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コメント
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通知が久しぶりに活躍したので褒めようと思う(??) リアルで最初ずっと可愛い×∞しか言ってなかったけど最後は2人の風景を想像しながら黙って読んでた(俺偉い(?) 桜は蘇枋が泣いた後もずっと一緒に居てくれると思うよ。そういう子だから
あぁ、俺は一生、この光景を忘れない。 キラキラ淡く光る大きな夕日に 照らされた観覧車の室内。 頬がほんの少し赤く染る君の目元を優しく拭った。
蘇枋
学校の無い休日。 わざわざ電車に乗りしばらく揺られたどり着いた場所は、 とある場所の入口前。 普段の制服姿とは違い、 ラフな私服できた場所は、 人々が嬉々として、その入口に吸い込まれて行く。 その顔は笑顔に溢れていて、 自分の隣に居る彼も、 例外ではない。
普段なかなか見れないワクワクした様な笑顔に、思わず自分の口元が緩んでしまうのがわかった。 俺も熟、彼には甘い。
俺の視線に気づいたのか、 桜君は頬を赤く染め、恥ずかしそうに俯いた。 この場所でくらい、はしゃいだって誰も怒りはしないのに。
蘇枋
小さな子供の手を引く様に、 俺達2人は、 遊園地のゲートをくぐった。
門を潜った途端に、 この場所だけまるで別世界に居る様な景色が広がった。 遊園地のシンボルである巨大な 観覧車に、 猛スピードで走り去るジェットコースター。人々の叫び声が、辺りに響いて木霊している。 その誰もが笑顔で、楽しそうで、 今この一時を楽しんでいた。
俺たちを出迎えてくれたのは、 この遊園地で有名な マスコットキャラクターだ。 可愛らしい動物がモデルになっており、辺の人に手を振っている。
蘇枋
桜
実際には猫がモチーフのマスコットキャラクターなのだが。 子供達に沢山囲まれ、 写真撮影が行われている。 お礼を言い去る家族達に 元気よく手を振り愛嬌を振りまいていた。
蘇枋
桜
揶揄う様に言うと、条件反射で、言葉が帰ってきた。その頬は赤く火照っており、恥ずかしげにしている。 写真撮影は結構ハードらしい。
蘇枋
桜
蘇枋
どかどかと背中を叩かれた。 「痛い痛い、笑」 と言葉をかけても、 手加減してやってるだけマシだと思え。 と返ってきた。 それはそうなのだけれど、 もう少し力を弛めて欲しいものだ。 それに、彼の写真を、残しておきたい。そう思うのは、恋人として普通のことだ。
蘇枋
桜
桜の背後には炎がメラメラと燃える様に見えるほどやる気に満ち溢れていた。 元は彼に楽しんでもらう為に来たのだ。それくらいの勢いではないと。 そうと決まれば前は急げ。 時間が来るその瞬間まで、 楽しみ尽くしてやろう。そう思った。
蘇枋
桜
桜
手を差し出せば、 プチッと目を背けられた。 こんなに人が大勢いる場所では、流石に恥ずかしいのだろう。 それでも蘇枋は諦めずに、 お得意の話術を繰り広げた。
蘇枋
蘇枋
桜君はきゅっと軽く唇を引き結んだ。 相当恥ずかしいのと、 蘇枋の言っている事が正しいと思っているのだろう。
蘇枋
蘇枋
最後の言葉が決め手となったのか、桜は渋々と言った感じで、蘇枋が差し出す手のひらを掴んだ。 よく出来ました。と、愛猫にでも言うように、周防はニッコリと笑って見せた。
蘇枋
桜
蘇枋
桜君と手を繋ぎ、園内を回る。 彼の体温は、暖かくて、 自分の手が、また 冷たく氷の様になってしまわぬ様、 手放したく無くなってしまった。 目をキラキラと輝かせる彼は、 パンフレットを片手にどこから回ろうかと頭を悩ませている。
わすれぬ様に、 いつでも思い出せる様に、 残ったこの片目にその姿を焼き付けた。
