藤澤涼架side
僕が空き教室を見つけたのは入学してきてすぐのことだった
新しい学校に不安があったからなのか。
入学式の翌日僕は迷子になってしまった
道を聞く知り合いは近くにいなくて、僕は大きい校舎を一人で彷徨っていた
人気のない棟で見つけたのがこの空き教室だった
騒がしい教室棟とは違う、静かな場所を、僕は一瞬で好きになった
だから時々、その場所でゆっくりするようになった
僕が、“こう”なったときも。
藤澤涼架side
MOB.
fjsw.
話しかけてきたのは隣の席の男の子だった。
今思えば、あの時から全てが壊れた
MOB.
MOB.
その言葉に大きな衝撃が走った
男だから髪を伸ばしちゃいけないの?
ずっと高校生になったら髪を伸ばしてみたいなって思ってて、だから伸ばしてるのに
だから、すごく悲しかった
それはとても寒い、一年生の冬の出来事だった
それから月日はたち、始業式の日。
僕は二年生になって仲の良かった人とクラスが離れてしまった
馴染めるかな、なんて思いながら自分のクラスに行く
二年C組。うん、ここだ
fjsw.
そう言いながら教室を開けた瞬間だった
騒がしかった教室が一瞬で静かになる
誰一人として喋らない
まるで、時間が止まったみたい
MOB.
男子生徒の声が聞こえてきたのと同時に男子生徒の周りから失笑が広がっていく
“おねえ” それが誰に向けられた言葉なのか。 ちゃんと僕はわかっていた
髪を伸ばし続いている、僕、藤澤涼架に向けられた言葉だ
それから根も葉もない噂が広まった
僕がおねえだとか おかまだとか 男子生徒と付き合っているとか
そんな噂だった
その噂が原因で僕は他のクラスの人からも無視されるようになった
それから些細な嫌がらせが始まった
机に“おねえ”と書かれていたり 教科書がなくなっていたり 靴が傘立てから出てきていたり
そんな些細な嫌がらせは、毎日毎日行われていた
でも、叩くとか蹴るとかはないから、まだマシな方だろう
吹奏楽部の二年生は無視するから、吹奏楽部も抜けざるを得なくなった
せっかく、フルート買って練習頑張ってたのに、な。
でも、今までのはまだマシだったんだろう
二年生の夏、僕は
大事に伸ばしていた、髪を切られた
あれは暑い暑い夏の日のこと。
僕は一つに髪を括って数学の自習をしていた
クラスのざわざわした話し声の中、僕は耳元で ジョキン と言う何かを切った音を聞いた
今もはっきりと覚えている
耳元ではっきりと聞こえた何かを切る音。 そして同時に聞こえたのは何か塊が落ちる音。
嫌な予感がして、髪を触ると髪は随分と短くなっているみたいだった
後ろを振り返ると裁ちはさみを持った男子生徒がいた
周りはにやにや笑うばかり
気持ちが悪かった
今すぐこの場を抜け出したくて荷物も持たずに教室を出る
後ろからは大きな大きな笑い声が響いていた
走って走ってようやく辿り着いたのは空き教室だった
無様に切られた髪を撫で付ける
前よりも随分と短くなった髪の毛に、僕は 「ごめん」 小さくつぶやいた
それから僕は教室には行かない
大事な髪と、僕の心を守るために
それから月日がたち、三年生の春
僕は久しぶりに友達ができた
大森元貴と、若井滉斗。
二人と話す時間はすごく楽しくて
このまま時間が止まればいいのにとさえ願った
そして僕は願うようになる
元貴と若井と、明日も会いたい
こんにちは✨
1500いいねありがとうございます😭 感想も有り難く読ませていただきました…!
この作品もいいねと感想よろしくお願いします🤲
次は大森さんサイドに戻ります 楽しみにしてくれると嬉しいです👍
それではまた!
コメント
7件
今日はいっぱいみのりさんの小説を読んで好きになりました♡これからも頑張ってください😊
髪、切るとか…マジ信じらんない…。二人に出逢えて良かったね~と大号泣してます。今回も最高でしたぁ
みのりさんの書く小説は表現が凄く練られていて、素敵だなと思います🥲