博士
この犬は一体なぜ人間の言葉が喋れるんだ
魔川准教授
不思議ですよね
研究員
一体何って喋るんですか?
博士
時々だが、飯の時間だぞと発するんだ
魔川准教授
飯の時間だぞ?一体なんでそんな言葉を
研究員
保健所の職員が餌を与える時の口癖だったようです
魔川准教授
研究、やっていきますか
博士
にしても、研究員の数が少ないな
魔川准教授
みんな相手にしないんです。犬が喋るなんて馬鹿げている。空耳だって
博士
そうか…無理もないな。よし、この犬の研究にわしの全てをかける
博士
老い先短い老人の願いだと思って、君達二人はわしに協力してくれないか?
魔川准教授
私はもちろん博士についていきます
研究員
僕もです。
野良犬
なんなんだ…こいつら何を喋っているんだ?
野良犬
とにかく、人間にも犬語みたいに言葉があるのはわかった
野良犬
俺が覚えた言葉の意味を、解読しなければ
野良犬
そういえば、あの人間、餌を与える時にいつもあのセリフを言っていた…つまり、め、し、の、じ、かん、だぞぉはご飯を与える時に使う言葉なのではないか?
野良犬
これは、興味深いぞ。もっと人間の言葉を習得して人間共に日頃の文句をぶつけてやる
博士
まずは、この犬に言葉を覚えさせよう
魔川准教授
それなら、日常生活を共に送った方がいいのでは?
研究員
それはいい考えだ。でも、僕は犬を飼えません。それに、言葉を教える時間は忙しくてなかなか…
魔川准教授
私も、他の仕事が山積みで
博士
仕方ない。この暇老人のわしがこの犬と一緒に暮らして、言葉を教えるよ
こうして博士と喋る野良犬の共同生活が始まった
博士は野良犬を抱き抱えて、自宅に連れて帰った
博士
よしよし、ここが我が家だぞ
野良犬
離せ、降ろせ、触るな
博士
吠えるな吠えるな
博士
わしは今日からお主の飼い主じゃ
野良犬
にしても、でっかい犬小屋だな
博士
ここがリビングじゃ、好きにしてろ
野良犬
なんだ、ここ?邪魔なもんがいっぱいあるな
野良犬
このじじいが座ってるこれ、座り心地いいのか?
博士
ほら、お主もソファーに座ってみ
俺はじじいの隣に座った
野良犬
座り心地いいじゃねーか
野良犬
これはこれで最高だ
このじじいは少し好きだ。俺をここに連れてくる時、籠に入れなかったからな
頭が良さそうな顔してるぜ。俺は頭がいい奴は好きだ
博士
ん?なんか臭いな
博士
野良犬、お前の匂いか…風呂に入れてやる
野良犬
おい、じじい離せ!降ろせ
俺はじじいに抱き抱えられ、どっかに連れて行かれた
博士
この先が風呂場じゃよ
野良犬
なんだこの扉?メス犬でもいるのか?
扉の向こうには、穴の空いたでっかい箱とつぶつぶがいっぱいついている管が置いてあった
博士
これはバスタブ、こっちはシャワーだ
野良犬
もっとゆっくり喋れよ
博士は野良犬に向けてシャワーをかけた
野良犬
やめろじじい、濡れるだろうが
博士
気持ちいいか?
野良犬
やめろって
こうして博士と野良犬の共同生活が始まる