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ウェヌス先生
ウェヌス先生に連れられて、学校から少し離れた自然公園までやって来た。
魔法訓練授業は、学校の外でやることが多いみたいだ。
ウェヌス先生
ウェヌス先生
と、ウェヌス先生が説明してくれた。
ウェヌス先生
ユウゴ
今まで暴走したことしか無いから、危険性は自分でも自覚しているつもりだ。
自然公園は、とても広かった。
色んな種類の木々が植えられていて、生い茂る葉で緑のグラデーションが出来ている。
日に照らされた背の高い芝の絨毯からも、青い香りがただよってきた。
その芝生の中央に、風《アエル》の生徒達が集まっていた。
中にはアルクとショウリもいる。
アルク
アルク
ユウゴ
アルクもウェヌス先生をエロスって呼んでるし。
ショウリ
ショウリに声をかけられると、周りの生徒達がぼくの方をチラっと見た。
ぼくが振り返ると、すぐに視線をそらされた。
ここでも闇《ケイオス》のぼくは警戒されているみたいだ。
ショウリが顔を寄せて、小声で耳打ちする。
ショウリ
ユウゴ
健康診断の時に闇《ケイオス》の魔力の暴走で壁を壊してしまった事故があったけど、本気でのぞきのつもりで穴をあけたと思われているみたいだ。
アルク
アルク
ユウゴ
うわさの出どころ、アルクじゃん。
ガイド妖精
ガイド妖精が飛んで来て、今日の基礎訓練の説明をはじめた。
ガイド妖精
ガイド妖精
アルク
アルクがドヤ顔自信満々に言う。
あえて何も言うまい。
ショウリ
後ろに立っていたショウリが小さくつぶやく。
ガイド妖精
ゴゴゴと音を立てて芝生の一部がせり上がってきて、円形のステージが出来上がった。
ガイド妖精
ガイド妖精
さらにガイド妖精が光の球を出して、円形ステージの周りに3つの棚を出現させた。
それらの棚には、剣や杖などの武器系のアイテムが多数、本や食器、食品サンプル、ぬいぐるみなどの日用品が多数、いろんな職業系の制服やマントなどのコスプレ衣装がかけられたハンガーラックまでがある。
こんな物を使って、空気を読むって、どんな訓練をするんだろう。
ガイド妖精からあらためて、これから行う競技が発表された。
【カッコいいポーズコンテスト】 ・ひとりずつ円形ステージに立って、お題にあったポーズをする。 ・制限時間は、お題が出てから3分以内。 ・魔法、道具の使用は自由。 ・当人達に合意があれば、2人以上のグループでも可。 ・採点はステージ上の生徒以外の全員で行い、ランダムに選ばれた3人の合計点で決まる。 ・点数の上位10名に、2ポイント。
モノボケだ。
これはまごうことなきモノボケだ。
お笑い番組でよく見る、道具を使って即興ギャグをするやつだ。
こんなことで本当に魔法の訓練になるんだろうか。
アルク
アルクに軽く肩を叩かれた。
アルク
もう、はじまってるんだ。
ガイド妖精
ガイド妖精
各自、自分の学習用タブレットで採点アプリを起動したところで、風《アエル》の基礎訓練がはじまった。
ガイド妖精
ショウリ
ショウリが呼ばれて円形ステージに上がる。
すると、女子の一部から『キャーッ』と黄色い声援が上がった。
ショウリはシュッとしている爽やかイケメンだから、女子人気は結構高い。
普段はメイカが目を光らせていて近づきがたいけど、今日はメイカがいないので、いつもよりファンの女の子も積極的に応援している。
ガイド妖精
イケメンに相応しいお題に、女子の声援がさらに大きくなる。
ショウリはハンガーラックからマントをとって羽織り、棚から長剣を持って構える。
長剣の刃が太陽の光に照らされて輝き、一枚の絵のようだ。
ショウリ
さらにダメ押しで、魔法で風を起こしてマントをはためかせた。
まるで強敵に立ち向かうかのようなポーズが出来上がった。
女子グループからの『キャーキャー』の声援も最高潮になったところで採点タイム。
女子は全員5だろう。
ぼくも文句無しで5のボタンを押した。
ガイド妖精
満点だと思ったから、意外な結果が出た。
女子グループからも『なんでー』と不満の声が上がった。
アルク
アルクは納得したようにつぶやいた。
採点は全員で行うけど、採用されるのはランダムで選ばれた3人の合計点。
この結果は、ショウリの女子人気をよく思わない男子の誰かが、嫌がらせで1を押したのが選ばれたということか。
ユウゴ
アルク
空気を読むという言葉には、その場の雰囲気に合わせるという意味の他にも、人に嫌われたり不快感を与えないようにするとか、何も言われずとも気持ちを察するとか、複雑な意味をいくつも内包している。
このカッコいいポースコンテストは、ただカッコいいポーズをするだけでなく、より多くの人に評価されるポーズを考えなければいけないということなのか。
そういう意味では、女子へのアピールが全面に出ていたショウリは、あまり良くなかったかもしれない。
ガイド妖精
何人かの番がまわって、ついにぼくの名前が呼ばれた。
現在の最高得点は13点で、まだ満点は出ていない。
最低点は8点だから、平均3点くらいは入っているようだ。
できるだけ、やりやすいお題が出ますように。
ガイド妖精
ユウゴ
メイドってメイド喫茶とかのメイドさんでしょ? 女装しろってこと?
