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1945年8月15日正午 長野県天虎村──花牟礼家
部屋に置かれた昭和11年製の 真空管ラジオからは昭和天皇の声が ノイズ混じりに流れていた
それは日本の全国民に対して 日本が敗戦した事を伝える 「終戦の詔書」の読み上げだった
そう、世に言う玉音放送だ
そんな敗戦の日に 産声を上げた小さな赤子
それは名前も貰えず生まれた瞬間から 生涯奴隷として生きていく事が 確約された赤子だった
敗戦の日に産まれ 奴隷として生きると決められる
尊い生命の誕生にしては 随分な皮肉である
助産師
勇父
勇父
勇母
勇父
勇父
花牟礼勇
勇父
花牟礼勇
勇母
勇母
勇は母が抱いている 赤子を物珍しく見つめる
花牟礼勇
勇父
勇父
花牟礼勇
勇母
勇母
花牟礼勇
花牟礼勇
勇母
勇母
花牟礼勇
勇父
勇父
勇父
花牟礼勇
何も知らない勇は 手を挙げて喜ぶ
勇がその無知を自覚するのに そう時間はかからなかった
勇母
母は弟(おじろく)の背中を 力強く鞭で叩く
弟
勇母
勇母
勇母
勇母
弟
勇母
弟
花牟礼勇
弟が奴隷として 母にしごかれているのを 勇は黙って見つめる
花牟礼勇
勇母
勇母
花牟礼勇
勇母
勇母
花牟礼勇
勇母
勇母
花牟礼勇
花牟礼勇
弟をその身を挺して 守りたかったが、母に抵抗できず 勇は黙って家に戻るしかできなかった
父と母が眠り 静かになった部屋
花牟礼勇
弟
妹
花牟礼勇
勇は弟と妹に羊羹を手渡す
弟
花牟礼勇
妹
花牟礼勇
弟
妹
弟と妹は生まれて 初めて食べる羊羹を 噛み締める様に食べる
花牟礼勇
弟
弟
妹
花牟礼勇
花牟礼勇
花牟礼勇
花牟礼勇
弟
妹
花牟礼勇
妹
花牟礼勇
花牟礼勇
勇母
勇母
勇母
花牟礼勇
花牟礼勇
勇母
花牟礼勇
勇の顔が強張る
勇母
花牟礼勇
勇母
花牟礼勇
勇母
弟
妹
勇母
勇母
勇母
勇母
弟
花牟礼勇
花牟礼勇
妹
勇母
花牟礼勇
花牟礼勇
勇母
花牟礼勇
勇母
勇母
花牟礼勇
勇母
勇母
花牟礼勇
勇母
勇母
勇母
勇母
花牟礼勇
勇母
勇母
勇母
花牟礼勇
花牟礼勇
勇は涙を流しながら 弟と妹を指差す
弟
勇母
勇母
勇は母に暴行を受ける 弟と妹を黙って 見つめるしかできなかった
花牟礼勇
花牟礼勇
弟
妹
花牟礼勇
弟
弟
弟
白縫信愛
白縫信愛
信愛はその場に 息を荒くして座り込む
菅生茜
花牟礼さくら
白縫信愛
八乙女焔垂
白縫信愛
住職
菅生茜
菅生茜
住職
住職
住職
白縫信愛
白縫信愛
白縫信愛
弟
弟
妹
弟
弟
花牟礼勇
花牟礼勇
勇は涙を流しながら土下座をする
弟
花牟礼勇
花牟礼勇
花牟礼勇
花牟礼勇
花牟礼勇
花牟礼勇
花牟礼勇
花牟礼勇
弟
弟
弟
弟
弟
花牟礼勇
妹
妹
妹
花牟礼勇
花牟礼勇
花牟礼勇
弟
妹
花牟礼勇
花牟礼勇
弟
妹
弟
花牟礼勇
妹
花牟礼勇
弟
弟
白縫信愛
妹
白縫信愛
弟
白縫信愛
弟
妹
妹
白縫信愛
弟
白縫信愛
白縫信愛
白縫信愛
白縫信愛
白縫信愛
弟
妹
白縫信愛
弟
弟
