は受けるみたいだよ。

グル父

トントンくんは心配しないでいい。
うちに来る手続きは済んでるし、私物も移動済みだ。

グルッペン

ありがとう。

グル父

トントンくんは大丈夫か?

グルッペン

あぁ、俺の隣でぐっすりだ。

グル父

そうか。
彼にはこれまでもだが、これからも辛い思いをさせてしまうな。

グルッペン

できるだけそうならないように俺が何とかする。

グル父

さすが俺の息子。
じゃあ気をつけて帰るんだぞ。

グルッペン

ありがとう。

電話を切ったあともトントンは寝息を立てている。 グルッペンは暗くなった窓の外を眺めて、今後のプランを練り直した。

作者

どうも、作者です

作者

この一週間めちゃ忙しかったです……疲れた…

作者

でもちょこちょここれを書くのがいい息抜きになってました!

作者

皆さんからのコメントやいいねも励みになって、それ見てると元気になります!

作者

いつも本当にありがとうございます!

作者

それではまた次回お会いしましょう!

それいけ!我々軍

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コメント

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ユーザー

毎回毎回すてきなお話ありがとうございます!!!!!

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