レトルト
ねぇ
レトルト
今日は何買うの?
キヨ。
ん?
キヨ。
ああ、欲しかったゲームあるから
キヨ。
それ買いにね
とある休日。
近所のショッピングモールに来た。
レトルト
もしかしてそれって…
レトルト
前に二人で言ってたやつ…?
キヨ。
え?
キヨ。
そうなの?
レトルト
うん
レトルト
二人でやろうって言ってた…
キヨ。
そっか
キヨ。
ごめん、覚えてなくて
キヨ。
買って帰ってやろうか
レトルト
そうだね
一週間前にリリースされた新作のゲーム。
二人の好みがバッチリ合うと言って ずっと前から狙っていたゲームだ。
二人でワイワイして楽しみたかったけれど
今はもう他人行儀でしか楽しめなそうだ。
欲しかったゲームも買えて どうしようかと悩んでいたところだった。
キヨ。
ねぇ
レトルト
ん?
キヨ。
ちょっと付き合ってほしいところ
あるんだけど
あるんだけど
レトルト
ええよ
レトルト
どこ行くん?
キヨ。
服見よ
キヨ。
さっき通り過ぎた店だけど
キヨ。
あんたに似合いそうなの見つけたから
そう言って俺の腕を引っ張る。
レトルト
えっ…
キヨ。
何変な顔してるの?
キヨ。
行こうよ
レトルト
うん…
何階か登ったフロアの ある店の前に来た。
レトルト
ここって…
キヨ。
さっきちょっと見かけてさ
キヨ。
これ、このパーカー
キヨ。
あんたに似合うと思う
レトルト
これ?
キヨくんが持ってきたのは 黄色いパーカー。
俺はあまり選ばない色だけれど。
レトルト
何でこれ?
キヨ。
んー?
キヨ。
なんか、あんたのイメージっぽいっていうか…
キヨ。
これは俺の感じ方だけどさ
キヨくんは伏し目がちになって 話し始めた。
キヨ。
レトルトさん、ふわふわしてて
キヨ。
俺のイメージがこの色なんだよね
キヨ。
あと―
キヨ。
病院で目覚めた時から
キヨ。
俺、あんたの笑ったところ見たことなくて
それは間違ってなかった。
あんな状態の恋人を見て 笑えるはずがなかった。
俺ができるのは精々 下手くそな愛想笑いだけ。
レトルト
…ごめん
俺は咄嗟に謝った。
キヨ。
なんで謝るの
キヨくんは困ったように笑った。
キヨ。
俺も頑張って思い出すからさ
キヨ。
何かプレゼントして笑ってほしかったんだよ
キヨ。
ただのパーカーだけどさ
そう言って会計を済ませる。
レトルト
待ってキヨくん!
レトルト
お金!
キヨ。
プレゼントだってば
キヨ。
ほら、これ着て帰ろうよ
レトルト
えっ…
レトルト
いいけど…
キヨくんが買ってくれた服に着替える。
たったそれだけなのに やけに緊張した。
キヨ。
いいじゃん
キヨ。
すごく似合っててかわいい
レトルト
は!?
呟くように言ったその言葉を 俺は聞き逃さなかった。
レトルト
かわいい…?
キヨくんが口癖のように言っていたこと。
キヨ。
え?
キヨ。
俺そんなこと言った?
レトルト
気のせいかも
レトルト
行こ
キヨくんに微笑みかけ、 ショッピングモールを後にした。
TO BE CONTINUED…