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レモンクリームパスタ

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レモンクリームパスタ

10 - レモンクリームパスタ⑩(終)

♥

40

2021年01月29日

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翌日

心療内科

晶子

(心療内科自体、久しぶり…)

晶子

(前に来た時は、確かミナトさんが亡くなった後だったわね)

晶子

だんだん、ミナトさんがいない生活に慣れて、通わなくなって来たところだったのよね…

晶子

最近、睡眠薬も飲まずにいられたけど………

晶子

そんなことも、私、すっかり忘れてた

5分後

看護師

晶子さん、1番相談室へどうぞ

晶子

はい

心療内科 医師

はじめまして

心療内科 医師

この病院の院長をしております、渡辺と申します

晶子

よろしくお願いします

心療内科 医師

えーと、まず、問診票見せてもらいました

心療内科 医師

辛かったですね…

晶子

…はい

晶子

何故、私の周りの人ばかり傷つくのか分かりません

晶子

それから

心療内科 医師

はい

晶子

私が彼らを傷つけた、とも思います

心療内科 医師

晶子さん、それは違います

晶子

・・・・・・・・・

心療内科 医師

あなたも、本当はわかっているでしょう?

晶子

………っ

心療内科 医師

現実を怖がらないで

心療内科 医師

大丈夫

心療内科 医師

私達も、ついてます

晶子

はい

嬉しかった

誰かに、大丈夫って言って貰えたことが

私は、一人じゃないんだって思えたからー

心療内科 医師

眠れない日はありますか?

晶子

はい、最近は寝つきが悪い日が多いし、横になっても全然眠れません。

心療内科 医師

そうすると…お薬手帳に記載のある、以前使用したことがある睡眠薬

心療内科 医師

これを、再度こちらの病院でも処方します。まずはこれで、様子を見ましょう

晶子

わかりました

心療内科 医師

あとは、困っていること何かありますか?

晶子

テレビ

心療内科 医師

えっ?

晶子

テレビを見るのが苦痛です。

晶子

少し前までは、テレビが好きで、よく見てたんですけど………

ここ最近、テレビの音をうるさく感じる。 昔は、家に一人でいると寂しくて、作業中でも必ずテレビをつけていたのに。

心療内科 医師

そうですか・・・。今のあなたには、休養が必要ですからね。

心療内科 医師

テレビのニュースやラジオのニュース、辛かったら消してもいいですし、

心療内科 医師

あなたが休養をしっかりとって、時間が経てば、またテレビが楽しいと思えるはずです

晶子

・・・はい

心療内科 医師

まずは睡眠をとることを優先しましょう

心療内科 医師

心療内科 医師

現在、入院している彼の件で辛いことはないですか?

晶子

はい、お見舞いに毎日行ってますが、

晶子

行かないほうが辛いですから

心療内科 医師

そうですか。では、それは継続しましょう

晶子

わかりました

心療内科 医師

でも、ちょっとでも疲れている時や、辛い時は行かなくてもいいです

晶子

はい

心療内科 医師

今日は、ここまでにしましょう

心療内科 医師

院内薬局がありますから、案内しますね

晶子

はい、お願いします

晴人の入院している病院

晶子

すっかり遅くなっちゃった

晶子

まだ、面会時間で良かった

晶子

晴人くん、今日も来たよ

晴人

………………

晶子

何だ、起きてたのね

晶子

いつもはこの時間昼寝してるのに、珍しいわね………

今のは、私の見間違えだろうか

晶子

ん?

今、彼は腕を少し動かしたような…

晶子

どうしたの?何か言いたいの?

晴人

………お

晶子

晶子

ゆっくり、ゆっくりでいいから

晶子

話してみて・・・!

彼はあの事故から、ずっと寝たきりだった。

目が開いていても虚ろで、魂がないようだった。 私が声をかけても、担当の先生や看護師さんが声をかけても、ほとんど反応することが無かった。

でも、今日は違う。

目に光がある、ように見える。

晴人

そい

晶子

ん?

