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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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おばちゃん

おや、エミくん
今日もお出かけかい?

エーミール

はい!

肩掛けカバンを持ち街を歩いていると 自分が物心つく前からお世話してくれている お隣さんが話しかけてきた

おばちゃん

子供は外で遊んでなんぼだからね

エーミール

それもそうですね

おばちゃん

あぁ、ごめんね引き止めちゃって
気をつけて行ってらっしゃい

エーミール

はい、行ってきます!

お隣さんと別れて走り出した 10才の自分はこの街では珍しいらしく 同い年は大きな屋敷にすむ彼だけだ

エーミール

はぁ…はぁ…!

町外れの丘の上にポツリと生えている カエデの木の元に走ると いつもどうり、金色の髪と宝石のような瞳を 揺らす彼が本をめくっている

エーミール

グルッペン…!

グルッペン

ん?あぁ、エーミールか

エーミール

おはよう、グルッペン

この街で唯一の同い年はこの街の当主の息子 であり親のせいで迫害される存在で いつも1人でここに訪れては読書をしている

エーミール

今日は何を呼んでるん?

グルッペン

…政治の本

エーミール

今日、私は図鑑を持ってきたんや!

グルッペン

…お前って一人称私なのに
敬語じゃないの変やな

エーミール

いや、ずっと敬語は疲れるやん?
やからグルッペンの前だけは
素でおるんやで、あかんか?

グルッペン

ふ〜ん、まぁ好きにしたら
ええんちゃう?気にせんし

エーミール

そういえば気になったんやけど
なんで家で本読まんの?

エーミール

家のほうが沢山本あるやろ?

グルッペン

まぁ、せやけど
息苦しくて集中できん

エーミール

それはアカンな

グルッペン

だろ?大きすぎる欠点や

2人ならんで毎日本を読むのが日課だ グルッペンの隣では、綺麗で優しくて賢い エーミールを演じなくて良いからか とても心地よく落ち着く

グルッペン

エーミール

エーミール

ん〜?

あれから数時間後、静かに読書していると ふとグルッペンに話しかけられ 文章を読みながら返すと同じようにしていた あいつから本を閉じる音がする

グルッペン

お前は何のために本を読む?

エーミール

…本が好きだから?

エーミール

本には沢山の情報があって
いくら見ても飽きないねんな!

グルッペン

そうか…

エーミール

急にどしたん?

グルッペン

いや、お前に渡したいものがある

エーミール

自分に?なんやろ…

グルッペン

これ…お前欲しい言っとったやろ?

渡された袋の中には、 まだ何も書かれていない真っ白な本に 綺麗な万年筆とインクだった 驚きが隠せず目を見開きグルッペンを見ると 年相応の無邪気な笑顔を見せた

グルッペン

どうや?

エーミール

ありがとう!今まで貰った
プレゼントの中で1番嬉しいわ!

グルッペン

大げさやなぁw

エーミール

ほんまに嬉しいわぁ!
こんな優しいのになんで街の皆は
お前のこと嫌うんやろうな?

グルッペン

俺が産まれた場所が悪かっただけやw
別に気にしとらんよw

エーミール

それならええわ!せや!

さっそく中身を取り出し 万年筆にインクを入れ、本を広げる スーと滑らかに流れるペン先に感動した

エーミール

書けたで!

グルッペン

ん?俺の名前とお前の名前?

エーミール

大人になっても忘れんようにや!

グルッペン

…そうか、ちょっとペン貸して

エーミール

ええよ?

万年筆を渡すと何かを書き込む さっき嬉しそうに笑った顔は初めて見た 気にしてないなんて嘘なんだろうな…

グルッペン

ん、できた

エーミール

「総統になったら迎えに行く」
どういうこと?

グルッペン

俺は将来、自分で国を創り上げる
その時俺は行き詰まると思うんだ
そしたらお前のその終わりのない探究心と
深い知識を貸してくれ!

エーミール

…俺なんかでええの?
もっと、良い人居るんちゃうん?

グルッペン

俺は人を見る目があるんだ!
その時はこの約束果たしてや?

エーミール

お前が言うと本当にしそうやなぁw
ええよ、お前のために俺の全部で
最後まで隣で助けたるわw

グルッペン

約束忘れてたら意味ないけどなw

エーミール

俺は忘れへんよ、この本大切にするし
お前こそ忘れたら許さんからな?

グルッペン

こわっwじゃあ証明としてこれやるわ

着けていたループタイを渡される こんな高級そうな物あげれるなんて流石やな…

グルッペン

その紫色の宝石な
夜は透明になんねん

エーミール

へぇ…

グルッペン

そのループタイは俺の大切なもんやから
お前が着けてたらすぐに分かるわ

エーミール

俺貰ってばっかりやん…
なんかお返ししたい…

グルッペン

大人になってから沢山働いて貰うから
今のうちに媚びうっとかなやろ?

エーミール

どんだけ働かせる気やねん…

グルッペン

さぁ?

エーミール

さっそく雲行き怪しいぞ?w

グルッペン

やばいやばいw

グルッペン

エーミール、もうすぐお昼や

エーミール

ほんとや、帰らな…

急いで荷物をまとめ立ち上がると 真上に太陽が居ることを示すように影が溜まる

エーミール

ありがとうなグルッペン

グルッペン

おう、約束忘れんなよ?

エーミール

分かっとるわw

エーミール

じゃあまた明日

グルッペン

おう、またなエーミール

手を振り走って丘を駆け下りる下から 見ると姿は見えずカエデの木が揺れていた こんなワクワクする約束はあっただろうか 高鳴る鼓動を抑えながら走って家に急いだ

グルッペン

、、、

街へ走っていったエーミールの姿を見送り 再びカエデの木の下に腰を降ろす

グルッペン

約束…な…

子供同士の口約束なんて果たされない だが俺はあいつに賭けてみたくなった 頭に浮かぶ、滑らかな肌に丁寧な所作、綺麗な茶 それからは想像できない口の悪さと訛った口調 あんなに面白い人間が居るんだな…

グルッペン

はぁ…帰らないとな…

グルッペン

めんど…

持ってきていた本を抱え 丘をゆっくりと降りる遠目から見ても分かる 無駄に着飾った屋敷にそれを取り囲む鉄柵 あいつが降りる方とは真逆に存在する 忌々しい家の中へ入っていく

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