警部
...くそっ!!!!
まだウォーリーは捕まらんのか!!!???

怒号とともに、怒りにまかせて叩かれた机の音が部屋に響き渡った。
声の主と机を挟んだ向かい側に、2人の若い警官が冷や汗を流しながら立っている。
巡査A
...申し訳ございません、警部。

警部
一体いつになったらやつは捕まるんだ!!!情報は十分に集まっているんだろう!!??
町の名前どころか、番地まで調べておきながらなぜ捕まらんのだ!!!!

巡査B
...はい...。ですが、警部...。

巡査A
......我々には、もう...。

警部
我々にはもうなんだと言うのだ!!??

巡査A
......警部。お言葉ですが、我々には彼を捕まえることはできません!!!!

巡査B
......そうです!!!!
あんな、人ごみの中で逃げ惑う人間を、どうやって捕まえろというんです!!??あれじゃあ手の出しようがない!!!!

警部
バカなことを言うな!!
"人ごみの中だからこそ"一刻も早く捕まえる必要があるんだ!!!!
あいつがその気になれば、ただちに市民全員が人質にもなりかねないことを忘れてるんじゃないか!!??
罪もない一般市民が常に危険にさらされているかもしれないのだということを忘れるな!!!

巡査A
それは......、そうですが...。

警部
大体、あんな目立つ服装でうろついてる男をなぜつかまえられんのだ!!貴様らの眼は節穴か!?

巡査A
......お言葉ですが!!

彼は、先ほどよりも強く、はっきりした口調を以て反論した。
巡査A
お言葉ですが、警部!!あなたはウォーリーのことを本当にわかっていらっしゃるのでしょうか!?
"あんな目立つ服装だからすぐ捕まるだろう"!?
冗談じゃありません!!

巡査A
あんな目立つ服装をした人間がウォーリー以外にも何人もいるのです!!
彼らが何物かはわからない...。やつの仲間かもしれない...!!!!
......だとすれば、より慎重に動かざるを得ないでしょう!!!!

巡査B
そうです!!!!
それに、姿を見つけたと思ったら、いつの間にか"奴ら"はいなくなっている......。
そして、気づけば、全く別の人ごみに紛れ込んでいる!!
毎回毎回これじゃあ、あまりにもキリが無い!!!!

警部
......!!!

一瞬返す言葉を見失ったが、少しして警部はもう一度冷たく言い放った。
警部
...とにかくだ!!

警部
市民が危険にさらされている。これは事実だ。幸い、今の段階では奴の存在に気づいているのは我々だけだ...!!

警部
誰かがあの悪魔の存在に気づけば、この街の、いや、この国の混乱は避けられない。

警部
だからこそ、恐怖と混乱が街を埋め尽くす前に、あの男を捕まえなければならない......!!!!
...わかるな?

巡査AB
...はい。

警部
奴が一筋縄じゃいかん敵だということは俺もよくわかっている...。
わかってはいるが、
誰かが終らせなければならんのだよ。

巡査AB
...。

警部
もう一度聴く。俺の言う意味がわかるかな?

巡査AB
......はい。

警部
わかったら、早く任務に戻ってくれ。我々には余り、時間がないのだよ。もし、またウォーリーが現れたらその時は俺を呼べ。

2人の巡査は敬礼の後部屋を立ち去る。
残された警部は一人、吸い慣れた葉巻の、煙をくゆらしながら、窓辺にたたずむ。
警部
ウォーリー、か...。

警部
一体、奴の目的は何なんだ......?