晴人

晴人

お、そ

晴人

晴人

晶子

晶子

晴人くん………!!

晶子

そう、だよね!

晶子

今日、いつもと違って、ここに来るのが遅かったもんね。

晶子

分かったんだ?

晴人

嬉しいな。

晶子

偉いなぁ………晴人くんは

晴人

晶子

………何?

晴人

泣かな、で

晶子

…ッ

晶子

こんなの、泣くよっ…!

私は久しぶりに、 嬉し泣きをした。

沢山、 たくさん泣いた。

晴人

い、いこ

晴人

いい子

晶子

あなたもよ。

晶子

生きててくれて、ありがとう

今回は返答は無い。

晶子

先生がね、もうすぐ来てくれるよ。

晶子

あの先生も、ずっと、あなたのこと心配してたんだよ

晴人

晶子

そっか、晴人くんは先生と面識がないからね。

晶子

大丈夫、優しい人だよ

晴人

…ん

まるで夢みたい

彼と意思疎通できるなんて。

晶子

今日は記念日だね

晶子

晶子

「久しぶりに、私とあなたが話せた記念日」

晴人

………ん

あの後、救命外来の時にお世話になった先生が来て、晴人くんの様子を見てくれた。

医師

あなたが、彼の回復を信じたから、奇跡が起きたんですよ

先生はそう言ってくれたけれど。

晶子

いいえ

晶子

彼の力だと思います

医師

うん

医師

もちろん、それもあるけれど

医師

あなたが、彼のそばにいたから、回復しつつあるんだよ。

医師

晶子さん、あなた毎日お見舞いに来てたんだって?

晶子

・・・はい

医師

じゃあやっぱり、あなたの力だよ

素直に、先生の言ってくれたことを信じてみようと思う。

晶子

ありがとうございます。そう言ってもらえて、嬉しい

晶子

晶子

あっ、先生

医師

はい

晶子

あれから私、心療内科にも行って、診てもらいました

晶子

晶子

行ってきて、良かったです

話を聞いてもらえるだけでも、心は軽くなる。 睡眠が取れると、失われた判断力も戻ってくる。 やっぱり、精神科医ってすごいなぁ。 プロだなぁ。

医師

そうですか。それなら良かった

医師

(顔色もいいし、前よりは表情も明るくなったみたいだな)

医師

(とりあえずは、安心かな)

晶子の家

晶子

ミナトさん、おかげ様で、晴人くんが回復しつつあります

晶子

毎日私たちのこと、見守ってくれて、本当にありがとう

晴人くんのリハビリはこれからだけれど、私は前向きでいよう。

彼のリハビリが辛くて、くじけそうになった時。

頼れる存在がいないと・・・、 彼自身が気が付いた時。

「私がそばにいる」と胸を張って言えるように・・・

晶子

さてと、冷凍してあるご飯でも食べよう

私は、少しずつ以前のような生活を取り戻しつつある。

それは、きっと良いことなのだと思う。

晶子

以前の晴人くんも、きっとそう言うだろうし…

晶子

晶子

前向き!前向きに生きるんだ

部屋に一人でいると、辛くなることもあるけれど、これからも極力自分を鼓舞して毎日生きようと思う。

数日後

看護師

あ、晶子さんこんにちは!

晶子

こんにちは

看護師

今、口の中マッサージ終わったところです!

晶子

いつもありがとうございます

看護師

じゃあ晴人くん、1時間後に検温に来ますからね~!

晴人

…ん

数分後

看護師

晶子さん、まだいますか?

晶子

はい、います

看護師

…実は、晴人くん充てに面会をご希望する方がいらっしゃっていて…

晶子

(誰だろう)

看護師

男性で、「島さん」って方で

看護師

どうやら晴人くんの上司?みたいなんですけど…

晶子

晶子

その方、私もお会いしたいと思っていたんです。

晶子

通していただけますか?

