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透が、最近笑わなくなった
ファンの前ではいつも通りの歯を見せた笑顔を浮かべているが、
あれはスクリーンに映された”監督・柄院透”という役の演技だ。
それは、誰よりも傍で彼を見ている大吾だけが気づいていた。
オレンジ色の照明がぼんやりと揺れる編集室で、
楽山大吾は監督椅子に沈む透を見下ろしていた。
柄院透。
世界的に名を知られる天才映画監督。
だが今、その肩は落ち、握った拳が微かに震えている。
呟くような声だった。
まるで自分に言い聞かせるような、
壊れかけたテープのように繰り返されるその言葉を、
楽山はもう何度も聞いていた。
映画は順調だったはずだ。
次回作は「最高傑作になる」と
プロデューサーも太鼓判を押していた。
だが透だけが、「納得できない」と言い続けていた。
──君が撮ったものは、世界中が喝采を浴びせるのに。
溜め息交じりに、楽山は透の手元にあったカフェインドリンクの缶を取り上げた。
机の上には数え切れない空き缶と、破れた脚本、握り潰された写真
そして──
指先に巻かれた、白いガーゼ。
目を逸らす透。
笑う唇は、どこかぎこちなく、演技が過ぎた。
透はずっと恐れていた。
皆が求めてるのは、“柄院透が作る作品”であって、
“柄院透”という人間じゃない。
幼い頃から、どんな場所にいても”天才”と呼ばれた。
称賛と期待は、何よりも重たい鎖だった。
その問いに、大吾は何も言わなかった。
だが無言のまま、透の頭をぐしゃりと撫でた。
その指は、暖かくて、少し乱暴だった。
遮るように名を呼ばれ、透の声が止まる。
“だから、ちゃんと寝てください。”
それだけ呟いて、大吾は編集室のソファを指差す。
「ほら行け」とばかりに首をしゃくったが、
透は立ち上がらなかった。
即答だった。
透は、ぽろりと何かを落とした。
それが涙だと気づいた時、大吾はもう彼を抱き締めていた。
この夜、透は少しだけ眠った。
大吾の腕の中で、子供のように、小さく丸まって。
だがまだ、嵐は去っていなかった。
透の心の奥に巣食う「作品のない自分は無価値」という思考は、
確実に、静かに、彼を蝕み始めていた。
皆様どうも、𝐊゜と申します
今回の作品は 楽山 × 柄院 です
公式では絡みがないのですが、この2人が凄く好きで…
勢いに任せて作っちゃいました、笑
この作品を読むに当たってですが
超捏造 & 自己解釈なので
性格や話し方等が皆様の考えているものと異なります
『 苦手だなぁ 』とか、
『 地雷かもしれない… 』等思われる場合は
ブラウザバックを推奨します
それなら1番始めに注意喚起書けよって話ですがね…笑
それでは 〜 👋🏻゛