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レミ
レミ
クロト
我ながら、呆れる程語彙力がなくなっている。
……でも仕方が無いよね!
こちらの世界に来てから、初めてのお米だもの。
興奮して然るべし、白米強しってことで。
レミ
手を合わせてから、お米を口の中へ掻き込む。
そういえば、この世界では食事前後に手を合わせる文化はないらしい。
信仰によっては食前に祈りを捧げたりすることもあるそうだ。
クロト達は無神論者? それとも神はいると思うけど信じていないタイプだろうか。
また今度訊いてみよう。そう思いながら、再度お米を口一杯に頬張る。
ここのお米は、日本のものと言うよりはタイ米に近かった。
まぁ、お米はお米だし、美味しいし、特に気にしないのだけれど。
そうやって黙々と食べていると、周りの三人が呆気に取られたようにこちらを見ていた。
何事?
クロト
クロト
クロト
クロト、君は私のお母さんですか?
心配させないように親指を立ててみせる。
レミ
あ、ちょっとまずいかも。く、るしい……!
ユリ
レミ
ユリちゃんから水を貰い、ゴクゴクと飲み干す。
ありがとうユリちゃん。君は私の命の恩人だ……。
そんな私の様子を呆れたように眺めていたクロトは、ふと思い出したようにこう言った。
クロト
クロト
クロト
レミ
すぐ活動できるように……?
少し疑問に思ったが、卒業式を終えたばかりの私に無茶なことはさせないだろう。
お米に興奮しすぎて、クロトを信用してしまった私。
そんな能天気な私は、数時間後、しっかりと後悔することになったのだった。
ユリ
ユリ
レミ
私は夜中、ユリちゃんに起こされた
一応クロトの言いつけ通り、ラフなシャツとジーンズ、ポニーテールという恰好で、すぐに活動できるようにはしている。
ユリ
レミ
寝起きで霞む視界を晴らすため眼を擦る。
それにしても、こんな夜中に何の用だろう……?
と言うか、ユリちゃんなんで起きてるの? 良い子は寝る時間だよ?
もしかしたら悪い子かもしれないユリちゃんに連れられ、私は部屋を出た。
レミ
レミ
クロト
レミ
迷惑そうに髪を掻き上げるクロト。
顔が整っている方はそれだけで画になりますね!
やってること最低だけど‼︎
クロトは聞き分けのない子供に諭すような口調で、ゆっくりと説明した。
説明っていうか、私の意を一つも汲んでない決定事項なんですけど。
クロト
クロト
クロト
えー、私は今、飛行船の縁にいた。
縁というかここ空中。クロトに首根っこを掴まれているのだ。
……何で? 眠気一気に吹き飛んだよ?
レミ
クロト
クロトの辞書に休憩という言葉を今すぐに載せて下さい。
嘘でしょ……?
クロト
クロト
クロト
そんなこと言われましても……。
クロトさんよ、いくら何でも急すぎやしませんか⁉︎
内心では騒ぎつつ、空中で暴れることもできずに黙っている私を見て、どう受け取ったのか、彼は。
クロト
レミ
悪夢のようなカウントダウンを始めた。
クロト
レミ
クロト
レミ
クロト
レミ
クロト
レミ
クロトがゼロと行った瞬間に、落とされた。
おい、お前、クロト! 私の「待って」という声が聞こえなかったの⁉︎
レミ
可愛くない悲鳴を上げながら私は急降下。風が私の頬をびゅうびゅうと掠めて行く。人体の自由落下運動は怖い‼︎
遠くでユリちゃんとラン君が、手を合わせ合唱している様が目に入った。
ふ、二人とも薄情な!
私は滑空、というか落ちていきながら、水場を探す。
ミティフス学園で学んだことが役に立つのは嬉しいけど、この知識は役に立たないまま、人生終わって欲しかったな……。
レミ
私有地なのかプールがあった。
普通に考えれば不法侵入……不法落下? だけど、今回ばかりは許していただこう。
着陸準備をしながら、私は自由落下の恐怖と闘った。
────気泡。冷水。水面。
ドボンという音が後から聞こえてきた。
レミ
鼻に水が少し入ったけれど、着水には成功したみたい。
生きててよかった〜。
ほうっとプールの中で息を吐く。
……そこで、私は周りが妙に明るいことに気がついた。
あ、あれ……?
もしかして、周りに人、いたりします?
そっと辺りを見渡す。
そこには見知らぬ人が沢山いた。
……い、言い訳させてもらっていいですか?
それか、今すぐにでも立ち去るんで‼︎
女の子
見るからに怪しい私を見て、一人の女の子が笑い始めた。
周りの人々は、何も言わない。
だけどこっそり、この女の子の出方を探っているのが分かる。
ここで一番の権力者、なのだろうか。良家のお嬢様とか?
打首とか言われたらどうしよう、そう警戒する私に少女は小首を傾げて、私の予想を斜めはるか上に通り越す提案をした。
女の子
レミ
その黒髪の女の子は、にっこりと微笑んでプールの中で戸惑っている私に手を伸ばす。
女の子
少女の悪戯を仕掛けるときのような瞳の輝きは、心なしか、誰かに似ていた。