哀哭のカゲロウ
僕がお寺で見つけたのは
可愛い目をしたお人形さんでした
お洋服の所々が土に汚れていたので
なんだかお人形さんは
悲しんでいるように見えました
だから僕はお洋服を洗って
ちゃんとお寺に供養してあげようと思いました
花凛
花凛
花凛
満弦
お人形さんの背中には
プラスチック製のファスナーが付いていました
そのファスナーは
中身のコットンを噛んでいたので
お人形さんが痛がらないように注意してファスナーを下げてあげました
花凛
花凛
満弦
花凛
満弦
僕はとても驚きました
何の変哲も無いお人形さんから
お姉さんが出てくるイリュージョンは
生まれて初めて見たのです
花凛
花凛
お姉さんは何処から取り出したのか
飲みかけのウロハスを僕に差し出しました
マジシャンの人かなと思いました
満弦
花凛
満弦
僕は怖かったので
無我夢中でそのお水を飲みました
するとさっきまで暴れていた心が
トクントクンと静かになりました
花凛
満弦
花凛
花凛
満弦
ゲーをして吐き出そうと思ったけれど
とても良く効く薬の効果で
妙な安心感に囚われてしまいました
満弦
花凛
花凛
花凛
花凛
満弦
花凛
花凛お姉ちゃんは満足気に
大きくガッツポーズをしました
その姿を見て、僕は今までにない恐怖心を抱きました
花凛
花凛
満弦
花凛
花凛お姉ちゃんが指差した先に
僕の将来の夢作文が置いてありました
満弦
満弦
満弦
花凛
花凛
花凛
僕は首を横に振りました
花凛
花凛
満弦
僕は観念して
花凛お姉ちゃんの言うことを正直に聞くことにしました
満弦
満弦
花凛
花凛
花凛お姉ちゃんは優しく微笑みました
花凛
花凛
花凛
花凛
満弦
花凛
満弦
僕は花凛お姉ちゃんの指示通り
お人形さんを洗っていきました
5分ほど押し洗いしたら
綺麗な水で中性洗剤を洗い落とします
すすぎ終わったら
柔軟剤を溶かしたぬるま湯に
20-30分程度浸け置きします
柔軟剤を使うことで
お人形さんの生地がなめらかになり
フワフワになるようです
その後お人形さんをタオルに包み
洗濯用ネットに入れて脱水します
今日は天気が良かったので
お人形さんも気持ち良さそうでした
花凛
花凛
花凛
満弦
お人形さんはとても綺麗になりました
花凛
花凛
花凛
満弦
花凛
花凛
認めたくはなかったけど
やっぱり花凛お姉ちゃんは
マジシャンではなく
普通のお姉ちゃんでもなく
もうこの世界にはいない存在だったようです
僕は怖くなって泣きそうになりました
そんな僕を見て、花凛お姉ちゃんは優しく僕の頭を撫でてくれました
それはとても優しいナデナデでした
花凛
花凛
花凛
✳︎ ✳︎ ✳︎
お寺までの道すがら
花凛お姉ちゃんはたくさんお話しをしてくれました
花凛お姉ちゃんの家族のお話
花凛お姉ちゃんの友達のお話
花凛お姉ちゃんの病気のお話
そして、死んでからのお話
花凛
花凛
満弦
花凛
花凛
花凛
満弦
花凛
花凛
花凛
花凛
花凛お姉ちゃんは困った様に眉を寄せながら僕にいたずらっぽく言いました
花凛
花凛
花凛
満弦
満弦
満弦
花凛
花凛
花凛お姉ちゃんは目に涙を浮かべ
とびきりの笑顔を見せてくれました
お墓の前には綺麗な一輪の白い花と
火の消えたロウソクが立っていました
花凛
満弦
花凛
僕はトタンで出来た屋根の下に
お人形さんを入れてあげました
僕はそういえばと思い出し
ポケットに入れてた飴玉を
お人形さんの隣に置いてあげました
満弦
満弦
花凛
花凛
ふわりと花凛お姉ちゃんは宙を舞い
お墓の天辺にちょこんと座りました
僕は本能的に
花凛お姉ちゃんとのお別れが近付いていることを悟りました
花凛
花凛
花凛
満弦
花凛
花凛
花凛
花凛お姉ちゃんは遠く空を見上げました
満弦
満弦
満弦
花凛
花凛
花凛お姉ちゃんの周りにキラキラとした願いが飛び回り
やがて花凛お姉ちゃんとともに
遠くの空へと飛んでいきました
満弦
満弦
満弦
満弦
満弦
満弦
満弦
✳︎ ✳︎ ✳︎
また今年も終わりに近付く
この寺にくるのもこれで十回目になる
満弦
満弦
満弦
コンビニで買ったお供え物のチョコとジュースを綺麗に並べてあげる
満弦
満弦
満弦
満弦
寒空の下、俺は苦笑いを浮かべた
満弦
満弦
満弦
満弦
満弦
そう考えると少しワクワクする反面
俺みたいな奴がしっかりできるのかと
少しだけ不安を抱いてしまう
満弦
満弦
満弦
満弦
満弦
満弦
満弦
小さく息を吐くと
白い綿毛がフワフワと空へ飛んでいった
満弦
満弦
小さな人形の頭をポンポンと撫でると
遠くの方から
「よかったね!」
と声が聞こえた気がした
おわり