看護師

分かりました。もし、長くなりそうなら相談室空いてるから、使ってくださいね

晶子

はい、ありがとうございます

店長(晴人の上司)

大変な時に申し訳ございません

晶子

とんでもないです

晶子

あなたは、確か…

店長(晴人の上司)

晴人くんの上司の、島と申します

晶子

確か、元々あのレストランの店長さんだった方ですよね?

店長(晴人の上司)

ご存じでしたか

晶子

晴人くんから、話を聞いていました

晶子

晶子

あの、島さん自身の体調はいかがですか?

店長(晴人の上司)

うん。おかげ様で、寛容したんだ

晶子

晶子

良かった、ひとまず安心ですね

店長(晴人の上司)

今は娘と一緒にお風呂に入ったり、児童館に遊びに行ったりしてて

店長(晴人の上司)

すごく、幸せなんだ

島さんは、とても穏やかな顔をしている。

晶子

…あっ、そういえば

店長(晴人の上司)

晶子

実は、晴人くんが入院する前に、彼から依頼されていたことがあって…

晶子

晶子

こちらのネクタイピン、晴人くんが島さんへ渡したかったようなので

晶子

代わりに私から、お渡し致します

店長(晴人の上司)

これ…四つ葉のクローバーモチーフ…

晶子

…本当は、晴人くん自ら手作りして、あなたに差し上げたかったみたいなんです

晶子

でも、事故に巻き込まれてしまってそれは叶わないから…。

晶子

晴人くんの容体が安定するまで、祈るような気持ちで、私が代わりに四つ葉のクローバーモチーフの作品をたくさん作っていたんです。

晶子

「これを貰った方が、幸福になるように」と

店長(晴人の上司)

そうだったんですか…

店長(晴人の上司)

奇跡がつまった作品なんですね…

店長(晴人の上司)

これ、本当に俺が貰っていいのかな

晶子

是非、あなたが持っていて下さい

店長(晴人の上司)

分かりました。ありがたく頂戴いたします

店長(晴人の上司)

店長(晴人の上司)

あの、晶子さんってウチの店に何度かいらしてたことあります?

晶子

…はい、今でも毎月伺っています

店長(晴人の上司)

そうですよね!いつもありがとうございます!

晶子

パスタ屋さんのころから利用しています。亡くなった私の夫が、あのお店のパスタすごく好きで…きっと生きていたら、増えた別のメニューに喜んだと思います

店長(晴人の上司)

そうでしたか…旦那さん、亡くなられたんですね…

晶子

ええ

晶子

私もようやく、心の整理がついたんです。

晶子

晴人くんのおかげで

店長(晴人の上司)

そうだったんですか

店長(晴人の上司)

晴人くんもスミに置けないな

晶子

あ、付き合ってるわけではないんですけれどね

店長(晴人の上司)

あ、そうなの?

店長(晴人の上司)

…でも、きっと晴人くん、あなたのこと好きですよ

晶子

えっ?そんなことはないですよ

店長(晴人の上司)

だって、今もずっとこっちを見てますよ?

そう言われて、はじめて相談室の前に晴人くんが来ていることに気が付いた。

晶子

あれ?晴人くん、いつからいたの?

晴人

……

晶子

気が付かなくてごめんなさい

晶子

島さんと、はじめてこんなに話したわ

晴人

………ん

店長(晴人の上司)

あ、そろそろ俺帰らないと。

店長(晴人の上司)

娘を保育園に迎えに行かないといけないんです

晶子

そうでしたか

晶子

忙しい中、ありがとうございました

店長(晴人の上司)

とんでもない

店長(晴人の上司)

俺も仕事復帰したばかりだけど、晴人くんが入院している間も、店はうまく回っているから、気にしないよう、言いに来たんです。

店長(晴人の上司)

店長(晴人の上司)

でも、その心配は無さそうかな

晶子

え?それって、どういう…

店長(晴人の上司)

今、彼は仕事のことは一切考えていないみたいだから。

店長(晴人の上司)

看護師さんからも聞いたけれど、リハビリ、少しずつ取り組んでいるんだって?

