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唯斗
うさぎさんがいない……
いつもいる場所にいない。
唯斗
せっかく絵を見せようと思ったのに。
唯斗
……
なんだか、落ち着かない。
前までのように、 1人でぼぅっとしてればいいのに。
なんでなんだ。
唯斗
帰ろう。
でも、うさぎさんは
1日経っても、
3日経っても
1週間経っても、 来なかった。
唯斗
うさぎさん、事故にあってたり……
ドクンと心臓が跳ねる。
唯斗
探さなきゃ。
唯斗
こんにちは……
おつかいの時によく寄るお店。
唯斗
髪がすこし茶色で、
唯斗
髪が肩にかかった感じの女の子、見ました？
商店街のおばちゃん
他に特徴はないのかい？
唯斗
えと……
うさぎさんの姿を頭の中で思い描く。
唯斗
すごく美人です！
唯斗
……って、
僕はなにを言ってるんだ……
商店街のおばちゃん
……彼女？
唯斗
い、いえ。そんなんじゃないんですけど……
商店街のおばちゃん
名字とかは？
唯斗
あ、えと……
商店街のおばちゃん
うーん、じゃあ、通ってる中学校は？
唯斗
し、知りません。
商店街のおばちゃん
唯斗くん、その子の事
なにも知らないじゃないか。
なにも知らないじゃないか。
唯斗
っ……
唯斗
他の人にもきいてみます。
おばちゃんの顔を見ずに去る。
商店街のおばちゃん
あ、まだ力になれる━━
僕はうさぎさんのことをなにも知らなかった。
なのに、自分だけこんな無駄話に付き合ってもらっちゃって。
ていうか、なんで僕は うさぎさんの事をこんな考えてしまうのだろう。
唯斗
僕は━━━━っ
すぅ、と息を吸って、
ドアを開ける。
唯斗
うさぎさん……
うさぎ
唯斗くん……？
唯斗
いや、葵さん。
うさぎさんはふとんをぎゅっと握った。
ここは、近くの総合病院だ。
唯斗
なんでって、うさぎさん……
じゃなくて。
じゃなくて。
唯斗
急に居なくなるからですよ……
葵
私みたいな人間、
探さなくていいのに。
探さなくていいのに。
唯斗
海から歩いて帰ってるみたいだったので、
唯斗
家も近いのかなと。
唯斗
学校の人たちに頑張って聞いて、
唯斗
葵さんのの祖母の家に辿り着きました。
唯斗
僕みたいな人にはきつかったですよ……？
葵さんのおばあちゃん
あら、君は……
唯斗
葵さんの、
唯斗
━━━━━です。
唯斗
で、今はこの病院に居るということを聞きました。
葵
もう。おばあちゃん……
唯斗
もちろん、病気のことも。
葵さんの顔が強張った。
葵
私の嘘、聞いてくれる？
唯斗
……はい。
葵
私はいじめっ子だった。
葵
いじめてる子は、地味だけど普通にかわいくて。
葵
……嫉妬してた。
葵
結構みんな私に従ってて。
葵
ある日、ついにいじめてた子が学校に来なくなっちゃったの。
葵
そしたら、みんなお前のせいだって私を責めはじめた。
葵
それで、私が家でひきこもってたの。
葵
そしたら、お父さんがね……
今まで淡々と、でもつらそうに話していた葵さんが
ついに、涙を流した。
葵
どうしたんだって、言ってくれたの。
葵
でも、私は━━━━━
ひっ、と葵さんが嗚咽を漏らす。
葵
お父さんなんてだいっきらいだって、言っちゃったの。
葵
それで、お父さんは出かけってって。
葵
交通事故に遭った。
唯斗
……！？
葵
私のために、ケーキを、買ってきてくれてた。
葵
箱にはね、
元気だせっていうメッセージが入ってたの。
元気だせっていうメッセージが入ってたの。
葵
多分、私の部屋において置こうとか思ったのかな。
葵
ほんと、私ってバカだよね。
葵
んで、病気が発覚したのはそのあと。
葵
たぶん罰だと思う。
葵
ほんと、私は嘘で人生を終わらせた。
葵
嘘で人を殺した。
葵
ほんと私なんて死んだほうが……
唯斗
言わせません！！！！
葵さんの体がビクッと跳ねる。
唯斗
どれだけ後悔しても、人生は変えられないなんて、
唯斗
誰が言ったんですか！
唯斗
今でも、変えられるんです！
唯斗
これからは。
唯斗
未来は！
唯斗
変えられるんです！！！！
葵
……でも、私にはなにもないから。
唯斗
僕がいるじゃないですか。
唯斗
僕が一緒にいます。
唯斗
葵さんの未来を一緒に変えます。
顔をおおっていた葵さんが、
僕の顔を見た。
唯斗
葵さん、好きです。
葵
唯斗くん……
葵
ありがとう……
唯斗
じゃあ、まずは病気を治すところからですね〜
葵
うん……がんばるよ。
葵さんの頬に、きれいな涙が伝った。
END
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