ハンガーラックに目を向けると、メイドさんや看護師さんの制服なども並んでいる。
アルク
アルクの声でカウンター時計を見ると、残りは2分10秒。
いつの間にか、1分が経過しようとしていた。
3分というのは、何かをするには意外なほどに短い。
とにかく、ハンガーラックからメイド服をとる。
コスプレ用の衣装なので、頭からかぶるだけで簡単に着ることが出来た。
だけど大人サイズみたいで、スカート丈がかなり余って地面に擦れている。
女の子が腰のベルトを使ってスカート丈を詰めるって聞いたことがあるけど、やり方がわからない。
スカートはそのままに、あとは何かメイドらしい小道具がないか、となりの棚に探しに行く。
すぐに目についたのはティーセット。
陶器製のティーポットとソーサー付きのティーカップが並んでおいてある。
これを持てば、かなりメイドさんらしくなりそうだ。
残り時間は30秒。
ついでにロングヘアのウィッグを足して女子らしさをアップしてから、みんなの前に走っていった。
ユウゴ
地面をこするほどに長いスカートの裾を踏んで、すっ転んでしまった。
手に持っていた陶器製のティーセットもガシャガシャガシャンと全部粉々に砕けてしまった。
ポーズを決めるどころか、まともに立つことすら出来なかった。
これじゃあ、採点は絶望的だ。
ガイド妖精
ユウゴ
ガイド妖精の音声に耳を疑った。
13点て、今の最高得点だよ?
アルク
親指を立てたアルクの笑顔にむかえられた。
ショウリ
ショウリもとなりで笑っている。
ユウゴ
どうやらポージングやコスプレの完成度じゃなく、キャラの面白さに点数がついたみたいだった。
ちなみにアルクは5点、ショウリは3点をつけたと言っていた。
次の人の順番があるから、はやく落としたティーセットを片付けないと。
と思ってしゃがみ込んだところで、
ウェヌス先生
とウェヌス先生に止められた。
ウェヌス先生
小道具にあった手ぬぐいで長い髪をまとめると、デッキブラシとチリトリでささっとティーセットの破片を集めていく。
最後に残った細かい破片も、粘着クリーナーでコロコロととって、あっという間に円形ステージが片付いた。
ガイド妖精
なぜかガイド妖精から採点の音声が流れた。
ウェヌス先生
ユウゴ
次の人の順番が来たので、ぼく達は円形ステージから降りた。
ガイド妖精
アルク
終盤に近づいて、アルクが呼ばれた。
現在の最高得点は13点でかわらない。
このままなら、ぼくは高得点で2ポイントもらえるかもしれない。
不本意だけど。
ガイド妖精
今更だけど、ただのコスプレ大会になってる。
出番が終わった人達も、そのままの格好で円形ステージを降りて採点をしているから、まるでハロウィンパーティーの会場みたいだ。
アルク
ひらひらキラキラのアイドル衣装を着たアルクが、ドーンという大音響とともに登場した。
小道具のステレオコンポでアイドルの楽曲をBGMに流しながら、即興のダンスパフォーマンスを始める。
風の魔法で紙吹雪を巻き上げて、ステージ演出も忘れない。
いつも自信満々のアルクだけに、堂に入っている
アルク
くるっとターンをして、こっちを向いて可愛く決めポーズ。
さらに魔法で風を起こして、紙吹雪を舞い上がらせる演出をプラスする。
ビュオオウ! と円形ステージの上に一陣の風が吹いた。
演出に力が入りすぎたのか、強い風が紙吹雪だけでなく、アルクにも容赦なく吹き付ける。
髪の毛や、ひらひらの衣装、スカートまでが大きくひるがえった。
アルク
アルクが慌ててスカートをおさえたところで、採点がはじまった。
ガイド妖精
なんと今までで最低の得点になった。
ランダムで選ばれた3人の合計点だから、ほとんどが2点か1点の計算だ。
くやしそうな顔のアルクが円形ステージから降りてきた。
その姿を一部の女子が、
???
???
などと言いながらチラチラと見ている。
最後のハプニングを点数稼ぎのためにわざとやったと思って、あえて1点を押したみたいだ。
ちなみに、ぼくは3点を押した。
ダンスパフォーマンスやポーズは良かったと思うけど、高得点に入れると、最後に見れたのが良かったみたくなっちゃう気がしたから。
他の男子も、だいたい同じような点数を押したんじゃないかな。
戻ってきたアルクが、小さくつぶやく。
アルク
今のは聞こえなかったことにしよう。
ショウリ
ショウリがぼくに耳打ちした。
その後も残った人達が円形ステージでパフォーマンスをし、コスプレ大会、もとい、カッコいいポーズコンテストは終了した。
ガイド妖精
ガイド妖精から光が出て、空中にグラフが表示された。
最高得点は13点で、全部で11人いる。
その下に12点、11点、10点とつづき、最下位は5点にひとりだけ。
アルク
ユウゴ
ショウリ
ガイド妖精
ガイド妖精
ガイド妖精に呼ばれて、13点をもらった11人が前に出る。
その中に、ぼくとショウリもいる。
ガイド妖精
最初にぼくの名前が呼ばれた。
ぼくだけ闇《ケイオス》で参加している外様だから、別枠で計算してくれるのだろうか。
ガイド妖精
ユウゴ
それを言うためだけに前に並ばされたの?
ぼく以外の13点になったショウリ達10人は、2ポイントを獲得した。
落ち込んでいると、アルクと目があった。
アルク
今日1番の満面の笑みを見せた。