いつまでそうしていたかはわからない
ほんの一瞬だったかもしれないし、長い事叫んでいたかもしれない
乙葉 雫
そこからは、ボーッと空を見つめていた
周りの血を見たくなかった
…………
暫く時間が経ち、気付けば、周りには救急車やパトカーが来ていた
…トラックの運転手か、周囲の人が呼んだのだろうか
運転手
乙葉 雫
乙葉 雫
乙葉 雫
乙葉 雫
上手く頭が働かない
運転手
乙葉 雫
先程まで、運転手と話していた警察官がこちらに近づいてくる
警察官
乙葉 雫
警察官
乙葉 雫
雫は警察官に包み隠さず説明を行った
警察官に説明をしていくと、頭も少し働くようになる
今回、事故が起きた原因は…
車のタイヤが滑りやすい物になっていた。そこに、更に滑りやすくなる雨が降り注ぎ、ブレーキを効かせても意味が無かったらしい
最終的に、説明を全て終えた雫は、てんかん対策の為に、自宅まで送られる運びとなった
乙葉 雫
家に帰る事ができた後、雫はいち早く自分の部屋を覗いた
恵はまだ生きていて、自分達の部屋に恵がいつも通り寝ていると思ったのだ
…勿論、部屋には誰も居なかったが
乙葉 雫
雫は階段を降り、母親の部屋を覗く
母親
母親は1人泣いていた
母親は声を殺そうとしていた様子だが、僅かに声が漏れている
そして、机の上にある大量のアルコール瓶、お酒を少しずつ飲んでいた
乙葉 雫
雫は母親の部屋を覗くのは辞め、自分の部屋に戻った
乙葉 雫
部屋に戻っても全く落ち着かず、ずっと歩き回っていた
押入れを開けたりカーテンを開いたり…兎に角落ち着けなかった
乙葉 雫
雫の机の引き出しを開ける手が止まった
乙葉 雫
恵の物を間違えて入れてしまったのだろうか
乙葉 雫
何のノートかわからず…取り敢えず手に取り、中身を見てみる
乙葉 雫
雫は、なんとなく恵の日記を読んで見ることにした
9/6 (晴れ) 友達が、日記をつけはじめた。 私も、やってみる事にした
9/7 (くもり) お父さんに会いに、お姉ちゃんと、いっしょに病院に行った 速く治りますよに
9/8 (晴れ) 一人で、お見舞いに行った。 お父さん、やさしい。 でも、今度はお姉ちゃんも連れてきて、言われた
9/10 (くもり) お姉ちゃんと一緒に、病院、行った。 途中、お姉ちゃんが倒れた
9/11 (晴れ) お姉ちゃんとパフェを食べた。 美味しい!
9/17 (くもり) 日記、書くの、忘れてた。 今日は、お姉ちゃんが倒れた 夜、一緒に絵を描いた
9/18 (雨) お父さんの、体調が、悪くなってる…らしい 速く良くなってほしいな
9/20 (くもり) 風邪を引いた。お母さんが看病してくれた。 お父さんの事について聞いたけれど、話をにごされた
9/24 (晴れ) 体調は、完全に、治った。 お父さんも、治ったら、皆でスイーツ食べよう
9/25 (くもり) お姉ちゃんと、病院に行った。 お父さんは起き上がらなかったけれど、変わらず優しかった
9/26 (晴れ) お母さんは、お仕事で忙しそうだった。 お姉ちゃんと三人でパフェを食べたら、元気が出た、言ってくれた
9/27 (くもり) 夕方、お姉ちゃんと私でお父さんの病院に行った。 ドーナツ、食べたい、言ってた。 でも、全然食べなかった
9/28 (雨) お父さんが、死んだ。 なんで?なんでなの?