蘇枋
桜
早く行きたいとうずうずしている彼に、思わず口元が緩んでしまう。 今の自分の顔を、知っている者に見られてしまえば、相当腑抜けた顔になった。とでも言われるだろうか。
じっとしていられないのか、 桜君は、手を繋いだまま 視線をあちこちに向けている。 自分だけに、そのキラキラとした視線を向けて欲しい。だなんて、 腹の奥底にある独占欲が動き出した。 それを振り払う様に、 顔に笑みを貼り付け 「行こうか。」 と桜の手を引き先頭を歩き出した。 彼の方を少しも振り向かなかった。 だから知らない。 彼が不安そうに俺の右側を見つめていた事に。
蘇枋
蘇枋が座ったベンチで項垂れた その顔はとても疲労が溜まっている様だ。その原因は、すぐ隣で蘇枋に水の入ったペットボトルを刺し渡す 白と黒の両髪を持つ蘇枋の恋人。
桜
桜
蘇枋
初めて乗ったジェットコースターが思いの外楽しかったのか、 もう1回、もう1回と回数を重ね、3回連続で乗ってしまったのだ。 流石の蘇枋も、いつも透かした顔は崩れ、眉を寄せ目を顰めていた。
そんな蘇枋の様子に、ベンチに座って休もうと言い出した桜のおかげで、 今この状況が出来上がっている。
蘇枋
思ったより乾いていたらしい喉が、水を通した瞬間、蘇枋は立ち上がり、 桜に向かって手のひらを差し出した。
桜
蘇枋
ニッコリと笑った蘇枋の笑顔は、貼り付けた物ではない。もう大丈夫そうだ。 そう思った桜は、蘇枋の手を取り、 2人並んで歩き出す。 次はどこへ行こうか。何をしようか、2人1緒に相談して歩き出した。
蘇枋
アトラクションを沢山周り、 疲れきった所で、 ゆったりと上空へと向かう観覧車に乗り込んだ。
辺りはすっかり暗くなり、 夕日が少し青い空に浮かぶ。 彼の瞳と同じ様に。 窓の外を静かに見つめる桜の表情を、蘇枋はじっと、穴が空いてしまうという程に見つめた。
蘇枋
桜
桜
溢れ出す涙が桜の睫毛や頬を濡らす。それに初めて気づいた彼は、驚いた様な顔をして見せた。
蘇枋
自分の服の袖で、 桜の目元を優しくトントンと叩いて見せた。 それでも彼のビー玉の様に光る瞳は、涙で濡れる一方で、 蘇枋の袖を濡らして行く。
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋は笑う、困った様に。 それでも、その笑みは酷く優しい物だった。陽だまりの様に、桜を照らす笑顔では無いけれど、その静かな夕日の様な、凪いだ笑顔は、桜の心に響くには十分だった。
桜
蘇枋
2人だけの小さな空間。 頂上に着いた観覧車が、段々と下り始めている。 この観覧車が下に着くまでに、 彼の涙が止む様に、優しく抱きしめた。懐いた猫が擦り寄る様な仕草を、彼はした。 「今日、楽しかったね。」 「うん。」
「終わってしまうのは、惜しいよね。」 「うん、。」 彼が泣き止むその時まで、 観覧車が地に降りるその時まで、 俺たちは 今日の思い出話に花を咲かせながら、抱き合った。
君にはもう、そんな顔させたくない。 だから今日は沢山甘やかしてあげよう。帰ったら、沢山一緒に居てあげよう。 寂しい思いを、してしまわない様に。
彼の泣いてしまった理由を一人で考えて、帰宅後の事を考えた。 俺の思考は、どこまで先も彼の事ばかり。
彼は、自分を曲げない。だから1度決めた事は、最後まで諦めないだろう。 だから、俺を泣かすまで、彼はきっと、俺の傍に居てくれる、一緒にいてくれるだろう。 じゃあ、俺が泣かなければ。 俺が涙を見せなければ、彼はきっと、ずっと隣にいてくれる。 馬鹿げた考えだ、と 冷静な自分が教えてくれる。 それでも今の俺は、彼のことしか考えられない。
彼の瞳から流れ星の様に溢れてくる涙を優しく救いながら、 愛に満ちた顔でその瞳を真っ直ぐ見つめた。