花牟礼勇
妹
笑顔で手を振る おじろくおばさの姿は ゆっくりと消えた
花牟礼勇
花牟礼勇
白縫信愛
白縫信愛
白縫信愛
白縫信愛
花牟礼美羽
花牟礼秋穂
菅生茜
花牟礼さくら
花牟礼秋穂
白縫信愛
その日の夜、花牟礼家の居間では 大勢の村民を集めた宴会が開かれていた
村民
村民
花牟礼勇
勇はグビグビとビールを飲む
花牟礼さくら
花牟礼さくら
花牟礼勇
花牟礼勇
村民
村民
花牟礼勇
花牟礼さくら
八乙女焔垂
浦添朝陽
白縫信愛
テーブルの上には高級寿司が ズラリと並べられている
八乙女焔垂
八乙女焔垂
浦添朝陽
八乙女焔垂
八乙女焔垂
浦添朝陽
八乙女焔垂
浦添朝陽
八乙女焔垂
浦添朝陽
菅生茜
菅生茜
花牟礼さくら
菅生茜
花牟礼さくら
花牟礼さくら
菅生茜
白縫信愛
白縫信愛
信愛は部屋の隅に置いてある 小さなテーブルを見る
そこには一人分の寿司と 羊羹、キャラメルが並べられている
白縫信愛
花牟礼秋穂
白縫信愛
花牟礼美羽
白縫信愛
花牟礼秋穂
白縫信愛
浦添朝陽
浦添朝陽
白縫信愛
信愛はものすごい剣幕で 朝陽を一括する
浦添朝陽
菅生茜
花牟礼さくら
八乙女焔垂
浦添朝陽
朝陽は焔垂の取り皿の ウニを口に運ぶ
八乙女焔垂
白縫信愛
こうしておじろくおばさの弔いは 無事に全工程を終えた
おじろくおばさは大昔の話
我々には関係の無い話だ
誰もがそう言って 目を背けてしまうかもしれない
しかしおじろくおばさが産まれた 背景にある思想は現代にも 広く根付いていると言えるだろう
子供を自分のアクセサリーの ように考えている親や
子供を自分の思い通りに コントロールしたいと思う いわゆる毒親が居る限り
第二、第三のおじろくおばさが 産まれるかもしれない
どんな酷い親でも子供の事を 愛しているという皆が想い描く 理想的な常識は崩れつつあるがらだ
しかし逆を言えばそれらを意識し 親と子という枠に囚われず
人と人として互いを尊重し 求め合っていれば おじろくおばさは産まれない
天虎村の悲劇を繰り返さずに済む
負の連鎖を断ち切る事ができる
信愛たちはその事を胸に秘めて 帰路に着くのだった
数日後
ゴールデンウィーク明けの 怪異探求倶楽部の部室では 皆が楽しげに談笑していた
白縫信愛
花牟礼さくら
花牟礼さくら
浦添朝陽
八乙女焔垂
菅生茜
白縫信愛
花牟礼さくら
白縫信愛
花牟礼さくら
花牟礼さくら
菅生茜
白縫信愛
八乙女焔垂
花牟礼さくら
浦添朝陽
浦添朝陽
花牟礼さくら
花牟礼さくら
白縫信愛
花牟礼さくら
さくらは皆に見える様に スマホをテーブルの上に置く
菅生茜
皆がさくらのスマホを覗き込む
八乙女焔垂
浦添朝陽
花牟礼さくら
白縫信愛
白縫信愛
信愛は吹き出す
浦添朝陽
八乙女焔垂
菅生茜
花牟礼さくら
菅生茜
白縫信愛
菅生茜
白縫信愛
白縫信愛
浦添朝陽
菅生茜
花牟礼さくら
白縫信愛
怪異探求倶楽部の部室は しばらくの間笑い声に包まれていた
File4 おじろくおばさ
END
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