蒼
4月2日の朝、オレたちは再びルナビーチに集まった。
オレたち以外に誰もいない浜辺。波の音だけが聞こえる静かな場所。
オレはいづみさんに向き合った。
「昨日の話を聞いていて思ったんですけど……キュレイシンドロームの実験のために、 いづみさんはみんなを巻き込んでしまったんですよね」
「うん……」
「じゃあ、どうしてこんなことをしてまで実験をしたかったのか教えてください」
「それは…………」
言い淀むいづみさんに代わり、オレが壊すことを申し出た。
そして、オレは銀の鈴を壊した。
その後の記憶がない。オレたちはみんな死んだはずだ。だがこうして生きている。どういうことだ?
「ねえ、誠くん。どうして私を置いていったりしたの?私、ずっと待ってたんだよ? もう2度と置いていかないでよね」
ああ、そうだ。いづみさんと一緒に来たんだったっけ。
オレはいづみさんの手を引いて、ロッジに向かった。
ロッジに戻るなりいづみさんはシャワーを浴びに行った。
オレは億彦たちの部屋に顔を出した。そこにはなぜか優夏がいた。
「あ!誠兄ちゃんだー!」
オレの姿を見た途端、優夏の表情が変わった。
「あんたたち、何をしてんのよ!せっかく見つけた宝物だったのに!!」
後ろを振り返ると、いつの間にかいなくなっていた優夏がいた。
どうやらいづみさんとの話を盗み聞きされていたようだ。
「うるせぇ!!これはもう必要ないだろ!?」
オレの言葉を聞いて、優夏の表情が変わった。何かを決意したような顔だ。
「……ううん、必要だよ。絶対に必要になるんだよ!」
優夏はそう言って、砂の上に腰を落とした。
「いい?あたしたちはみんな、誰かを好きになって付き合うことになるの。そしていつか結婚することになる。
それは誰だって分かってることだけど、どうしてそうなるかまでは分からないよね? つまり、愛し合って結婚したはずの二人が、片方だけが相手を嫌いになったり憎むようになってしまうことがあるってことを」
オレはいづみさんの方を見た。いづみさんは黙ったままうつむいている。
「さっきの話聞いて分かったと思うけど、この先、くるみのお父さんみたいにならないようにするために、 みんなで協力してお互いのことをよく知っていく必要があるの。
そのために必要なのが、これなの」
優夏は銀色に輝く小さな機械を手に取った。
「これがあれば、相手の考えていることが分かるようになるかもしれない。
相手が今どんなことを考えていて、これからどういう行動を取ろうとしているかも分かるはず。
そしてそれを逆手に取って相手を誘導することができるなら、争いを避けられるはずだよ」
「そんな都合の良いものがある
