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その日は、朝からイマイチだった。
学校へ行く途中、黒猫に横切られたり
親友の紬が休み、体育の授業でペアを作れずあぶれてしまったり
駅に着いたらちょうど電車が行ってしまったり。
すみれ
包丁で切ってしまった人差し指から、つう、と細く血が伝う。
私は紅羽さんの朝食作りをいったん中断すると、通学鞄から絆創膏を取り出した。
すみれ
絆創膏を巻きながら、少しため息をつく。
すみれ
私は昨日、紅羽のマネさんに紅羽さんの仕事を減らすように進言した。
それが正しかったのか、間違った行いだったのかは分からない。
本人はきっと、納得しないだろう。
すみれ
すみれ
すみれ
すみれ
そう、自分に言い聞かせていると、不意に。
ガチャリ
廊下の扉が開いて、紅羽さんが起きてきた。
すみれ
紅羽さんの顔を見て、一瞬で分かった。
すみれ
すみれ
紅羽さんは、いつものような寝ぼけ眼ではなく。
病的なまでに白い肌が際立つような、赤く充血した目。
鋭い眼光に、怒りが静かにほとばしっているのが分かる。
彼は手にスマホを握っていて、
きっと起きたあとにマネさんからの連絡を見たのだろう。
『私からのアドバイスで、仕事を減らすように調整した』…、と。
紅羽
低く響く声に、私は一瞬、すこしひるむ。
でもすぐに、毅然として答えた。
すみれ
すみれ
紅羽
すみれ
紅羽
すみれ
紅羽
突然、紅羽さんが私の声を遮って怒鳴った。
すみれ
紅羽
それは、いままで自宅でも、事務所でも、配信でも聞いたことのない紅羽さんの声だった。
紅羽
すみれ
紅羽
私が食い下がると、紅羽さんは呆れたように手を振って苦笑した。
そして、凄むように私をにらみつけると、言った。
紅羽
すみれ
言葉は出なかった。
紅羽さんは、すっと玄関の方を爪の長い指で指さして、言った。
紅羽
すみれ
私は、それだけ言って
鞄を持つと静かに紅羽さんの家を出た。
ママ
すみれ
紅羽さんに目覚まし係をクビにされた私は、
翌日、ママとマネージャーさんと会社の会議室にいた。
紅羽のマネージャー
すみれ
ママ
ママ
ママ
ママ
ママは物憂げにため息をついた。
ママ
ママ
すみれ
バイト代のことなんて、もうすっかり忘れていた。
紅羽さんの一生懸命でひたむきな姿を見ているうちに、本気でこの人のことを応援したいと、思うようになっていたから。
すみれ
すみれ
すみれ
すみれ
すみれ
紅羽のマネージャー
ママ
マネさんもママもそういって、優しく笑ってくれた。
それを見て私は、なんだかとても申し訳ない気持ちになった。
だって私は、全然仕事をやり遂げていないのに。
確かに紅羽さんを起こすことには成功していた。
でも、紅羽さんの言葉が、私の胸をチクチクと刺す。
『何にも知らねえくせに、しゃしゃってんじゃねえよ』
すみれ
ママ
私が聞くと、ママは困ったような顔をした。
ママ
ママ
紅羽のマネージャー
すみれ
もしかしたら何か分かるかもと思っていた私は、肩を落とす。
ただ好きなだけなら、あんな言い方をするだろうか。
とてもそうとは思えなかった。でも。
すみれ
最後に見た紅羽さんの怒った顔がなんだか泣いているように見えたなんて。
きっと、なにかの見間違いだったのだろう。