晶子

はい、そうです

店長(晴人の上司)

それなら良かった。俺が入院して、治療しているときは毎日毎日、仕事のことを考えてしまって、反対にストレスになっていたんだ

晶子

そうだったんですか…

店長(晴人の上司)

だから、今、晴人くんが治療に集中してくれて良かった

晶子

きっと、リハビリを続けたらもっと良くなると思います。

晶子

そうしたら、あのお店のこと、島さんのこと、思い出したり、話してくれると思います

店長(晴人の上司)

うん、俺もそう思う

晶子

良かった、私たち同じ気持ちですね!

店長(晴人の上司)

もし、彼が何かに気づいて、慌てていたら「店は大丈夫」って伝えておいてくれませんか

晶子

わかりました

店長(晴人の上司)

それから、彼がもし復帰したがった時には、必ず戻れるように本部にも掛け合うから。

店長(晴人の上司)

何も心配しないで

晶子

ありがとうございます

晶子

今日は、ありがとうございました

店長(晴人の上司)

晶子さんも、お体お気をつけて

晶子

はい

そして 数年後…

晴人

えっと、ここが、晶子の家

晶子

そう、ここが私の家だよ。

晶子

あなたも、何度かここに来たことがあるんだよ

晴人

晶子

忘れちゃったよね。もう一回、覚えてね

彼はいまだに、一部の記憶がない。

でも、奇跡的にリハビリの甲斐があり、体はほぼ健常者並みに動かせるようになった。

晴人

これは、誰?

晶子

ミナトさん、だよ

晴人

ミナト、さん?

晶子

そう。私の、昔の旦那さんだよ

晴人

旦那、さん……?

晴人

晴人

僕知ってる

晶子

えっ?!

晴人

ミナトさん、晶子さんの、大事な人

晶子

…すごい。覚えていてくれたんだ

晴人

僕、かなわない

晴人

ミナトさん、かなわない

晶子

えっ?!

晶子

(そんなこと考えてたんだ…)

晶子

晴人くん、聞いて

晴人

晶子

私は、ミナトさんも、晴人くんも大事だよ

晴人

………

晶子

それぞれ違う人だから、どっちが良いとか、そういうことは無いんだよ

晴人

うーん

晶子

(今の晴人くんには難しかったかな)

晴人

ナムナムする!

晶子

あ、お線香あげる?

晶子

うん、一緒にしようね

昔思い描いた未来とは、ずいぶん違う所にいるけれど。

私は十分、幸せだ。

最愛の人がそばにいて、手に職もあって、

何ひとつ、足りないものがない毎日。

晴人

ミナトさん、晶子さんが好き?

晶子

うん、多分そうだったと思うよ

晴人

僕は…

晶子

晴人

晴人

晶子さんが、好き!

晶子

!!!

晶子

(はじめて、彼から好きって言葉を聞いた!)

晶子

嬉しい

晶子

ありがとう、晴人くん

晴人

うん?

晶子

私も、あなたが大切で…

晶子

大好きよ。

ずいぶん、遠回りになってしまったけれど、 きちんと伝えることができた。

好きな人に、好きって伝えられて、 本当に良かった。

晶子

これからもよろしくね、晴人くん

晴人

うん!

レモンクリームパスタ

-f i n-

あとがき

作者のwatです。

この作品は、テラーで連載した中で、一番長い作品になりました。

書き始めて、完結するまで半年以上の時間を要しましたが、

無事に完成したのは、読んでくださる皆様のおかげです。

展開に行き詰った時、私生活が忙しくくじけそうになった時も、

作品に「いいね」を下さる方がいたから、頑張れました。

きっと、この作品に出てきた登場人物は、ここに書いていない新たなストーリーを展開していくと思います。

そんな「外伝」的なストーリーを、いつか発表できる日を夢見て。

それでは改めまして、お読みいただき、ありがとうございました!!

2021年

wat

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