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奏多
奏多
柊 朔弥
柊 朔弥
擦り切れた布の中で、2人は眠りにつこうとしていた
何も無い路地裏
でもそこは確かに“家”だった
ーザッ
土を踏みしめる音
足音が近づいてくる
柊 朔弥
兵士
低く冷たい声が響いた
無機質な金属の銃口
それを構える兵士たち
柊 朔弥
兵士
兵士
言葉の意味が理解できないまま、咄嗟に奏多を抱きしめた
柊 朔弥
奏多
柊 朔弥
柊 朔弥
奏多
後ろから何人もの兵士が現れ、 まるで“商品”を集めるように
路地裏の陰に身を潜めていた人々を次々と捕らえていった
抵抗する者もいた
けれど、その瞬間、容赦のない殴打や蹴りが加えられ静かに無言で押し込まれていく
人間
人間
兵士
兵士
人間
重い扉の音が響く
何人もの“痩せた者たち”と一緒に、どこかへ連れ去られていた
次に意識がはっきりした時には
鉄と薬品の混じるような空気
低く唸る機械音
金属の床には体温を奪われるほどの冷たさが這っていた
柊 朔弥
柊 朔弥
掠れるような声で確かめ合う
指先を探り、手を繋ぎ、触れ合うことで現実を確認する
そこは、**“奴隷収容施設”**と呼ばれる場所だった
扉の向こうでは何人もの人間が番号で呼ばれ
無表情な管理者たちによって連れ出されていく
皮膚の色、年齢、性別――何ひとつ関係はない
首には黒い首輪が取り付けられ、そこに浮かび上がる赤い番号
朔弥は「2471」 奏多は「2472」
まるで物のように割り振られた数字が、二人の“名前”を奪っていた
牢の中は、背を伸ばせば壁に当たるほど狭く、地面には薄い布が一枚
与えられる食事は、水のように冷たい粥のようなものが一日一度、小さな金属皿に盛られるだけ
柊 朔弥
小さく、呟く
自分が何をされてもいい
でも、この子だけは――何があっても
奏多
奏多
柊 朔弥
柊 朔弥
そっと奏多の頭を撫でる
奏多
こんな場所にいても、笑ってくれるこの子を、もう二度と独りにさせないと、心に誓った
外からまた、番号が読み上げられる声が聞こえる
扉の奥に何があるのかもわからない
どれだけの地獄が待っているかもしれない
だけど――今だけは
この冷たい空間の中、互いの温もりが唯一の希望だった
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