10/3 (くもり) お母さん、最近お酒ばっかり飲んでる
10/4 (くもり) さいきん、友達から避けられてる気がする。 気のせい?だと思うことにする
10/9 (雨) お母さんに叩かれた。 でも、怪我はしなかったし、謝ってくれた お母さん、大丈夫かな
10/14 (くもり) お姉ちゃんが、車の帰りの時、母親と気まずいって言ってた。
10/20 (くもり) お母さん、最近ねてないみたい。 夜中、下の階から音がしたのを聞いた
10/21 (くもり) お姉ちゃんとパフェを食べた。 お母さんにも食べさせたかったな
10/23 (晴れ) たくさん、お菓子、かった。 お母さん、喜んで、くれる、かな?
10/24 (くもり) お母さん、むかんしん?って感じだった。そんな気分じゃないって。 大変そうだった
10/30 (くもり) 日記、書くの、面倒くさくなってきた。 中学1年生になったら再開しよう
4/11 (晴れ) 宣言をじっこうする、私は偉い! これで、お姉ちゃんと同じ学校に入れた。楽しみ
4/12 (晴れ) お母さんから、お姉ちゃんの送り迎えを頼まれた。引き受けた! お仕事が忙しいらしい。
4/15 (くもり) 帰り、学校に入った所でお姉ちゃんが倒れたから、慌てて保健室に連れて行った
4/16 (雨) お母さんに殴られた。 お姉ちゃんが庇ってくれた。 でも、お姉ちゃんが痛い事になった
4/20 (雨) お姉ちゃん、学校でいじめ、受けてる?みたい。 お姉ちゃん、最近、傷、増えてた…
4/21 (くもり) お母さん、仕事ばっかりで、家事ができなくなってた。 私とお姉ちゃんでこれから家事をする
4/23 (雨) 昨日は課題が大変だった。
5/1 (くもり) お姉ちゃん、お母さんの事が嫌いみたい。 昔みたいに仲良くできない…かな
5/6 (雨) お姉ちゃんとアイスを食べた
5/7 (雨) 時々、お父さんの次はお姉ちゃんが…って、悪い不安を思い起こす。 だめだよね
5/9(晴れ) お姉ちゃんの傷。 お母さんに着けられた奴なのか、いじめられて着けられたのか、わかんなくなってきた
5/13(雨) 一階が酒臭い。 お酒ってあんな匂いがするんだね
5/15 (くもり) お姉ちゃん、いつか、ジサツしたり… 考え過ぎ、だよね…?
5/19 (晴れ) 私達家族が、記憶はそのまま、もしお父さんの死ぬ前に戻れたら……どうするんだろう?
5/20 (くもり) 今日、お母さんがトイレに行った時、スマホをリビングに置いてたみたい。 お母さんのスマホに、(一家心中 やり方)って履歴があった。一家心中…?
6/1 (くもり) 履歴の事を思い出して、一家心中の意味をお姉ちゃんに聞いた。 すごく、かなしいことだって。 でも、最近は、かなしいこと無かった
6/2 (晴れ) …今思い直すと、お姉ちゃんにも、お母さんにも、色々と迷惑をかけたかも。 その分、頑張らないと…
6/5 (くもり) …せめて。せめて、お姉ちゃんとは… お姉ちゃんとは、一緒に居れると良いな
乙葉 雫
雫は日記を読み終えた後、静かに恵の物だった机に置いた
そして、雫は静かに自分の机の引き出しからロープを取り出す
乙葉 雫
雫は引き出しを勉強机の元の位置に直し、机と一緒に着いてきた椅子を引き、部屋の中央に置く
雫はその椅子の上に乗り、ロープを天井へと垂らす
そして、雫はロープの輪の中に頭を通し…ふと、考える。
最初、雫の男の子っぽい口調を他人からからかわれ、虐めへとエスカレートしていった事。
雫の口調は、自身でも上手く治す事ができなかったのだ。
そして、父親が亡くなり、母親がアルコールに溺れていった事。
ご近所から避けられる事が多くなったのも、母親の怒声と大きな物音のせいかもしれない
雫はそこまで考えた後、もうどうでも良いか、と諦めの気持ちが沸いた。
…雫の足は、足元の椅子を蹴る
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