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自分好みの曲が入ったスマホを弄り、イヤホンをつける
いつの間にか日課になっていたそれは、自分でも学生らしさを覚えた
____プシュー
電車の無機質な音が耳を通す
電車通学の宿命だ。
今日の曲を選び終えると、取手を掴もうと顔を上げる
焦点を前の電車に合わせる
すると急に、前の電車の人に焦点を奪われた
目立つ金髪が僕の視界を独占した
二枚の透明なドア越しに彼と目が合う
彼は派手な金髪にしては案外目立つ顔つきではなかった
あ、良い意味でね
何故か彼に興味....が沸いて、目を凝らす
ドア越しでもわかる綺麗なトパーズの瞳
中心にある金色に囲まれた黄土色っぽい瞳孔
その綺麗な目を守るような分厚めのメガネ
くるくるの癖っ毛
........
じっと彼を見つめる。
彼の手には、カバー付きの本が握られ、視線は....
.....僕...
あっ!!そっか
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流石に見られ過ぎで困惑している
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目を合わせにいったのは自分の方なので
なにもしないのは流石に無愛想かと思い、軽く手を振る
すると彼は少し驚いたような顔をして破顔してはにかむ
ドッと、胸から音がした気がした
イヤホンをしていても、その音は僕の脳に響いた
しばらくして、彼も左手で手を振り返した
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可愛い、と思ってしまった僕は重症なのかもしれない。
最近、新しい日課が増えた。
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笑顔で手を振り返す。
あれから毎日、彼と軽いコミュケーションをとっている
彼も毎日笑顔で手を振ってくれる
まだ口角があがったまま、フッと手を降ろし、スマホに少し目をやる
多分、僕は....彼のことが..
今日は気分で恋愛曲を流す
電車が出るまでまだ時間があるので、前の電車に目をやると
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「気づいた!!」と言うようにパッと顔を明るくさせた
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目を少し開けた後、頬が緩む
僕は謝るように眉を下げて、申し訳無さそうに手を振る
すると彼は笑って「いいよ」と言うように顔の前で手をふる
僕はその行為にそっと胸を撫で下ろす。
僕は、彼と出会ってから新しいことに気がついた。
それは、手を振るだけで沢山の感情があること。
彼の行動一つ一つに可愛いと思ってしまうこと。
声を出して話してみたいなと思う。
もっと近くで話したいなとも思う。
でも、仕方ないんだ。
だって、この電車のドア二枚ごしが彼と僕の距離だから。
今日もプシューという音と共に電車が動き出した。
今日も彼と会えるだろう。 そう思い、いつも早くに電車に乗って、ドアの前に行く。
イヤホンを着けて、いるだろうかと思い、前を見ると
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彼の姿はなかった。
何故だろう。いつももうこの時間にはいるのに。
思わず左耳のイヤホンを付ける手を止める。
1日位、休むよね。
思えば、そんなに焦ることではないけれど、 今日。彼の笑顔が見れないことに、少し気分が落ちるのを感じた。
・・・・・
あれから約一週間が経過した
彼は未だに姿を見せない。
何か、事故にでも遭ったのか。思い病気にかかったのか。
そう思っても可笑しくない時間。
不安が僕を包んだ。
僕は、彼の名前も、血液型も学校も誕生日も知らない。
そんな人を好きになった。
人は、そんな人でも好きになれる。
なのに、何も分からない。
彼が何故こんなに休んでいるのか。
無気力に壁にもたれ掛かる。
最近は、こうしか出来ない。
駅員の声が流れるのをふっと聞き流すだけ
『まもなくドアが締まります。近くの方はお気をつけ下さい。』
電車の出発を示す案内
この前までは凄く嫌な案内だったけど、もう何も思わない
『まもなくドアが締まります。近くの方はお気をつけ下さい』
繰り返し流れる
あぁ。今日も会えなかった。
ドアが絞まるのを感じていると
「すいませーん!!!!」
電車よりも大きい急なその声に、肩を跳ねさせる。
反射的にばっと目をやると
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思わず口を塞ぐ
何で、彼が、
駅員さんに謝って、ドアに入る
見て分かるふわふわの金髪
黄色の瞳
もたついた足がみどりの床について、息を切らしている
夢を、見ているようだった
彼は、目を泳がせて、窓側を見る
すると、きれいな黄金の瞳に捕まった。
その感覚は、始めて彼を見た時を思い出させた。
彼が、笑って近づく
そして小声で
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頭が、こんがらがった
思ったよりも優しい声で明るい声で
近くで見る金髪は、ふわふわで太陽の光で光ってて。
僕の名前を呼ばれる。
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涙腺が緩む
目元が熱くなるのを感じる
あんなに会えないと思っていた彼が、こんなに近くで
心配した彼がこんな笑顔で
僕の隣にいる。
頬を暖かい水が伝う
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あぁ会えた。やっと
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夢だった会話に頬が緩む。
クラスはさすがに違ったけど、同い年で、そこもまた夢だと思ってしまう
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笑いながら屋上へ向かう。
お互い昼御飯を食べようと約束していたのだ。
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僕が指を指すのはドアの後ろ。
あまり見えない場所
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許可を得る前にスッと座る
屋上からは爽やかな風が吹いていて
青春を肌で感じた
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見ると彼はもうお弁当を広げていて
僕もお弁当に手を付けながら言った
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どう、汲み取られてもいいから
これだけは彼に言いたい
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すると彼は、訝しげに苦笑する
その瞬間僕も、友達としてと汲み取られたと理解する
ずきりと心が傷んだ
綺麗な心にナイフを刺されるのではなく
汚れた心がまた汚れた感覚がした
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下を向いていて見えなかった彼の耳は少し赤くて
口が震えていて、勇気を出したような声だった
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ぐっと彼に向かって身を乗り出す
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小声でそう言う
彼はその言葉を聞いた瞬間、ぶわっと顔を赤くさせて
震えた手で僕をドンッと押す
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結構力が強くて、後ろに手を付くと
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またその言葉を聞いてばっと顔を赤くさせる彼。
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目を見開く。
...なにそれ、可愛いすぎでしょ..
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僕がこう言っても恥ずかしいのか、おにぎりを頬に詰めてうつむいている
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少し強引に彼の顎をあげる。
急いで食べたのか、口の横に米粒がついている
彼は、潤んだ目をぐっと凝らして
僕を振り払いおうとする
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にまにましながら彼を押し倒す、というよりは壁に付ける
口の横めがけて彼に顔を近づけると
彼は口を目を何回も瞬きさせて、顔をさらに赤らめる
ちゅっと小さく音が響いた
黄色の髪と赤い頬、僕の茶髪が近づいて
彼の暖かさを実感する
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例え、可笑しくたって構わない。
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だってこうして触れあえる関係が、
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僕と彼の距離だから。
コメント
19件
天才すぎて声出ないです
コメ遅くなっちゃったけどめちゃめちゃ尊すぎるって~!!🤦🏻♀️💞 やっぱり、とろ丼ちゃんの小説全て好きすぎるよ!!👊🏻💓
コメ失です、。クソリプ助かります。。ありがとうございます。。