テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
703
その日、瀬戸ハルは大学の講義中もずっと、スマホの時計ばかりを気にしていた。
午後4時。いつもなら、奏がバイトをしている喫茶店『ひだまり』に乗り込む時間だ。
けれど、昨日の別れ際、奏は少しだけ顔を赤くして、何度も鼻をすすっていた。
瀬戸 ハル
ハルは講義が終わるやいなや、キャンパスを飛び出し喫茶店へ向かった。
カウベルを鳴らして中へ入るが、カウンターにいるのは奏ではなく、店主の奥さんだった。
奥さん
瀬戸 ハル
奥さん
奥さん
奥さん
その言葉を聞いた瞬間、ハルの脳内で警告音が鳴り響いた。
昨日の雨だ。あんなに濡れたのに、奏を置いて先に帰ってしまった自分を呪いたい気分になる。
瀬戸 ハル
奥さん
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
ハルのあまりの必死さに、奥さんは苦笑いしながらメモを渡してくれた。
奥さん
瀬戸 ハル
ハルは近くのスーパーに駆け込み、ポカリスエット、ゼリー、冷えピタ、そしてなぜか特大のイチゴまでカゴに放り込み、奏の住むアパートへと向かった。
築年数の経った、静かなアパート。
二階の一番端の部屋の前で、ハルは一呼吸置く。
瀬戸 ハル
ピンポーン、とインターホンを押す。
……返事がない。
もう一度押すが、静まり返っている。
瀬戸 ハル
ドア越しに声をかけると、中でガタゴトと何かが倒れるような音がした。
数分後、ゆっくりと鍵が開く。
現れた奏は、いつも以上に白く、頬だけが林檎のように赤かった。
市川 奏
瀬戸 ハル
市川 奏
そう言いながら、奏の膝がカクンと折れる。
ハルは咄嗟にその細い体を抱きとめた。
熱い。衣服越しでも伝わってくる熱に、ハルは眉を寄せた。
瀬戸 ハル
市川 奏
抵抗する力もない奏を寝かしつけ、ハルは手際よく冷えピタを額に貼った。
奏の部屋は、驚くほどシンプルだった。
余計な装飾は何一つなく、本棚だけがぎっしりと埋まっている。
まさに「市川奏」そのもののような部屋だ。
市川 奏
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
市川 奏
弱々しく睨んでくる奏に、ハルは思わず吹き出した。
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
市川 奏
瀬戸 ハル
市川 奏
奏は布団を鼻先まで引き上げ、目を逸らした。
ハルはパイプ椅子を持ってきて、枕元に座る。
市川 奏
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
ハルが優しく、奏の乱れた前髪を払う。
熱のせいで感覚が鈍っているのか、奏はその手に身を委ねたまま、ぼんやりとハルを見つめた。
市川 奏
瀬戸 ハル
市川 奏
市川 奏
奏の瞳が、トロンと潤んでいる。
その無防備な表情と、熱い吐息。
ハルの心臓が、今まで経験したことがないほど激しく鳴った。
瀬戸 ハル
モテ男として数々の恋愛をしてきたはずのハルが、ただの「風邪っぴきのお見舞い」で、手足が震えるほど緊張していた。
瀬戸 ハル
市川 奏
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
市川 奏
奏は理解していないのか、小首を傾げてそのまま眠りに落ちてしまった。
スースーと規則正しい寝息が聞こえ始める。
ハルは溜息をつき、自分の顔を両手で覆った。
瀬戸 ハル
金髪のモテ男は、静かな四畳半の部屋で、一人真っ赤な顔をして立ち尽くしていた。