僕がなくなる迄

収録が始まった。

スタッフ達の目線は明らかに僕にある。

先程とは別の、恐ろしい目線。

目線の気持ち悪さと焦燥感が全身に広まる。

カメラがある。

その先からは全く知らない無数の目線が、こちらに向くんだろう。

もし今僕が少しでも僕らしくない事をすれば、コメント欄に文字として晒される。

不安定や焦燥感で一杯の僕など、僕じゃない…と

変だ、と。

せめて、せめてこの画面内だけは“僕”でありたい

“剣持刀也”でいたい。

そうして時間だけが過ぎ去っていった。

気づいたら時計の針は収録終了の時間をさしていた。

何でだろうか

何だか気分がマシになった気がする

視線を感じない

何だか一人の世界にいるみたいだ

でも何処か浮いている様な感覚がする

でも、これで、これでやっと…僕は僕で…

…あれ？

…皆んなは…？

…？

………誰

…何か変だ

そうしていつも通り帰り道を通っていった。

ガチャ

…何か変だ

僕にはガク君がいるんだから…

大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫…。